公務員の故意・過失とは(全体像)
国家賠償法1条の責任が成立するには、加害をした公務員に故意または過失(注意義務違反)があることが必要だ。これを過失責任主義という。損害が生じただけでは足りず、故意か過失がなければ、国などは責任を負わない。
ここで重要なのが、過失のとらえ方だ。過失は、その公務員の個人的な心の状態を細かく問うのではなく、客観的な注意義務違反として判断される(客観的過失説)。
つまり、「この公務員がどう思っていたか」ではなく、「払うべき注意を払ったか」という客観的な基準でみる、というのがポイントだ。
詳しく:客観的過失説と、求償の要件
ここが心臓部。組織的過失で足りること、求償は故意・重過失に限ることを押さえる。
過失のとらえ方(客観的過失説)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 判断の基準 | 個人の心理状態ではなく、客観的な注意義務違反 |
| 加害者の特定 | 特定できなくても、組織的な過失で足りる場合がある |
まず客観的過失説。過失を客観的にとらえるので、加害をした公務員が誰か特定できなくても、行政組織全体としての注意義務違反(組織的過失)があれば、賠償責任が認められることがある。「加害者を特定できなければ国賠請求できない」わけではない、という点が重要だ。
次に求償だ。
国などから公務員への求償
| 公務員の状態 | 求償 |
|---|---|
| 故意または重大な過失がある | できる |
| 軽い過失にとどまる | できない |
国や公共団体が被害者に賠償した後、その分を公務員本人に求償できるのは、公務員に故意または重大な過失があったときに限られる。軽い過失にとどまるなら、求償はできない。これは、求償を恐れて公務員が萎縮してしまわないようにするためだ。
わかりやすく言い換えると
つまり、国家賠償法1条は故意か過失を要件とし(過失責任主義)、その過失は客観的にみる。だから加害者が特定できなくても組織的な過失で足りる。そして公務員への求償は、故意または重大な過失のときだけだ。
要するに押さえどころは2つ。①過失は客観的な注意義務違反でとらえ、加害公務員を特定できなくても組織的過失で足りる、②求償できるのは故意または重大な過失のときに限られ、軽過失では求償できない。
試験のツボ
🔴 一番出る:客観的過失説
①過失は、個人の心理ではなく客観的な注意義務違反でとらえる
②加害公務員を特定できなくても、組織的な過失で足りる場合がある
🔴 次に出る:求償は故意・重過失のときだけ
国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失があるときに限られる。
🟡 押さえると安定:過失責任主義
故意も過失もなければ、国などは責任を負わない(無過失責任ではない)。
よくある間違い
①「加害公務員を特定できなければ、国賠請求はできない」→ ✗ 客観的過失説により、組織的な過失の認定で足りる場合がある。
②「公務員に軽い過失があれば、国などは当然に求償できる」→ ✗ 求償できるのは、故意または重大な過失があるときに限られる。
③「国家賠償法1条は、故意も過失もなくても責任を負わせる」→ ✗ 故意または過失(注意義務違反)が要件。過失責任主義だ。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(過失責任主義)
国家賠償法1条の故意・過失に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 国賠法1条は、公務員に故意や過失がなくても責任を負わせるものとされる
- 国賠法1条は、損害さえあれば故意も過失も問わず責任が生じるとされる
- 国賠法1条は、公務員の過失をまったく要件としないものとされている
- 国賠法1条の責任には、公務員の故意または過失(注意義務違反)が必要
解答は 4 だ。
国家賠償法1条の責任には、公務員の故意または過失(注意義務違反)が必要だ(過失責任主義)。損害だけでは足りないぞ。
選択肢1の「故意も過失もなくても」、選択肢2の「問わず生じる」、選択肢3の「過失を要件としない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 故意か過失が必要 |
| 2 | ✗ | 故意・過失を問う |
| 3 | ✗ | 過失は要件である |
| 4 | ✓ | 故意または過失が要件で正しい |
オリジナル問題2(客観的過失説)
過失のとらえ方に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 過失は、加害をした公務員の個人的な心理状態としてのみ判断されるとされる
- 過失は客観的な注意義務違反でとらえ、組織的な過失でも足りるとされる
- 加害公務員を特定できなければ、国賠請求はできないものとされる
- 過失は、行政組織ではなく必ず特定の個人に求められるものとされる
解答は 2 だ。
過失は、客観的な注意義務違反でとらえ、加害公務員を特定できなくても組織的な過失で足りるとされる。個人の心の中だけでは判断しないぞ。
選択肢1の「心理状態としてのみ」、選択肢3の「特定できなければ不可」、選択肢4の「必ず個人に」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 客観的な注意義務違反でとらえる |
| 2 | ✓ | 客観的にとらえ組織的過失で足り正しい |
| 3 | ✗ | 特定できなくても足りる場合がある |
| 4 | ✗ | 組織的な過失でも足りる |
オリジナル問題3(求償の要件)
国などから公務員への求償に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 国などは、公務員に軽い過失があっても当然に求償できるものとされている
- 国などは、公務員にまったく過失がなくても求償できるものとされる
- 国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失のときに限る
- 国などは、公務員に対して求償することは一切できないものとされる
解答は 3 だ。
国などが公務員に求償できるのは、故意または重大な過失があるときに限られる。軽い過失では求償できないぞ。公務員の萎縮を防ぐためだ。
選択肢1の「軽い過失でも当然に」、選択肢2の「過失がなくても」、選択肢4の「一切できない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 軽い過失では求償できない |
| 2 | ✗ | 過失がなければ求償できない |
| 3 | ✓ | 故意または重大な過失のときに限り正しい |
| 4 | ✗ | 故意・重過失なら求償できる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 過失責任主義 = 国家賠償法1条は、公務員の故意または過失(注意義務違反)を要件とする。
- 🔴 客観的過失説 = 過失は客観的な注意義務違反でとらえ、加害者を特定できなくても組織的過失で足りる。
- 🟡 求償の要件 = 求償できるのは故意または重大な過失のときに限る。軽過失では求償できない。
次に学ぶ
- 国家賠償法1条 ── 故意・過失を要件とする、国家賠償の中核規定。
- 公権力の行使 ── 故意・過失とならぶ、国家賠償法1条の要件。
- 取消訴訟 ── 処分を争う抗告訴訟。国家賠償とあわせて救済の全体像を押さえる。
執筆: SikakuQuest編集部