経過的加算とは(全体像)
経過的加算は、20歳前または60歳以後の厚生年金の被保険者期間を、老齢厚生年金に上乗せして埋め合わせるしくみ。
なぜそんな調整が要るのか。老齢基礎年金(1階)は、20歳以上60歳未満の期間だけで計算される。だから、18歳から働いた人の18〜20歳や、60歳を過ぎても働いた期間は、厚生年金に入っていても1階には乗らない。それだと「働いて保険料を納めたのに給付に結びつかない」部分が出てしまう。
そこで、その乗らない部分を老齢厚生年金(2階)の側で拾い直す。これが経過的加算。
押さえる対比はこれだけ。
- 20歳前・60歳以後の厚年期間 … 基礎年金に乗らない → 経過的加算の対象
- 20歳以上60歳未満の厚年期間 … 基礎年金に乗る → 対象外
詳しく:この表だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。経過的加算の中身は、次の表に全部つまっている。
経過的加算の対象と計算
| 内容 | |
|---|---|
| 対象期間 | 20歳前・60歳以後の厚年被保険者期間 |
| 対象外 | 20歳以上60歳未満の厚年期間(基礎年金に乗る) |
| 乗らない理由 | 老齢基礎年金は20歳以上60歳未満で計算 |
| 加算先 | 老齢厚生年金(2階) |
| 加算額 | 定額部分に相当する額 − 厚年期間の老齢基礎年金額 |
| 性格 | 定額部分そのものではなく「差額」 |
押さえどころは大きく2つに分かれる。
1つ目、対象は「20歳前」か「60歳以後」の厚年期間だけ。20歳〜60歳の期間は基礎年金に乗るので対象外。「全部の厚年期間が対象」と取り違えやすいのでここが出題の中心。
2つ目、加算額は引き算。従前の「定額部分に相当する額」をそのまま乗せるのではなく、すでに基礎年金として出る厚年期間ぶんを差し引いた残り(差額)が加算される。「定額部分とまるごと同じ額」ではない。
なお、このしくみは1986年(昭和61年)の基礎年金制度に対応している。それ以前の老齢厚生年金は「定額部分+報酬比例部分」だったが、定額部分の役割が老齢基礎年金へ移った。その移行で生じた「20歳前・60歳以後の隙間」を埋めるのが経過的加算、という位置づけ。
わかりやすく言い換えると
要するに、こうイメージするとラク。
老後の年金は2階建て。1階(基礎年金)は20歳〜60歳の40年でフロアを敷く。でも18歳から働いた人や60歳超えても働いた人は、その期間が1階の床に乗らない。
そこで、はみ出した期間ぶんを2階(厚生年金)に小さく継ぎ足す。それが経過的加算。しかも継ぎ足す額は「丸ごと」ではなく、1階で出るぶんを引いた「お釣り(差額)」だけ。
試験のツボ
🔴 一番出る:対象期間
①20歳前 = 対象(基礎年金に乗らない)
②60歳以後 = 対象(基礎年金に乗らない)
③20歳以上60歳未満 = 対象外(基礎年金に乗る)
🔴 次に出る:加算額は引き算
①基準 = 従前の定額部分に相当する額
②そこから引く = 厚年期間に対応する老齢基礎年金額
③加算額 = その差額(定額部分そのものと同額ではない)
🟡 押さえると安定:趣旨と性格
①趣旨 = 基礎年金に乗らない厚年期間の埋め合わせ
②性格 = 1986年の基礎年金制度に対応した経過的なしくみ
よくある間違い
①「すべての厚年期間が対象」→ ✗ 対象は20歳前・60歳以後だけ。20歳〜60歳は基礎年金に乗るので対象外。
②「加算額は定額部分とまるごと同じ額」→ ✗ 定額部分相当額から基礎年金該当額を引いた「差額」が加算される。
③「20歳以上60歳未満も含めて加算」→ ✗ その範囲は基礎年金に反映されるので、経過的加算には含めない。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(対象論点)
経過的加算の対象となる期間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 経過的加算の対象は、すべての厚生年金保険の被保険者期間にもれなく広く及ぶものとされている
