特定社会保険労務士とは(全体像)
社労士は労働・社会保険の手続や相談を担うが、労使の間で起きた個別の紛争を「代理して」解決手続にあたることは、一般の社労士にはできない。そこで2007年4月に創設されたのが特定社会保険労務士の制度。紛争解決手続代理業務試験に合格し付記登録を受けることで、労働紛争の解決手続を代理できる。
押さえるのは2点。
- ⭐ADR代理ができる・取得は3要件 … 社労士資格+紛争解決手続代理業務試験の合格+付記登録の3つで取得。あっせんやADRの代理ができる。
- 代理は紛争解決手続・訴訟は弁護士 … 代理できるのはあっせんやADRといった紛争解決手続で、裁判(訴訟)の代理は弁護士の業務。
⭐一番の引っかけは「社労士なら誰でも代理できる」「社労士資格がなくてもなれる」「あらゆる訴訟を代理できる」。取得は3要件、前提は社労士資格、代理はあっせん・ADR(訴訟は弁護士)。
詳しく:創設・取得要件・代理範囲を表でつかむ
ここが心臓部。「いつできて・どうなり・何ができるか」は次の表に全部つまっている。
制度と取得の3要件
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| できること | 紛争解決手続代理業務(ADR代理) |
| 創設 | 2007年4月 |
| 取得① | 社労士資格を持つこと |
| 取得② | 特別研修を修了し紛争解決手続代理業務試験に合格すること |
| 取得③ | 連合会への付記登録を受けること |
代理できる範囲
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 個別労働紛争のあっせん | 労働局の紛争調整委員会のあっせんの代理 |
| 労働委員会のあっせん | 都道府県労働委員会のあっせんの代理 |
| 社労士会のADR | 社労士会労働紛争解決センター等のADR代理 |
| 訴訟 | 裁判(訴訟)の代理は弁護士の業務(特定社会保険労務士は不可) |
押さえどころは、①2007年4月創設・ADR代理ができる社労士、②取得は社労士資格+紛争解決手続代理業務試験合格+付記登録の3要件、③代理はあっせん・ADR(訴訟は弁護士)、の3つ。
わかりやすく言い換えると
要するに「労使のもめごとを、代理人として解決手続で支援できる社労士」。普通の社労士は相談や書類づくりはできるが、もめごとの「代理」はできない。そこで特別な試験に合格して付記登録すれば、特定社会保険労務士として代理ができる。
つまり、引っかけられやすいのは2つ。1つ目は「社労士なら誰でも当然に紛争解決手続代理ができる」と思い込むこと。実際は特定社会保険労務士(資格+試験合格+付記登録)でなければできない。2つ目は「あらゆる訴訟で代理できる」と思い込むこと。実際は代理できるのはあっせんやADRで、訴訟の代理は弁護士の業務。
試験のツボ
🔴 一番出る:取得の3要件
①社労士資格・紛争解決手続代理業務試験の合格・連合会への付記登録の3つが必要
②社労士なら誰でも当然に代理できるわけではない(社労士資格が前提)
🔴 次に出る:代理できる範囲
①個別労働紛争のあっせん代理・労働委員会のあっせん代理・社労士会のADR代理
②裁判(訴訟)の代理は弁護士の業務(あらゆる訴訟を代理できるわけではない)
🟡 押さえると安定:制度の趣旨・創設
①紛争解決手続代理業務(ADR代理)を行える社労士
②2007年4月に創設された(裁判によらない労働紛争の解決を専門知識で支える)
よくある間違い
①「社労士であれば誰でも当然に紛争解決手続代理業務を行える」→ ✗ 行えるのは特定社会保険労務士。社労士資格に加えて、紛争解決手続代理業務試験の合格と付記登録が必要。
②「特定社会保険労務士は社労士資格がなくてもなれる」→ ✗ まず社労士資格が前提。社労士資格・試験合格・付記登録の3つがそろって初めて取得できる。
③「特定社会保険労務士はあらゆる訴訟で当事者を代理できる」→ ✗ 代理できるのはあっせんやADRといった紛争解決手続。裁判(訴訟)の代理は弁護士の業務。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(取得要件)
特定社会保険労務士の取得要件に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 社労士資格がなくても、紛争解決手続代理業務試験に合格すれば取得できるものとされているものである
