事情判決とは(全体像)
事情判決とは、処分や裁決が違法であっても、それを取り消すことで公の利益に著しい障害が生じる場合に、諸般の事情を考慮して、原告の請求を棄却する判決のこと。
ふつうなら、処分が違法なら取り消す(認容判決)。ところが事情判決は、「違法だけれど、取り消すと社会への影響が大きすぎる」というときに、あえて取り消さずに請求を退ける。たとえば、すでに完成した大規模な公共事業を、いまさら取り消すと混乱が大きすぎる、というような場面だ。
これは、違法なら正すという法治主義の例外なので、極めて限定的にしか使われない。
詳しく:違法宣言付きの棄却と、残された救済
ここが心臓部。「違法宣言+棄却」という特殊な構造と、国家賠償による救済を押さえる。
事情判決の特殊な構造
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 結論 | 請求を棄却する(処分は取り消さない) |
| 主文での宣言 | 主文で「処分は違法である」と宣言する |
| 位置づけ | 棄却判決の一種(認容判決ではない) |
まず特殊な構造。事情判決は、結論としては請求を棄却する。だが、ただ退けるのではなく、主文で「処分は違法だ」とはっきり宣言する。ここが普通の棄却判決と違うところだ。違法宣言があるので認容のように見えるが、取り消しはしない=棄却判決だという点を取り違えないこと。
次に、原告に残された救済だ。
原告に残る救済
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 取消し | されない(請求は棄却) |
| 損害賠償 | 違法宣言を生かして、国家賠償を求められる |
請求が棄却されても、原告は救済を完全に失うわけではない。主文の違法宣言を前提に、国家賠償(損害賠償)を求めることができる。「事情判決=原告は何も得られない」ではない、という点が重要だ。
わかりやすく言い換えると
つまり事情判決は「違法だけど、取り消すと社会の影響が大きすぎるから取り消さない。ただし違法だとは宣言する」という判決。原告は取り消しは得られないが、違法宣言を生かして損害賠償を求められる。
要するに押さえどころは2つ。①事情判決は、主文で違法を宣言しつつ請求を棄却する判決(認容ではなく棄却)、②原告は違法宣言を生かして国家賠償(損害賠償)を求められる。
試験のツボ
🔴 一番出る:違法宣言付きの棄却
①結論は請求棄却(処分は取り消さない)
②ただし主文で「処分は違法」と宣言する。認容ではない
🔴 次に出る:残された救済
原告は、違法宣言を生かして国家賠償(損害賠償)を求められる。
🟡 押さえると安定:法治主義の例外
違法でも取り消さない、限定的な制度。大規模公共事業などで実用例がある。
よくある間違い
①「事情判決は、請求を認める認容判決の一種である」→ ✗ 事情判決は、違法宣言を付した請求棄却の判決。認容ではない。
②「事情判決を受けた原告は、救済をすべて失う」→ ✗ 違法宣言を生かして、国家賠償(損害賠償)を求められる。
③「事情判決では、処分の違法をまったく判断しない」→ ✗ 主文で処分が違法であることを宣言する。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(事情判決の意味)
事情判決に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 事情判決とは、処分を取り消して原告を全面的に勝たせる判決をいう
- 事情判決とは、訴訟要件を欠くために却下する判決をいうものとされる
- 事情判決とは、私人間の紛争を公益のために調整する判決をいうとされる
- 事情判決は、違法でも取消しで公益に著しい障害が出る場合の棄却判決
解答は 4 だ。
事情判決は、処分が違法でも、取り消すと公の利益に著しい障害が生じる場合に、請求を棄却する判決だ。法治主義の例外だぞ。
選択肢1の「全面的に勝たせる」、選択肢2の「却下」、選択肢3の「私人間の紛争」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 取り消す認容ではない |
| 2 | ✗ | 却下とは別 |
| 3 | ✗ | 私人間の紛争とは別 |
| 4 | ✓ | 公益への著しい障害ゆえの棄却判決で正しい |
オリジナル問題2(違法宣言付きの棄却)
事情判決の構造に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 事情判決は、主文で処分の違法を宣言しつつ請求を棄却する判決である
- 事情判決は、処分を全部取り消す認容判決の一種であるものとされている
- 事情判決では、処分の違法をまったく判断しないものとされている
- 事情判決は、原告の請求を全面的に認める判決であるとされる
解答は 1 だ。
事情判決は、主文で「処分は違法だ」と宣言しつつ、請求を棄却する判決だ。違法宣言は付くが、取り消しはしない棄却判決だぞ。
選択肢2の「認容判決の一種」、選択肢3の「違法を判断しない」、選択肢4の「全面的に認める」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 違法宣言付きの請求棄却で正しい |
| 2 | ✗ | 認容ではなく棄却 |
| 3 | ✗ | 主文で違法を宣言する |
| 4 | ✗ | 請求は棄却される |
オリジナル問題3(残された救済)
事情判決を受けた原告に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 事情判決を受けた原告は、もはや一切の救済を受けられないものとされる
- 事情判決を受けても、原告は同じ処分の取消しを再び求められる
- 事情判決を受けた原告は、違法宣言を生かして損害賠償を求められる
- 事情判決を受けた原告は、行政の謝罪だけを求められるとされる
解答は 3 だ。
事情判決を受けた原告は、主文の違法宣言を生かして、国家賠償(損害賠償)を求められる。救済を完全に失うわけではないぞ。
選択肢1の「一切の救済なし」、選択肢2の「取消しを再び」、選択肢4の「謝罪だけ」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 国家賠償という救済が残る |
| 2 | ✗ | 取消しは得られない |
| 3 | ✓ | 違法宣言を生かし損害賠償を求められ正しい |
| 4 | ✗ | 謝罪だけではない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 意味 = 違法でも、取り消すと公益に著しい障害が生じる場合に請求を棄却する判決。
- 🔴 違法宣言付きの棄却 = 主文で違法を宣言しつつ請求を棄却する。認容ではない。
- 🟡 残された救済 = 原告は違法宣言を生かして国家賠償(損害賠償)を求められる。
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執筆: SikakuQuest編集部