- 経過的加算の対象は、20歳前または60歳以後の厚生年金保険の被保険者期間に限定されている
- 経過的加算の対象は、20歳以上60歳未満の厚年期間のみにかぎって認められるものとされている
- 経過的加算の対象は、国民年金の第1号被保険者であった期間だけにかぎられるものとされている
解答は 2 だよ。
対象は20歳前または60歳以後の厚年期間だけ。20歳〜60歳の期間は老齢基礎年金に乗るので対象外なんだ。「前うしろ」で覚えてね。
選択肢1の「全期間が対象」は取り違えの定番、選択肢3は逆(対象外の範囲)、選択肢4の国民年金第1号期間も対象ではないよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 全期間ではない |
| 2 | ✓ | 20歳前・60歳以後が対象 |
| 3 | ✗ | その範囲は対象外 |
| 4 | ✗ | 厚年期間が対象 |
オリジナル問題2(計算論点)
経過的加算の額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 経過的加算の額は、従前の定額部分に相当する額とぴったり同じ額がそのまま支給される
- 経過的加算の額は、報酬比例部分の額に一定の割合を乗じて機械的に算定し直される
- 経過的加算の額は、定額部分相当額から厚年期間の老齢基礎年金額を差し引いて求める
- 経過的加算の額は、老齢基礎年金の満額に一定の率を乗じて一律に決められるものとされる
解答は 3 だっ。
加算額は「定額部分に相当する額 − 厚年期間の老齢基礎年金額」の引き算だっ。定額部分を丸ごと乗せるのではなく、基礎年金で出るぶんを引いた差額が加算されるんだっ。
選択肢1の「丸ごと同額」が最大のひっかけ、選択肢2の報酬比例や選択肢4の満額比例とも別ものだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 差額を引く |
| 2 | ✗ | 報酬比例と別 |
| 3 | ✓ | 定額相当 − 基礎 |
| 4 | ✗ | 満額比例でない |
オリジナル問題3(趣旨論点)
経過的加算の趣旨に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 経過的加算は、基礎年金に反映されない厚年期間を埋め合わせるため老齢厚生年金へ加算される
- 経過的加算は、厚生年金の保険料の負担をあらかじめ広く一律に軽減するために設けられている
- 経過的加算は、在職中の年金の支給停止を補うために在職者へ向けて特に加算されるものとされる
- 経過的加算は、繰下げ受給を選んだ人だけにとくに上乗せして割増し支給されるものとされている
解答は 1 である。
趣旨は、老齢基礎年金に反映されない20歳前・60歳以後の厚年期間を、老齢厚生年金の側で埋め合わせることである。
選択肢2の保険料軽減、選択肢3の在職老齢年金、選択肢4の繰下げ受給は、いずれも別の制度の話である。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 基礎非反映の補填 |
| 2 | ✗ | 負担調整でない |
| 3 | ✗ | 在職調整と別 |
| 4 | ✗ | 繰下げと別 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 対象 = 20歳前・60歳以後の厚年期間(基礎年金に乗らない部分)。20歳〜60歳は対象外。
- 🔴 加算額 = 定額部分相当額 − 厚年期間の老齢基礎年金額(丸ごと同額ではなく「差額」)。
- 🟡 趣旨と性格 = 基礎年金に乗らない厚年期間の埋め合わせ。1986年の基礎年金制度に対応した経過的なしくみ。
次に学ぶ
- 老齢厚生年金 ── 経過的加算が上乗せされる年金の全体像。どこに加算されるのかが見える。
- 報酬比例部分 ── 同じ老齢厚生年金を構成する中核の計算。経過的加算(差額調整)との役割の違いで押さえる。
- 老齢基礎年金 ── 20歳〜60歳で計算される1階部分。乗らない期間を経過的加算で補う関係。
執筆: SikakuQuest編集部