併給調整とは(全体像)
併給調整は、同じ人が老齢・障害・遺族など2以上の年金を受けられるとき、どう受け取るかを調整するルールのこと。無制限に重ねると保障が過剰になるので、原則は1人1年金にしている。
押さえるのは、原則と例外の対比。
- 原則 … 2以上の年金は一つを選び、他は支給停止(1人1年金)。
- 例外 … 65歳以上は、支給事由の違う年金でも一定の組合せなら両方もらえる。
なお、同じ支給事由の基礎年金+厚生年金(老齢基礎+老齢厚生など)は、最初から2階建てで両方もらえる。つまり、これは「2以上の年金」の選択の話とは別、と分けて押さえる。
詳しく:この対比だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。併給調整の中身は、次の表に全部つまっている。
併給調整の原則と例外
| 原則(65歳未満を含む) | 例外(65歳以上) | |
|---|---|---|
| 2以上の年金 | 一つを選択・他は支給停止 | 支給事由の違う組合せも併給可 |
| 同じ支給事由の基礎+厚生 | もともと両方もらえる | もともと両方もらえる |
| 選択 | 本人の申出による(後で変更可) | 同じ |
65歳以上で併給できる「支給事由の違う組合せ」は、次のとおり。
65歳以上で併給できる組合せ
| 組合せ | 可否 |
|---|---|
| 老齢基礎年金+遺族厚生年金 | 併給できる |
| 障害基礎年金+老齢厚生年金 | 併給できる |
| 障害基礎年金+遺族厚生年金 | 併給できる |
原則の核は、2以上の年金を受けられるときは、本人が一つを選び、選ばなかった年金はその間支給停止になること。たとえば老齢の年金と障害の年金が重なったら、有利な一方を選んで他方は止める。
そして選択は、本人の申出で決める。一度選んでも、事情が変われば後から別の年金へ選び直せる——これが借りる人ならぬ受ける人を守るしくみで、社労士試験でよく問われる。
わかりやすく言い換えると
要するに、むずかしく考えず、こう覚えるとラク。
ふつうは「どれか一つを選ぶ」(1人1年金)。同じ事由の基礎と厚生だけは「最初から両方」。そして65歳からは「種類が違えば両方OKの枠が広がる」。
65歳以上で両方もらえる代表例は、こうイメージする。
①老齢基礎+遺族厚生 … 自分の老齢年金+亡くなった配偶者の遺族年金
②障害基礎+老齢厚生 … 自分の障害年金+自分の老齢厚生年金
③障害基礎+遺族厚生 … 自分の障害年金+配偶者の遺族年金
試験のツボ
🔴 一番出る:原則と65歳以上の対比
①原則 = 2以上の年金は一つを選択・他は支給停止(1人1年金)
②65歳以上 = 支給事由の違う年金を一定の組合せで併給できる
🔴 次に出る:65歳以上で併給できる組合せ
①老齢基礎+遺族厚生
②障害基礎+老齢厚生
③障害基礎+遺族厚生
🟡 押さえると安定:選択は本人の申出による。一度選んでも後から別の年金へ選び直せる(一度選んだら変えられない、ではない)。
🟡 混同注意:同じ支給事由の基礎年金+厚生年金(老齢基礎+老齢厚生など)は、選択の話ではなく、もともと両方もらえる。
よくある間違い
①「2以上の年金は年齢を問わず常に全部もらえる」→ ✗ 原則は1人1年金。一つを選び、他は支給停止になる。
②「65歳以上でも必ず1人1年金で、併給は一切できない」→ ✗ 65歳以上は支給事由の違う年金を一定の組合せで併給できる。
③「いったん選んだ年金は後から変更できない」→ ✗ 選択は本人の申出で行い、後から別の年金へ選び直せる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(1人1年金の原則)
2以上の年金を受けられるときの取扱いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 2以上の年金を受けられるときは、年齢を問わず常にそのすべてを併せて受給できる取扱いとされている
- 2以上の年金を受けられるときは、原則として一つを選択し、他はその間支給停止となる取扱いとされる
- 2以上の年金を受けられるときは、国がいずれか一つを職権で指定し、本人は選べない取扱いとされている
- 2以上の年金を受けられるときは、すべての受給権が直ちに消滅し、再取得もできない取扱いとされる
