報酬比例部分とは(全体像)
報酬比例部分は、現役時代にどれだけの報酬で・どれだけの期間、厚生年金に加入したかを金額に変換する年金部分。報酬が高い人・長く加入した人ほど多くなる。
老齢基礎年金のような定額ではない点がポイント。だから「定額で決まる」と書いてある選択肢は誤りになる。
計算は次の3つを掛け合わせるだけ。
- 平均標準報酬額 … 加入期間の報酬の平均
- 給付乗率 … 1000分のいくつ、という率
- 被保険者期間の月数 … 厚生年金に加入していた月数
詳しく:この表だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。報酬比例部分の中身は、次の2つの表に全部つまっている。
報酬比例部分の計算式(3要素)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 平均標準報酬額 | 加入期間の標準報酬の平均 |
| 給付乗率 | 1000分のいくつ、という率(2種類ある) |
| 被保険者期間の月数 | 厚生年金に加入していた月数(上限なし) |
| 関係 | この3つを掛け合わせて算定する |
被保険者期間の月数には頭打ちがないのが大事。老齢基礎年金は原則480月で頭打ちだが、報酬比例部分は長く働いた分だけ積み上がる。
次が、給付乗率と計算の基礎が2003年4月をはさんで変わるという最重要ポイント。
2003年4月「総報酬制」の前後
| 区分 | 2003年3月以前 | 2003年4月以後 |
|---|---|---|
| 給付乗率 | 1000分の7.125 | 1000分の5.481 |
| 計算の基礎 | 標準報酬月額のみ | 標準報酬月額+標準賞与額 |
| 平均の呼び方 | 平均標準報酬月額 | 平均標準報酬額 |
2003年4月から、ボーナス(標準賞与額)も計算の基礎に入れる「総報酬制」になった。基礎が広がったぶん、釣り合うように給付乗率を7.125→5.481へ下げている。だから乗率が下がっても給付水準そのものが大きく下がったわけではない。
2003年4月をまたいで加入した人は、前後の期間でそれぞれの乗率を使って計算し、合算する。
給付乗率は受験年度の最新仕様で要確認(本来水準の代表的な乗率を示しており、昭和21年4月1日以前生まれの人などは生年月日に応じて異なる扱いがある)。
わかりやすく言い換えると
要するに、報酬比例部分は「平均した報酬 × 決められた率 × 加入した月数」のかけ算。率が2003年4月で2種類に分かれる、これだけ。
率の数字(5.481と7.125)が変わったのは、計算にボーナスを入れるようにしたから。つまり「もらえる額が大きく減った」わけではない、と押さえる。
試験のツボ
🔴 一番出る:計算式の3要素
①平均標準報酬額
②給付乗率
③被保険者期間の月数
この3つを掛け合わせる(定額ではない)。
🔴 次に出る:2種の給付乗率
①2003年4月以後 = 1000分の5.481
②2003年3月以前 = 1000分の7.125
🟡 押さえると安定:2003年4月の総報酬制
計算の基礎が「標準報酬月額のみ」→「標準報酬月額+標準賞与額」に変わった。乗率を下げたのはその調整で、給付水準は実質的に同じ。
よくある間違い
①「給付乗率は常に1000分の7.125」→ ✗ 2種類ある。2003年4月以後は5.481、以前が7.125。
②「報酬比例部分は標準報酬月額のみで計算する」→ ✗ 総報酬制(2003年4月)以後は、標準報酬月額+標準賞与額の平均が基礎。
③「乗率が下がったのは給付を大きく減らしたから」→ ✗ ボーナスを基礎に入れた調整であって、給付水準は実質同等。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(計算式論点)
報酬比例部分の計算式に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 報酬比例部分は加入者全員に共通の定額で支給され、報酬の多寡をいっさい反映しないものとされる
- 報酬比例部分は平均標準報酬額に給付乗率と被保険者期間の月数を乗じて算定されるものとされている
- 報酬比例部分は被保険者期間の月数のみで決まり、報酬の額はおよそ計算に影響しないものとされる
- 報酬比例部分は平均標準報酬額のみで決まり、被保険者期間の月数には全くかかわらないものとされる
解答は 2 だよ。
報酬比例部分は「平均標準報酬額 × 給付乗率 × 被保険者期間の月数」の3要素のかけ算なんだ。定額でもないし、月数だけ・報酬だけで決まるものでもないよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 報酬に比例する(定額ではない) |
| 2 | ✓ | 3要素を掛け合わせて算定する |
| 3 | ✗ | 報酬の額も計算の要素 |
| 4 | ✗ | 月数も計算の要素 |
オリジナル問題2(総報酬制論点)
2003年4月の総報酬制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 総報酬制の導入後もなお計算の基礎は標準報酬月額のみで、賞与はいっさい反映されないものとされる
- 総報酬制は2003年4月より前の被保険者期間にも、すべてさかのぼって一律に適用されるものとされる
- 総報酬制以後は標準報酬月額に標準賞与額を合算した平均を基礎とし、給付乗率を調整したものとされる
- 総報酬制の導入によって、老齢厚生年金の給付水準そのものが一律かつ大幅に引き下げられたとされる
解答は 3 である。
2003年4月の総報酬制では、標準報酬月額に標準賞与額を合算した平均を基礎とし、これに合わせて給付乗率を調整した。賞与も反映するし、過去の期間にさかのぼって一律適用するものでもない。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 以後は賞与も合算する |
| 2 | ✗ | 期間ごとに分けて計算する |
| 3 | ✓ | 月額+賞与を基礎に乗率を調整 |
| 4 | ✗ | 給付水準は実質的に同等 |
オリジナル問題3(乗率論点)
報酬比例部分の給付乗率に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 給付乗率は2003年4月以後を1000分の5.481、2003年3月以前を1000分の7.125とする扱いである
- 給付乗率は制度の創設以来ただの一度も変わらず、常に1000分の7.125のまま固定されているとされる
- 給付乗率は被保険者一人ひとりの標準報酬の高低に応じて、そのつど個別に設定し直されるものとされる
- 給付乗率は2003年4月以後、かえってむしろ1000分の7.125の水準にまで引き上げられて現在に至るものとされる
解答は 1 だっ。
給付乗率は2003年4月以後が1000分の5.481、2003年3月以前が1000分の7.125。2種類あって、賞与を基礎に入れた以後のほうが小さい数字だっ。一律固定でも、個別設定でもないよっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 以後5.481・以前7.125で正しい |
| 2 | ✗ | 2種類あり固定ではない |
| 3 | ✗ | 率は全員共通 |
| 4 | ✗ | 以後は5.481(下がった) |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 計算式の3要素 = 平均標準報酬額 × 給付乗率 × 被保険者期間の月数(掛け算・定額ではない)。
- 🔴 2種の給付乗率 = 2003年4月以後が1000分の5.481、2003年3月以前が1000分の7.125。
- 🟡 2003年4月の総報酬制 = 計算の基礎が「月額のみ」→「月額+賞与」に。乗率を下げたのは調整で、給付水準は実質同等。
次に学ぶ
- 老齢厚生年金 ── 報酬比例部分を中核とする年金の全体。何が上乗せされるかを押さえると立体的になる。
- 標準報酬月額 ── 平均標準報酬額のもとになる、月々の報酬の基礎。
- 標準賞与額(厚年) ── 総報酬制で平均に合算される、賞与の基礎。
執筆: SikakuQuest編集部