地域別最低賃金・特定最低賃金とは(全体像)
最低賃金は、具体的な金額を2つの種類で定めている。
- 地域別最低賃金 … 都道府県ごとに、その地域で働くすべての労働者に適用される基本の最低ライン。
- 特定最低賃金 … 決まった産業・業種の労働者だけに適用される、地域別より高い水準のライン。
地域別はどの産業の人にも必ず及ぶ「床」、特定は特定の産業にだけ重ねる「上乗せ」と考えると整理しやすい。
詳しく:この表だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。中身は次の2つの表に全部つまっている。
地域別と特定の違い
| 地域別最低賃金 | 特定最低賃金 | |
|---|---|---|
| 対象 | その都道府県の全労働者 | 特定の産業・業種の労働者 |
| 単位 | 都道府県ごと | 産業ごと |
| 水準 | 基本となる最低ライン | 地域別より高い |
| 性格 | 必ず適用される | 対象産業の人にだけ及ぶ |
地域別と特定で、いちばん狙われるのが罰則の根拠。ここが別物になっている。
罰則の根拠(地域別と特定で別物)
| 下回ったときの罰則 | 金額 | |
|---|---|---|
| 地域別 | 最低賃金法の罰則 | 50万円以下の罰金 |
| 特定 | 最低賃金法の罰則は対象外。労働基準法の「賃金全額払」違反 | 30万円以下の罰金がありうる |
特定を下回っても最低賃金法の罰金そのものはかからない。ただし、約束した賃金を払わないことになるので、労働基準法の「賃金は全額払う」ルール違反として別の罰金がかかりうる、というしくみ。
そして、地域別と特定の両方があてはまる労働者には、高い方が適用される。特定は地域別より高く設定されるので、通常は特定の額になる。
なお、特定最低賃金は、2008年(平成20年)7月の改正までは「産業別最低賃金」と呼ばれていた。今の名前に整理されたのがこのタイミング、と押さえればよい(年度の取り扱いは受験年度の最新仕様で確認)。
わかりやすく言い換えると
要するに、最低賃金には「全員向け」と「特定の業界向け」の2タイプがある、ということ。
①地域別 … その都道府県で働く全員の基本ライン。守らないと最低賃金法の罰金(50万円以下)。
②特定 … 決まった産業の人だけの上乗せライン。下回っても最低賃金法の罰金はかからないが、労働基準法の全額払い違反として別の罰金(30万円以下)。
両方あてはまる人は、つまり高い方を払えばOK、ということ。
試験のツボ
🔴 一番出る:地域別と特定の対比
①地域別 = 都道府県ごと・全労働者
②特定 = 特定産業・地域別より高い水準
🔴 次に出る:罰則の根拠の違い
①地域別 = 最低賃金法の罰則・50万円以下
②特定 = 最低賃金法は対象外・労働基準法の全額払違反で30万円以下
🟡 押さえると安定:両方あてはまる人は高い方(特定は地域別より高いので、通常は特定の額)。特定はもともと「産業別最低賃金」で、2008年7月に今の名前へ整理された。
よくある間違い
①「地域別最低賃金は特定の産業の人だけに適用される」→ ✗ 逆。全労働者向けが地域別、特定産業向けが特定。
②「特定を下回っても地域別と同じ最低賃金法の罰金がかかる」→ ✗ 特定は最低賃金法の罰則の対象外。労働基準法の全額払違反として30万円以下の罰金になる。
③「両方あてはまる人には低い方が適用される」→ ✗ 高い方が適用される。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(2種の対比)
地域別最低賃金と特定最低賃金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 地域別最低賃金は特定の産業の労働者だけを対象とし、特定最低賃金が全労働者を対象とするものとされている
- 地域別最低賃金は都道府県ごとに全労働者を対象とし、特定最低賃金は特定産業の労働者に地域別より高い水準で定められる
- 地域別最低賃金も特定最低賃金もいずれも全国一律の同一額で定められ、地域や産業による差は設けないとされている
- 地域別最低賃金と特定最低賃金はいずれも特定の産業の労働者のみを対象とし、一般の労働者には適用されないとされている
解答は 2 だよ。
地域別は都道府県ごとに全労働者、特定は特定産業の人へ地域別より高い水準。対象を逆にしたり、一律額にしたりするのが定番のひっかけなんだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 対象が逆 |
| 2 | ✓ | 全労働者と特定産業で正しい |
| 3 | ✗ | 一律額ではない |
| 4 | ✗ | 地域別は全労働者 |
地域別=全労働者、特定=特定産業で高め――これだよ。
オリジナル問題2(罰則の根拠)
最低賃金額に達しない賃金の罰則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 地域別も特定もともに最低賃金法によって同額の50万円以下の罰金が科される対象であるとされている
- 地域別も特定もおよそ罰則は設けられておらず、民事上の差額請求のみが認められているものとされる
- 特定に達しない賃金のみが最低賃金法の罰金の対象であり、地域別最低賃金には罰則がないものとされている
- 地域別は最低賃金法で50万円以下、特定は労働基準法の全額払違反として30万円以下の罰金がありうる
解答は 4 だっ。
地域別と特定で罰則の根拠が別物なのがポイントだっ。地域別は最低賃金法でそのまま、特定は最低賃金法の対象外で、労働基準法の全額払違反として罰金になるんだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 特定は最低賃金法の対象外 |
| 2 | ✗ | 罰則はある |
| 3 | ✗ | 地域別こそ罰則の対象 |
| 4 | ✓ | 根拠と金額が正しい |
地域別=最低賃金法50万円、特定=労働基準法経由で30万円――ここが要だっ!
オリジナル問題3(適用関係)
地域別・特定最低賃金の適用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 地域別と特定の両方が適用される労働者には、低い方の最低賃金が適用されるものとされている
- 地域別と特定の両方が適用される労働者には、常に地域別のみが適用され特定は及ばないとされている
- 地域別と特定の両方が適用される労働者には高い方が適用され、特定はかつて産業別と呼ばれていた
- 特定最低賃金はすでに廃止されており、現在は地域別最低賃金のみが残されているものとされている
解答は 3 である。
両方あてはまる労働者には高い方が適用される。特定は地域別より高く設定されるためである。特定は2008年7月に「産業別最低賃金」から今の名前へ整理された、という点もあわせて押さえたい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 高い方による |
| 2 | ✗ | 特定も及ぶ |
| 3 | ✓ | 高い方・もとは産業別 |
| 4 | ✗ | 特定は存続している |
両方あてはまるなら高い方――これを軸に押さえるのが肝要である。
まとめ
押さえどころ
- 🔴 地域別最低賃金 = 都道府県ごと・全労働者の基本ライン。下回ると最低賃金法の罰金(50万円以下)。
- 🔴 特定最低賃金 = 特定産業の人へ地域別より高く。下回っても最低賃金法は対象外で、労働基準法の全額払違反として30万円以下の罰金がありうる。
- 🟡 両方あてはまる人は高い方。特定はもとは「産業別最低賃金」で、2008年7月に今の名前へ。
次に学ぶ
- 最低賃金 ── 最低賃金制度の大枠(支払義務・効力・対象賃金)。本項はその金額を定める2種類という関係で押さえると混ざらない。
- 賃金支払の5原則 ── 特定最低賃金の罰則がつながる「賃金は全額払う」ルール。
- 労働契約 ── 最低賃金を下回る賃金の定めは、その部分が無効になる。
執筆: SikakuQuest編集部