脱退一時金とは(全体像)
脱退一時金は、短期間で帰国する外国人に、厚生年金の保険料の一部を一時金で返すしくみ。公的年金は長く加入して老後に受け取る制度なので、数年で帰国する外国人は保険料が年金に結びつかず掛け捨てに近くなる。それを和らげるために用意された。
押さえるのは、これが「年金をもらえない人」への調整だということ。だから、すでに年金を受けられる人(受給資格を満たした人など)は対象にならない。年金を受ける権利を捨ててこの一時金を選ぶ、という制度ではない。
なお、国民年金にも同じしくみの脱退一時金がある。本項は厚生年金のほうの話。
詳しく:この表だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。脱退一時金の中身は、次の表に全部つまっている。
脱退一時金の受給要件と対象外
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 日本国籍を持たない者(外国人) |
| 加入期間 | 厚生年金の被保険者期間が6か月以上 |
| 状態 | 被保険者の資格を失い、日本国内に住所がなくなったこと |
| 請求期限 | 日本に住所がなくなった日から2年以内 |
| 対象外 | 老齢年金の受給資格期間を満たした者/障害年金などの受給権を持ったことがある者 |
額のもとになる月数の上限は、改正で大きく変わった。ここが一番問われる。
額の決まり方と2021年の改正
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 額の決まり方 | 被保険者期間(月数)に応じて段階的に増える |
| 月数の上限 | 2021年(令和3年)4月に 36か月 → 60か月 へ引上げ |
| 意味 | 在留期間が長くなった実態に合わせ、より長く加入した人も受け取れる範囲を拡大 |
つまり、48か月加入して帰る外国人は、改正前は36か月分が頭打ちだったが、改正後は実際の月数に応じてより多く受け取れる。なお、額の計算に使う具体的な料率は年度で見直されるため、受験年度の最新仕様で確認しておくと安心。
わかりやすく言い換えると
要するに、こう覚えるとラク。
脱退一時金は「短く働いて帰る外国人への、保険料の払い戻し」。年金をもらえるほど長くは加入しなかった人が対象だから、年金を受けられる人は対象外。
数字は3つだけ。6か月以上入っていれば受けられる、月数の上限は60か月(2021年4月から)、請求は2年以内。
試験のツボ
🔴 一番出る:誰が対象か
①外国人であること(日本人は対象外)
②厚生年金の被保険者期間が6か月以上
③資格を失って日本を離れたこと
🔴 次に出る:月数の上限は2021年4月に増えた
①額は被保険者期間(月数)に応じて段階的に増える
②上限は 36か月 → 60か月(2021年4月の改正)
🟡 押さえると安定:請求期限と対象外
①請求は日本に住所がなくなった日から2年以内
②年金を受けられる人(受給資格期間を満たした者・障害年金等の受給権を持ったことがある者)は対象外
よくある間違い
①「日本人も含めて誰でも請求できる」→ ✗ 対象は外国人だけ。日本人は対象にならない。
②「月数の上限は今も36か月」→ ✗ 2021年4月の改正で60か月に増えた。
③「年金をもらえる人も、受給権を捨てれば一時金を選べる」→ ✗ 受給資格を満たした人などは対象外。年金本体を手放して一時金を選ぶ制度ではない。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(対象論点)
脱退一時金の対象に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 脱退一時金は日本国籍を有する被保険者を含むすべての者が当然に請求できるものとされている
- 脱退一時金は厚生年金の被保険者期間が1か月以上あれば直ちに請求できるものとされている
- 脱退一時金は日本国内に住所を有したまま被保険者の資格を続けている者が請求できるとされている
- 脱退一時金は被保険者期間が6か月以上の外国人が資格喪失後に国外転出したとき請求できる
解答は 4 だよ。
対象は「外国人・6か月以上・国外転出」だよ。日本人は対象にならないし、加入は6か月以上が必要で、資格を失って日本を離れたことが要件なんだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 対象は外国人だけ |
| 2 | ✗ | 6か月以上が必要 |
| 3 | ✗ | 国外転出が要件 |
| 4 | ✓ | 外国人・6か月以上・国外転出 |
「外国人・6か月以上・国外転出」――ここが対象だよ。
オリジナル問題2(額・改正論点)
脱退一時金の額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 脱退一時金の額のもとになる月数の上限は2021年4月の改正後も従前どおり36か月のまま据え置かれている
- 脱退一時金の額は被保険者期間の長短にかかわらず一律の定額で支給されるものとされている
- 脱退一時金の額のもとになる月数の上限は2021年4月の改正で36か月から60か月に引き上げられている
- 脱退一時金の額は被保険者期間が長いほどかえって少なくなるように定められているものとされている
解答は 3 だっ。
額のもとになる月数の上限は、2021年4月の改正で36か月から60か月に増えたんだっ。額は被保険者期間に応じて段階的に増えるから、定額でも、長いほど減るのでもないっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 60か月に引上げ |
| 2 | ✗ | 期間に応じる |
| 3 | ✓ | 36→60か月 |
| 4 | ✗ | 長いほど増える |
2021年4月で上限36か月から60か月へ――ここが要だっ!
オリジナル問題3(期限・対象外論点)
脱退一時金の請求期限と対象外に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 脱退一時金は日本国内に住所を有しなくなった日から起算して2年以内に請求するものとされている
- 脱退一時金は日本国内に住所を有しなくなった日から10年以内に限り請求できるものとされている
- 脱退一時金は老齢年金の受給資格期間を満たしている者であっても当然に請求できるものとされている
- 脱退一時金は障害年金の受給権を有したことがある者に対して優先して支給されるものとされている
解答は 1 である。
請求は日本に住所がなくなった日から2年以内である。年金を受けられる人(受給資格期間を満たした者・障害年金などの受給権を持ったことがある者)は対象外である。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 2年以内 |
| 2 | ✗ | 期限は2年以内 |
| 3 | ✗ | 受給資格者は対象外 |
| 4 | ✗ | 受給権者は対象外 |
請求は2年以内・年金を受けられる人は対象外――ここを押さえるのが肝要である。
まとめ
押さえどころ
- 🔴 対象 = 外国人で、厚生年金の被保険者期間が6か月以上あり、資格を失って日本を離れた人。日本人は対象外。
- 🔴 額 = 被保険者期間に応じて段階的に増え、月数の上限は2021年4月に36か月→60か月へ。
- 🟡 期限と対象外 = 請求は2年以内。年金を受けられる人は対象外(受給権を捨てて選ぶ制度ではない)。国民年金にも同じしくみがある。
次に学ぶ
- 厚生年金保険の被保険者 ── 一時金の前提になる「厚生年金に加入する人」の話。6か月以上加入したかどうかの土台。
- 老齢厚生年金 ── 受給資格を満たすと脱退一時金の対象外になる。「年金に結びつく人」の側。
- 老齢基礎年金 ── 受給資格期間(原則10年)を満たすかが、対象外かどうかの判定にかかわる。
執筆: SikakuQuest編集部