国家賠償法1条とは(全体像)
国家賠償法1条は、公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって、違法に他人に損害を加えたとき、国または公共団体が賠償責任を負うことを定めた規定だ。憲法の保障する国家賠償を、具体化したものだ。
要件を分解すると、こうなる。
- ①公権力の行使 … その公務員の行為が、公権力の行使にあたること。
- ②職務を行うについて … 職務に関連してされたこと。
- ③故意または過失 … わざと、または不注意で。
- ④違法 … 違法な行為であること。
- ⑤損害 … それによって損害が生じたこと。
これらがそろうと、国や公共団体が賠償する。
詳しく:請求の相手と、求償の要件
ここが心臓部。誰に請求するか、国がいつ公務員に求償できるかを押さえる。
誰に損害賠償を請求するか
| 区分 | 請求先 |
|---|---|
| 原則 | 国や公共団体(公務員個人ではない) |
| 公務員個人への直接請求 | できない |
まず請求の相手。被害者は、加害をした公務員個人に直接請求するのではなく、国や公共団体に対して損害賠償を請求する。「悪いことをした公務員本人を訴える」のではない、という点が、民事の不法行為と違うところだ。
次に求償だ。
国などから公務員への求償
| 公務員の状態 | 求償 |
|---|---|
| 故意または重大な過失がある | できる |
| 軽い過失にとどまる | できない |
国や公共団体が、被害者に賠償した後、その分を公務員本人に求償(取り戻すこと)できるのは、公務員に故意または重大な過失があったときに限られる。軽い過失にとどまるなら、求償はできない。「過失があれば常に求償できる」わけではない、という点が引っかけだ。
わかりやすく言い換えると
つまり国家賠償法1条は「公務員の違法な加害は、まず国や公共団体が賠償する」という仕組み。被害者は公務員個人ではなく国などに請求し、国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失があるときだけだ。
要するに押さえどころは2つ。①被害者は公務員個人ではなく、国や公共団体に損害賠償を請求する、②国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失があるときに限られる。
試験のツボ
🔴 一番出る:請求の相手は国・公共団体
①被害者は、公務員個人ではなく国や公共団体に請求する
②公務員個人への直接請求はできない
🔴 次に出る:求償の要件
国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失があるときに限られる。
🟡 押さえると安定:5つの要件
公権力の行使・職務上・故意または過失・違法・損害がそろうと、国などが賠償する。
よくある間違い
①「被害者は、加害をした公務員個人に直接、損害賠償を請求できる」→ ✗ 請求の相手は国や公共団体。公務員個人への直接請求はできない。
②「国などは、公務員に過失があれば常に求償できる」→ ✗ 求償できるのは、故意または重大な過失があるときに限られる。
③「国家賠償法1条は、私人どうしの損害賠償を定めた規定である」→ ✗ 公権力の行使にあたる公務員の違法な加害について、国などが賠償する規定。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(国家賠償法1条の意味)
国家賠償法1条に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 国家賠償法1条は、私人どうしの損害賠償について定めるものとされる
- 国家賠償法1条は、公務員の違法な加害を国などが賠償する責任を定める
- 国家賠償法1条は、契約上の債務不履行の責任を定めるものとされる
- 国家賠償法1条は、公務員が個人で全額を支払う責任を定めるものとされる
解答は 2 だ。
国家賠償法1条は、公権力の行使にあたる公務員の違法な加害について、国や公共団体が賠償する責任を定めた規定だ。
選択肢1の「私人どうし」、選択肢3の「債務不履行」、選択肢4の「公務員が個人で全額」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 私人間の賠償ではない |
| 2 | ✓ | 公務員の違法な加害を国などが賠償で正しい |
| 3 | ✗ | 債務不履行の規定ではない |
| 4 | ✗ | 賠償するのは国や公共団体 |
オリジナル問題2(請求の相手)
国家賠償の請求先に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 被害者は、加害をした公務員個人に対して直接、損害賠償を請求できる
- 被害者は、国や公共団体には損害賠償を請求できないとされる
- 被害者は、公務員個人と国の両方に必ず同時に請求しなければならない
- 被害者は、公務員個人ではなく国や公共団体に損害賠償を請求する
解答は 4 だ。
被害者は、加害をした公務員個人ではなく、国や公共団体に損害賠償を請求する。公務員個人への直接請求はできないぞ。
選択肢1の「公務員個人に直接」、選択肢2の「国などに請求できない」、選択肢3の「両方に同時に」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 公務員個人への直接請求はできない |
| 2 | ✗ | 請求先は国や公共団体 |
| 3 | ✗ | 同時請求が必要なわけではない |
| 4 | ✓ | 国や公共団体に請求するで正しい |
オリジナル問題3(求償の要件)
国などから公務員への求償に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失があるとき
- 国などは、公務員に軽い過失があれば必ず求償できるものとされる
- 国などは、公務員にまったく過失がなくても求償できるものとされる
- 国などは、公務員に対して求償することは一切できないものとされている
解答は 1 だ。
国などが公務員に求償できるのは、公務員に故意または重大な過失があるときに限られる。軽い過失では求償できないぞ。
選択肢2の「軽い過失でも必ず」、選択肢3の「過失がなくても」、選択肢4の「一切できない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 故意または重大な過失のときに求償でき正しい |
| 2 | ✗ | 軽い過失では求償できない |
| 3 | ✗ | 過失がなければ求償できない |
| 4 | ✗ | 故意・重過失なら求償できる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 意味 = 公権力の行使にあたる公務員の、職務上の故意・過失による違法な加害を、国などが賠償する規定。
- 🔴 請求の相手 = 被害者は、公務員個人ではなく国や公共団体に請求する。
- 🟡 求償の要件 = 国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失があるときに限られる。
次に学ぶ
- 公権力の行使 ── 国家賠償法1条の出発点となる、重要な要件。
- 公務員の故意・過失 ── 賠償責任が成立するための、主観的な要件。
- 取消訴訟 ── 処分を争う抗告訴訟。国家賠償とあわせて救済の全体像を押さえる。
執筆: SikakuQuest編集部