公権力の行使とは(全体像)
国家賠償法1条の責任が成立するには、まず公務員の行為が「公権力の行使」にあたることが必要だ。ここでいう公権力の行使は、取消訴訟(行政事件訴訟法)の「処分」よりも広い概念だと考えられている(広義説)。
つまり、取消訴訟で争える「処分」にあたらなくても、国家賠償法では「公権力の行使」に含まれることがある。両者の範囲は同じではない、というのが出発点だ。
- 取消訴訟の「処分」 … 直接、国民の権利義務を形成・確定する、限られた行為。
- 国家賠償法の「公権力の行使」 … もっと広い。私経済作用などを除く、広い範囲の活動。
詳しく:広い範囲(非権力的作用も)と、境界(私経済作用は除く)
ここが心臓部。どこまで含まれ、どこから外れるかを押さえる。
公権力の行使に含まれる・含まれない
| 区分 | 公権力の行使 |
|---|---|
| 権力的な作用(処分など) | 含まれる |
| 非権力的な作用(学校教育・行政指導など) | 含まれる |
| 純粋な私経済作用(契約など) | 含まれない |
まず広い範囲。広義説では、権力的な行政作用だけでなく、学校教育や行政指導のような非権力的な作用も公権力の行使に含まれる。たとえば、公立学校の授業中の事故も、公権力の行使にあたるとされる。「処分性がある行為だけ」ではない、という点が重要だ。
次に境界だ。
私経済作用との切り分け
| 区分 | 処理の仕方 |
|---|---|
| 公権力の行使 | 国家賠償法1条 |
| 純粋な私経済作用(物品の売買契約など) | 民法の不法行為 |
国や公共団体の活動でも、純粋な私経済作用(たとえば普通の物品の売買契約など)は、公権力の行使には含まれない。これは、国家賠償法ではなく民法の不法行為で処理する。「国の活動なら何でも国家賠償法1条」ではない、という線引きを押さえる。
わかりやすく言い換えると
つまり公権力の行使は「取消訴訟の処分より広く、非権力的な作用も含む。ただし純粋な私経済作用は除く」概念。学校教育や行政指導も対象になるが、普通の契約などは民法で処理する。
要するに押さえどころは2つ。①国家賠償法の公権力の行使は処分より広く、学校教育や行政指導などの非権力的作用も含む、②純粋な私経済作用(契約など)は含まれず、民法の不法行為で処理する。
試験のツボ
🔴 一番出る:処分より広い(広義説)
①国家賠償法の公権力の行使は、取消訴訟の処分より広い
②処分性がなくても、公権力の行使にあたることがある
🔴 次に出る:非権力的作用も含む
学校教育や行政指導などの非権力的な作用も、公権力の行使に含まれる。
🟡 押さえると安定:私経済作用は除く
純粋な私経済作用(契約など)は含まれず、民法の不法行為で処理する。
よくある間違い
①「公権力の行使は、処分性のある行為だけを指す」→ ✗ 国家賠償法では広く、処分性がない非権力的作用も含む。
②「純粋な私経済作用も、公権力の行使に含まれる」→ ✗ 私経済作用は含まれず、民法の不法行為で処理する。
③「学校教育などの非権力的作用は、公権力の行使に含まれない」→ ✗ 広義説により、非権力的作用も含まれる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(処分との広さの違い)
国家賠償法の公権力の行使に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 国賠法の公権力の行使は、取消訴訟の処分より広い概念であるとされる
- 国賠法の公権力の行使は、取消訴訟の処分とまったく同じ範囲であるとされる
- 国賠法の公権力の行使は、取消訴訟の処分より狭い概念であるとされる
- 国賠法の公権力の行使は、私人の契約だけを指すものとされる
解答は 1 だ。
国家賠償法の公権力の行使は、取消訴訟の処分より広い概念だ(広義説)。処分性がなくても該当することがあるぞ。
選択肢2の「まったく同じ範囲」、選択肢3の「より狭い」、選択肢4の「私人の契約だけ」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 処分より広い概念で正しい |
| 2 | ✗ | 同じ範囲ではない |
| 3 | ✗ | 狭いのではなく広い |
| 4 | ✗ | 私人の契約だけではない |
オリジナル問題2(非権力的作用)
公権力の行使に含まれる範囲に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 公権力の行使には、学校教育などの非権力的な作用は含まれないとされる
- 公権力の行使は、権力的な作用だけに限られるものとされている
- 公権力の行使には、学校教育や行政指導などの非権力的作用も含まれる
- 公権力の行使には、処分性のある行為だけが含まれるものとされる
解答は 3 だ。
公権力の行使には、学校教育や行政指導などの非権力的作用も含まれる(広義説)。権力的な作用だけではないぞ。
選択肢1の「非権力的作用は含まれない」、選択肢2の「権力的だけ」、選択肢4の「処分性のある行為だけ」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 非権力的作用も含まれる |
| 2 | ✗ | 権力的作用だけではない |
| 3 | ✓ | 学校教育や行政指導も含まれ正しい |
| 4 | ✗ | 処分性のある行為だけではない |
オリジナル問題3(私経済作用との境界)
私経済作用との関係に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 純粋な私経済作用も、国賠法の公権力の行使に含まれるとされる
- 私経済作用は公権力の行使に含まれず、民法の不法行為で処理する
- 私経済作用も処分も、すべてまったく同じ枠組みで処理されるとされる
- 私経済作用は、国賠法でも民法でも一切救済されないものとされる
解答は 2 だ。
純粋な私経済作用は公権力の行使に含まれず、民法の不法行為で処理する。国の活動なら何でも国家賠償法、ではないぞ。
選択肢1の「私経済作用も含まれる」、選択肢3の「すべて同じ枠組み」、選択肢4の「一切救済されない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 私経済作用は含まれない |
| 2 | ✓ | 私経済作用は民法で処理で正しい |
| 3 | ✗ | 枠組みは分かれる |
| 4 | ✗ | 民法の不法行為で救済されうる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 処分より広い = 国家賠償法の公権力の行使は、取消訴訟の処分より広い(処分性がなくても該当しうる)。
- 🔴 非権力的作用も含む = 学校教育や行政指導などの非権力的な作用も含まれる。
- 🟡 私経済作用は除く = 純粋な私経済作用(契約など)は含まれず、民法の不法行為で処理する。
次に学ぶ
- 国家賠償法1条 ── 公権力の行使を要件とする、国家賠償の中核規定。
- 公務員の故意・過失 ── 公権力の行使とならぶ、国家賠償の主観的要件。
- 処分性 ── 取消訴訟の「処分」。公権力の行使との広さの違いを押さえる。
執筆: SikakuQuest編集部