差止訴訟とは(全体像)
差止訴訟とは、行政庁が一定の処分や裁決をしてはならない、と命ずることを求める訴訟のこと。義務付け訴訟と同じく改正で新しく加わった、予防的な救済手段だ。
いちばんの特徴は、処分が出る前に使うこと。違法な処分がされてしまう前に、それを未然に止めることをねらう。「してほしくない処分」を、先回りして止める訴訟、というイメージだ。
押さえる要件は2つ。
- ①重大な損害が生ずるおそれがあること。
- ②その損害を避けるため、他に適当な方法がないこと(補充性)。
詳しく:要件とタイミング
ここが心臓部。提起の要件と、処分前という時期を押さえる。
差止訴訟の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 重大な損害のおそれ | 処分により重大な損害が生ずるおそれがあること |
| 補充性 | その損害を避けるため、他に適当な方法がないこと |
まず要件。差止訴訟を起こすには、処分によって重大な損害が生ずるおそれがあり、かつ、他に適当な方法がない(補充性)ことが必要。「重大な損害」がなければ提起できない、という点に注意する。なお、本案で勝つには、処分すべきでないことが法令上明らかか、または裁量権の逸脱・濫用が認められることが要る。
次にタイミング。
処分の前か後か
| 場面 | 使う手段 |
|---|---|
| 処分の前 | 差止訴訟(未然に止める) |
| 処分のあと | 取消訴訟(+執行停止)など |
差止訴訟は、処分の前に使う予防的な手段。処分がされてしまったあとは、差止訴訟ではなく、取消訴訟(+執行停止)などで対応する。「差止」という言葉から、処分後にも使えると思い込まないことが大切だ。なお、緊急時のために仮の差止めという仮の救済も用意されている。
わかりやすく言い換えると
つまり差止訴訟は「違法な処分を、される前に止める訴訟」。重大な損害のおそれと補充性が要件で、使えるのは処分の前まで。処分後は取消訴訟などに切り替える。
要するに押さえどころは2つ。①差止訴訟は処分の前の予防的手段(処分後は取消訴訟など)、②要件は重大な損害のおそれ+補充性。
試験のツボ
🔴 一番出る:処分前の予防的手段
①差止訴訟は、処分の前に違法な処分を未然に止める手段
②処分のあとは、取消訴訟(+執行停止)などで対応する
🔴 次に出る:要件は重大損害+補充性
重大な損害が生ずるおそれと、他に適当な方法がないこと(補充性)が必要。
🟡 押さえると安定:仮の差止め
緊急時のために、仮の救済として仮の差止めが用意されている。
よくある間違い
①「処分がされたあとでも、差止訴訟を提起できる」→ ✗ 差止訴訟は処分の前まで。処分後は取消訴訟(+執行停止)などで対応する。
②「重大な損害のおそれがなくても、差止訴訟を提起できる」→ ✗ 重大な損害のおそれが、訴訟要件として必要。
③「差止訴訟には、仮の差止めという仮の救済はない」→ ✗ 仮の救済として、仮の差止めが用意されている。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(差止訴訟の意味)
差止訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 差止訴訟とは、すでにされた処分の取消しを求める訴訟をいうものとされる
- 差止訴訟とは、行政庁が処分をしてはならないと命ずるよう求める抗告訴訟
- 差止訴訟とは、行政庁に処分をすべきと命ずるよう求める訴訟をいうとされる
- 差止訴訟とは、命令等の案について意見を募る手続をいうものとされる
解答は 2 だ。
差止訴訟とは、行政庁が処分をしてはならないと命ずるよう求める予防的な抗告訴訟だ。処分の前に、違法な処分を未然に止める手段だ。
選択肢1は取消訴訟、選択肢3は義務付け訴訟、選択肢4はパブコメであって、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | それは取消訴訟 |
| 2 | ✓ | 処分をしてはならないと命ずるよう求める予防的訴訟で正しい |
| 3 | ✗ | それは義務付け訴訟 |
| 4 | ✗ | パブコメとは別 |
オリジナル問題2(提起の要件)
差止訴訟の要件に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 差止訴訟は、重大な損害のおそれがなくても提起できるとされる
- 差止訴訟は、ほかに適当な方法があっても自由に提起できるものとされる
- 差止訴訟には、提起のための特別な要件はまったくないものとされている
- 差止訴訟には、重大な損害が生ずるおそれと補充性の要件が必要である
解答は 4 だ。
差止訴訟には、重大な損害が生ずるおそれと、他に適当な方法がないこと(補充性)の要件が必要だ。重大な損害がなければ提起できないぞ。
選択肢1の「重大な損害がなくても」、選択肢2の「方法があっても自由に」、選択肢3の「特別な要件はない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 重大な損害のおそれが必要 |
| 2 | ✗ | 補充性(他に方法がない)が必要 |
| 3 | ✗ | 重大損害+補充性の要件がある |
| 4 | ✓ | 重大な損害のおそれと補充性が必要で正しい |
オリジナル問題3(タイミング)
差止訴訟を提起できる時期に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 差止訴訟は処分の前に提起し、処分後は取消訴訟で対応するものとされる
- 差止訴訟は、すでにされた処分についても自由に提起できるものとされている
- 差止訴訟は、処分の前でも後でも自由に提起できるものとされている
- 差止訴訟には、仮の救済としての仮の差止めはないものとされている
解答は 1 だ。
差止訴訟は処分の前に提起する予防的な手段で、処分がされたあとは取消訴訟(+執行停止)などで対応する。使えるのは処分の前まで、と覚えよう。
選択肢2の「処分後も提起できる」、選択肢3の「前でも後でも自由に」、選択肢4の「仮の差止めはない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 処分の前の手段・処分後は取消訴訟などで正しい |
| 2 | ✗ | 処分後は取消訴訟などで対応する |
| 3 | ✗ | 使えるのは処分の前まで |
| 4 | ✗ | 仮の差止めという仮の救済がある |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 意味 = 行政庁が処分をしてはならないと命ずるよう求める、処分前の予防的な抗告訴訟。
- 🔴 要件 = 重大な損害が生ずるおそれと、補充性(他に適当な方法がないこと)。
- 🟡 タイミングと仮の救済 = 処分後は取消訴訟などで対応。緊急時は仮の差止めがある。
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執筆: SikakuQuest編集部