取消訴訟とは(全体像)
取消訴訟とは、行政庁の処分その他、公権力の行使にあたる行為の取消しを求める訴訟のこと。抗告訴訟の5類型のうち、もっとも中心となる最重要の類型だ。
訴えるには、いくつかの訴訟要件がそろっている必要がある。とくに、①出訴期間、②原告適格、③処分性の3つが重要だ。
- ①出訴期間 … いつまでに訴えるか(後述の二重要件)。
- ②原告適格 … 処分の取消しを求めるにつき、法律上の利益をもつ者に限られる。
- ③処分性 … 訴える対象が、直接に国民の権利義務を形成・確定する処分であること。
詳しく:出訴期間の二重要件と判決の効力
ここが心臓部。出訴期間(二重要件)と、認容判決の効力を押さえる。
取消訴訟の出訴期間
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 主観的期間 | 処分を知った日から6か月以内 |
| 客観的期間 | 処分があった日から1年以内 |
まず出訴期間。取消訴訟は、処分を知った日から6か月以内、かつ処分の日から1年以内に訴える必要がある。条文の言葉が「または」のように見えるが、実際は両方とも守る二重要件。「6か月か1年のどちらかでよい」ではない、という点が最大の引っかけだ。
次に認容判決の効力。
認容判決(取消判決)の効力
| 効力 | 内容 |
|---|---|
| 形成力 | 処分が、はじめにさかのぼって効力が消える |
| 第三者効 | 当事者だけでなく、第三者にも効力が及ぶ |
処分を取り消す判決(認容判決)には、形成力があり、処分は遡って効力が消える。さらに、第三者効があり、その効力は訴えた当事者だけでなく、第三者にも及ぶ。民事訴訟の判決は当事者の間だけが原則だが、取消判決はそれと違う、と押さえる。
わかりやすく言い換えると
つまり取消訴訟は「処分を裁判で取り消してもらう、抗告訴訟の本丸」。期限は6か月以内かつ1年以内の二重で、勝てば処分は遡って消え、その効力は第三者にも及ぶ。
要するに押さえどころは2つ。①出訴期間は6か月以内かつ1年以内の二重要件(どちらかではない)、②認容判決には形成力と第三者効がある。
試験のツボ
🔴 一番出る:出訴期間は二重要件
①処分を知った日から6か月以内
②かつ処分の日から1年以内(どちらかではなく両方)
🔴 次に出る:原告適格と処分性
原告適格は法律上の利益をもつ者。処分性は直接に権利義務を形成・確定する処分であること。
🟡 押さえると安定:認容判決の効力
取消判決には形成力(遡及的消滅)と第三者効がある。
よくある間違い
①「出訴期間は、6か月か1年のどちらかでよい」→ ✗ 6か月以内かつ1年以内の、両方を守る二重要件。
②「取消訴訟の認容判決は、当事者にしか効力が及ばない」→ ✗ 第三者効があり、当事者以外にも効力が及ぶ。
③「取消判決があっても、処分は当然には効力を失わない」→ ✗ 形成力により、処分は遡って効力が消える。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(取消訴訟の意味)
取消訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 取消訴訟とは、私人どうしの契約の取消しを求める民事訴訟をいうものとされる
- 取消訴訟とは、行政機関に不服を申し立てる審査請求をいうものとされる
- 取消訴訟とは、行政庁の処分の取消しを求める訴訟で、抗告訴訟の中核である
- 取消訴訟とは、命令等の案について意見を募る手続をいうものとされている
解答は 3 だ。
取消訴訟とは、行政庁の処分の取消しを求める訴訟で、抗告訴訟の中核となる最重要の類型だ。
選択肢1は民事訴訟、選択肢2は審査請求(不服申立て)、選択肢4はパブコメであって、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 私人間の民事訴訟とは別 |
| 2 | ✗ | 審査請求は訴訟ではない |
| 3 | ✓ | 処分の取消しを求める訴訟で正しい |
| 4 | ✗ | パブコメとは別 |
オリジナル問題2(出訴期間)
取消訴訟の出訴期間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 取消訴訟の出訴期間は、処分を知った日から6か月か1年のどちらかを満たせばよい
- 取消訴訟の出訴期間は、知った日から6か月以内、かつ処分日から1年以内
- 取消訴訟の出訴期間は、処分があった日から3年以内であるとされている
- 取消訴訟には、出訴期間の制限はまったくないものとされている
解答は 2 だ。
取消訴訟の出訴期間は、処分を知った日から6か月以内、かつ処分の日から1年以内だ。「どちらか」ではなく、両方を守る二重要件だぞ。
選択肢1の「どちらか」、選択肢3の「3年以内」、選択肢4の「制限なし」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | どちらかではなく両方 |
| 2 | ✓ | 6か月以内かつ1年以内で正しい |
| 3 | ✗ | 客観的期間は1年 |
| 4 | ✗ | 出訴期間の制限がある |
オリジナル問題3(認容判決の効力)
取消訴訟の認容判決に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 取消訴訟の認容判決は、訴えた当事者にしか効力が及ばないものとされる
- 取消訴訟の認容判決には、形成力も第三者効もないものとされている
- 取消訴訟の認容判決があっても、処分は当然には効力を失わないとされる
- 取消訴訟の認容判決には形成力があり、その効力は第三者にも広く及ぶ
解答は 4 だ。
取消訴訟の認容判決には形成力があり、処分は遡って効力が消える。さらに第三者効があり、当事者以外にも効力が及ぶ。
選択肢1の「当事者だけ」、選択肢2の「形成力も第三者効もない」、選択肢3の「効力を失わない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 第三者にも効力が及ぶ |
| 2 | ✗ | 形成力も第三者効もある |
| 3 | ✗ | 形成力で遡って効力が消える |
| 4 | ✓ | 形成力あり・第三者にも及ぶで正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 意味 = 行政庁の処分の取消しを求める訴訟。抗告訴訟の中核。
- 🔴 出訴期間 = 処分を知った日から6か月以内、かつ処分の日から1年以内(二重要件)。
- 🟡 認容判決の効力 = 形成力(遡及的消滅)と第三者効がある。
次に学ぶ
- 抗告訴訟 ── 取消訴訟をふくむ5類型の全体像。
- 行政行為(行政処分) ── 取消訴訟の対象となる「処分」とは何かを押さえる。
- 審査請求人 ── 原告適格と同じ基準(法律上の利益)の不服申立適格。
執筆: SikakuQuest編集部