株主の権利とは(全体像)
会社の主のもつ力、それが株主の権利である。株主の権利とは、株主が株式を持つことを通じて、会社に対してもつ権利の総称をいう。基本となるのは、次の3つである。
- 剰余金配当請求権 … もうけの分け前(配当)を求める権利。
- 残余財産分配請求権 … 会社をたたんだとき、残った財産の分配を求める権利。
- 議決権 … 株主総会で会社の方針を決める権利。
「株主の権利は、すべて1株あれば行使できる」と思い込んではならない。権利には、1株で行使できるものと、一定の数が必要なものがあるのである。
詳しく:自益権と共益権、単独株主権と少数株主権
ここが核心である。腰を据えて見極めるがよい。株主の権利は、2つの分け方で整理する。
性質による分類
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 自益権 | 株主個人の経済的利益にかかわる権利 | 配当請求権・残余財産分配請求権 |
| 共益権 | 会社の運営に参加する権利 | 議決権など |
まず性質による分け方である。自益権は、配当を求めるなど、株主個人の経済的な利益にかかわる権利である。共益権は、議決権のように、会社の運営に参加する権利である。「自分のため(自益)」「みんなの運営のため(共益)」と分けると整理しやすい。
必要な数による分類
| 分類 | 行使に必要な数 | 例 |
|---|---|---|
| 単独株主権 | 1株でも行使できる | 議決権など |
| 少数株主権 | 一定の割合や数が必要 | 株主提案権・株主総会の招集請求・帳簿の閲覧など |
次に必要な数による分け方である。単独株主権は、1株でも行使できる権利である。少数株主権は、一定の割合や数を持っていないと行使できない権利である。株主提案権や帳簿の閲覧などがこれにあたる。
そして、株主として最低限守られる権利を押さえよう。配当を求める権利と残余財産の分配を求める権利の、全部を株主から奪う定款の定めは、効力を生じない。経済的な利益をまるごと奪うことは許されないのである(種類株式による一部の制限は別である)。
わかりやすく言い換えると
要するに、株主の権利とは「会社のオーナーとしてもつ、いろいろな権利」であり、2つの見方で整理する。
つまり、①何のための権利かで分けると、自分のお金のため(自益権=配当など)と、会社の運営に口を出すため(共益権=議決権など)に分かれる。
②いくつ株がいるかで分けると、1株でできるもの(単独株主権)と、まとまった数がいるもの(少数株主権=提案や帳簿閲覧など)に分かれる。「権利は全部1株でできる」は誤りである。
③そして、配当や残った財産の分け前を求める権利を、まるごと奪う定款はダメ(効力なし)。株主である以上、最低限の経済的な権利は守られる、と心得るがよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:単独株主権と少数株主権
①単独株主権=1株でも行使できる
②少数株主権=一定の割合や数が必要(提案権・帳簿閲覧など)
🔴 次に出る:自益権と共益権
①自益権=株主個人の経済的利益(配当・残余財産分配)
②共益権=会社の運営に参加(議決権など)
🟡 押さえると安定:最低限の保障
①配当・残余財産分配の権利の全部を奪う定款は効力を生じない
②株主として最低限の経済的権利は守られる
よくある間違い
①「株主の権利は、すべて1株あれば行使できる」→ ✗ 単独株主権と少数株主権の区別があり、一定の数が必要なものもある。
②「配当などの経済的権利は、定款で全部を奪うことができる」→ ✗ 配当・残余財産分配の権利の全部を奪う定款は効力を生じない。
③「議決権は、株主個人の経済的利益にかかわる自益権である」→ ✗ 議決権は会社の運営に参加する共益権である。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(自益権と共益権)
株主の権利の性質に関する記述として、正しいものはどれか。
- 配当請求権は会社の運営に参加する共益権で、議決権は経済的利益の自益権である
- 配当請求権は経済的利益にかかわる自益権、議決権は運営に参加する共益権である
- 自益権も共益権も、すべて会社の運営に参加するための権利であるものとされる
- 自益権と共益権の区別はなく、株主の権利はすべて同じ性質であるものとされる
解答は 2 である。
理を解き明かそう。自益権は、配当請求権のように株主個人の経済的利益にかかわる権利である。共益権は、議決権のように会社の運営に参加する権利である。
選択肢1は自益権と共益権を逆にした誤りである。「自分のため=自益、運営のため=共益」と押さえるがよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 自益権と共益権の説明が逆 |
| 2 | ✓ | 配当は自益権、議決権は共益権 |
| 3 | ✗ | 自益権は経済的利益にかかわる権利 |
| 4 | ✗ | 自益権と共益権の区別がある |
オリジナル問題2(単独株主権と少数株主権)
単独株主権と少数株主権の区別に関する記述として、正しいものはどれか。
- 株主の権利はすべて単独株主権で、少数株主権という区別はないものとされている
- 単独株主権は一定の割合が必要で、少数株主権は1株でも行使できるものとされる
- 単独株主権は1株でも行使でき、少数株主権は一定の割合や一定の数を必要とする
- 単独株主権も少数株主権も、行使には常に過半数の株式が必要であるものとされる
解答は 3 である。
本質を見極めよう。単独株主権は1株でも行使できる権利である。少数株主権は、一定の割合や数を持っていないと行使できない権利である。
選択肢2は両者を逆にした誤りである。「単独=1株、少数=一定の数」と押さえるがよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 単独株主権と少数株主権の区別がある |
| 2 | ✗ | 単独と少数の説明が逆 |
| 3 | ✓ | 単独は1株で可、少数は一定の割合や数が必要 |
| 4 | ✗ | 常に過半数が必要なのではない |
オリジナル問題3(最低限の保障)
定款による株主の権利の制限に関する記述として、正しいものはどれか。
- 配当と残余財産の分配を求める権利の全部を奪う定款の定めは、効力を生じない
- 定款で定めれば、配当を求める権利の全部を株主から奪うことができるものとされる
- 定款によって、株主のあらゆる権利を一切なくすことができるものとされている
- 残余財産分配を求める権利は、定款で全部を奪っても有効であるものとされている
解答は 1 である。
高みより理を見渡そう。配当を求める権利と残余財産分配を求める権利の、全部を株主から奪う定款の定めは、効力を生じない。株主として最低限の経済的権利は守られるのである。
選択肢2のように「配当を求める権利の全部を奪える」のではない。全部を奪うことは許されないと押さえるがよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 経済的権利の全部を奪う定款は効力を生じない |
| 2 | ✗ | 配当請求権の全部を奪うことはできない |
| 3 | ✗ | あらゆる権利をなくすことはできない |
| 4 | ✗ | 残余財産分配権の全部を奪う定款は効力なし |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 2つの分類 = 性質で自益権(経済的利益)と共益権(運営参加)、必要な数で単独株主権(1株)と少数株主権(一定の割合・数)。
- 🔴 基本3権利 = 剰余金配当請求権・残余財産分配請求権・議決権。
- 🟡 最低限の保障 = 配当・残余財産分配の権利の全部を奪う定款は効力を生じない。
次に学ぶ
- 株式 ── 株主の権利の土台である株式。有限責任や譲渡自由の原則を押さえる。
- 定款 ── 株主の権利の制限を定める根本規則。記載事項の3類型を押さえる。
- 株式会社の設立 ── 株式を発行する会社を立ち上げる手続。法人成立の時点もわかる。
執筆: SikakuQuest編集部