- 社労士であれば、試験や付記登録を経ずに当然に特定社会保険労務士になれるものとされているものである
- 社労士資格・紛争解決手続代理業務試験の合格・連合会への付記登録の3つが必要とされているものである
- 取得には、社労士資格に加えて司法試験の合格と弁護士登録が必要であるものとされている
解答は 3 だよ。
取得には、社労士資格・紛争解決手続代理業務試験の合格・連合会への付記登録の3つが必要なんだ。
選択肢1の「資格なしでも」、選択肢2の「当然になれる」、選択肢4の「司法試験合格」は、いずれも誤りだよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | まず社労士資格が前提である |
| 2 | ✗ | 試験合格と付記登録を経る必要がある |
| 3 | ✓ | 社労士資格・試験合格・付記登録の3要件で正しい |
| 4 | ✗ | 司法試験合格・弁護士登録が必要なものではない |
オリジナル問題2(代理できる範囲)
特定社会保険労務士が代理できる範囲に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 個別労働紛争のあっせんや社労士会のADRなどの紛争解決手続を代理できるとされている
- あらゆる民事訴訟・刑事訴訟で当事者を代理できる権限を持つものとされているものである
- 税務訴訟の代理を専門に行う権限が付与されるものとされているものである
- 紛争解決手続の代理はいっさい行えず、相談に応じることのみができるものとされている
解答は 1 だっ。
特定社会保険労務士は、個別労働紛争のあっせんや社労士会のADRなどの紛争解決手続を代理できるんだっ。
選択肢2の「あらゆる訴訟」、選択肢3の「税務訴訟」、選択肢4の「相談のみ」は、いずれも誤りだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | あっせん・社労士会のADR等を代理できるで正しい |
| 2 | ✗ | あらゆる訴訟の代理は弁護士の業務である |
| 3 | ✗ | 税務訴訟の代理を行うものではない |
| 4 | ✗ | 相談のみでなく紛争解決手続の代理ができる |
オリジナル問題3(制度の趣旨と創設)
特定社会保険労務士の制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 明治期に創設され、当初からすべての社労士に代理権が認められてきた制度とされているものである
- 2007年4月に創設された、紛争解決手続代理業務を行うことができる社労士の制度とされている
- 社労士とは無関係に、弁護士のみを対象として設けられた制度とされているものである
- 紛争解決手続代理業務は、一般の社労士の当然の業務範囲に含まれるものとされているものである
解答は 2 である。
特定社会保険労務士は、2007年4月に創設された、紛争解決手続代理業務を行うことができる社労士の制度である。
選択肢1の「明治期創設」、選択肢3の「弁護士のみ対象」、選択肢4の「一般社労士の当然の業務」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 明治期創設でも全社労士に代理権があるのでもない |
| 2 | ✓ | 2007年4月創設・ADR代理を行える社労士の制度で正しい |
| 3 | ✗ | 弁護士のみ対象ではなく社労士の制度である |
| 4 | ✗ | 一般の社労士の当然の業務範囲ではない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 制度の趣旨と創設 = 紛争解決手続代理業務(ADR代理)を行うことができる社労士。2007年4月創設。一般の社労士にはない代理権を持つ。
- 🔴 取得要件 = 社労士資格・紛争解決手続代理業務試験の合格・連合会への付記登録の3つが必要。
- 🟡 代理できる範囲 = 個別労働関係紛争のあっせん代理・都道府県労働委員会のあっせん代理・社労士会労働紛争解決センター等のADR代理。訴訟の代理は弁護士の業務。
次に学ぶ
- 社労士の業務(3号) ── ADR代理は3号に含まれず、特定社会保険労務士の業務。
- 社労士の独占業務(1号・2号) ── 業務体系のなかでの位置づけ。
- 社会保険労務士試験 ── 社労士資格の取得が特定社会保険労務士の前提。
執筆: SikakuQuest編集部