解答は 2 だよ。
原則は1人1年金。2以上の年金を受けられるときは、本人が一つを選び、選ばなかった年金はその間支給停止になるんだ。「ふつうは一つ」とまず固めてね。
選択肢1の「常に全部」は誤り。選択肢3は本人の申出で選ぶので「国が職権で指定」は誤り。選択肢4のように受給権が消えるわけでもないよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 原則は1人1年金で全部はもらえない |
| 2 | ✓ | 一つを選択・他は支給停止で正しい |
| 3 | ✗ | 本人の申出で選ぶ |
| 4 | ✗ | 受給権は消滅しない |
オリジナル問題2(65歳以上の併給)
65歳以上の年金の併給に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 65歳以上も例外なく1人1年金であり、種類の違う年金を併せて受けることは一切できないとされている
- 65歳以上は、同じ支給事由の年金を二重に受け取れるよう変わり、二重給付が広く可能になるとされる
- 65歳以上は、老齢基礎年金と遺族厚生年金など支給事由の違う年金を一定の組合せで併給できるとされる
- 65歳以上の併給はかえって縮小され、併せて受けられる組合せが従来より大幅に減らされたとされている
解答は 3 だっ。
65歳以上は、支給事由の違う年金を一定の組合せで併給できるっ。代表例は老齢基礎+遺族厚生、障害基礎+老齢厚生、障害基礎+遺族厚生だっ。
選択肢1の「一切できない」は誤りで、65歳以上には例外があるっ。選択肢2は「同じ支給事由を二重に」ではなく支給事由が違う組合せが対象だっ。選択肢4の「縮小」も逆で、組合せが認められているっ!
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 65歳以上は例外がある |
| 2 | ✗ | 対象は支給事由が違う組合せ |
| 3 | ✓ | 異種年金を一定の組合せで併給できる |
| 4 | ✗ | 縮小ではなく併給が認められる |
オリジナル問題3(選択と選択替え)
併給調整における年金の選択に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 選択は本人の申出によって行い、後から別の年金へ選択替えをすることもできるとされている
- どの年金を受けるかは国が職権で一方的に決定し、本人の関与はまったく認められないとされている
- いったん選択した年金は、理由のいかんを問わず生涯にわたり一切変更できないとされている
- 選択替えは65歳未満でのみ認められ、65歳以上は一切選択を変更できないとされている
解答は 1 である。
どの年金を受けるかは本人の申出によって選び、後から別の年金へ選択替えもできるのである。事情が変わって別の年金が有利になったときは、申し出て選び直せる。
選択肢2の「国が職権で決定」は誤りで、本人が選ぶのである。選択肢3の「一切変更できない」も誤りである。選択肢4のように年齢で選択替えを限定する決まりもないのである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 申出で選び、選択替えもできる |
| 2 | ✗ | 本人の申出による |
| 3 | ✗ | 後から変更できる |
| 4 | ✗ | 年齢で選択替えを限定しない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 原則は1人1年金 = 2以上の年金は一つを選択・他は支給停止。同じ支給事由の基礎+厚生はもともと両方もらえる。
- 🔴 65歳以上の例外 = 支給事由の違う年金を一定の組合せで併給できる(老齢基礎+遺族厚生/障害基礎+老齢厚生/障害基礎+遺族厚生)。
- 🟡 選択は本人の申出 = 後から別の年金へ選び直せる(一度選んだら変えられない、ではない)。
次に学ぶ
- 年金の支給・受給権の保護 ── 年金をいつ・どう受け取り、受給権をどう守るかのルール。支給段階の調整として併給調整とつながる。
- 老齢基礎年金 ── 65歳から受ける基本の年金。異種併給の中心になる給付。
- 障害基礎年金 ── 老齢・遺族の厚生年金と併給できる一方の年金。
執筆: SikakuQuest編集部