労働契約とは(全体像)
働く関係は雇う側と雇われる側で力の差が出やすく、口約束だけだと後でもめやすい。そこで、「指示に従って働く/その見返りに賃金を払う」という約束を労働契約として明確にし、両者の合意で成立すると定めた。
押さえるのは2点。
- 合意で成立する … 労働と賃金支払について意思が合えば成立。書面の作成は成立そのものの条件ではない(労働条件の明示などは別の話)。
- ルールを定めるのが労働契約法 … 5つの基本原則を置き、罰則ではなく民事の効力で関係を整える。
詳しく:成立・5原則・労基法との違いを表でつかむ
ここが心臓部。「どう成立し、どんな原則があり、労基法とどう違うか」は次の表に全部つまっている。
労働契約の成立と5つの基本原則
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 労働者の側 | 使用者の指揮命令に従って労働する |
| 使用者の側 | その労働に対して賃金を払う |
| 成立 | 労働者と使用者が合意することで成立(書面は成立の条件ではない) |
| 5つの基本原則 | ①労使対等の合意 ②均衡の考慮 ③仕事と生活の調和 ④信義誠実 ⑤権利濫用の禁止 |
労働基準法と労働契約法の違い
| 区分 | 労働基準法 | 労働契約法 |
|---|---|---|
| 性格 | 公法(最低基準を罰則付きで規律) | 民事(当事者間の権利義務を規律) |
| 担保 | 罰則・監督指導 | 民事的な効力(裁判で実現) |
| 始まり | 1947年 | 2008年(判例ルールを条文化) |
押さえどころは、①労働契約は合意で成立(書面は成立の条件ではない)、②労働契約法の基本原則は5つ(1〜2個ではない)、③労働契約法は民事的効力を定める法律で、罰則の労基法(公法)とは役割が違う、の3つ。
わかりやすく言い換えると
要するに「会社の指示に従って働き、その見返りに給料をもらう約束が労働契約。お互いが合意すれば成立する」しくみ。
つまり、引っかけられやすいのは2つ。1つ目は「書面がないと労働契約は成立しない」と思い込むこと。実際は合意で成立し、書面は成立そのものの条件ではない。2つ目は「労働契約法も労基法と同じく罰則で取り締まる」と思い込むこと。労働契約法は罰則ではなく民事の効力で関係を整える法律。
試験のツボ
🔴 一番出る:労働契約は合意で成立
①労働と賃金支払について合意すれば成立
②書面の作成は成立そのものの条件ではない
🔴 次に出る:基本原則は5つ
①労使対等の合意/就業実態に応じた均衡/仕事と生活の調和
②信義誠実/権利濫用の禁止(あわせて5つ・1〜2個ではない)
🟡 押さえると安定:労基法との役割の違い
①労基法は公法・罰則で最低基準を規律
②労働契約法は2008年に始まり、民事的な効力を定める(判例ルールを条文化)
よくある間違い
①「書面を作らなければ労働契約は成立しない」→ ✗ 労働契約は合意で成立。書面の作成は成立そのものの条件ではない。
②「労働契約法も労基法と同じ罰則の公法」→ ✗ 労基法は罰則の公法。労働契約法は当事者間の民事的な効力を定める法律で、労基法のような罰則はない。
③「基本原則は労使対等の合意の1つだけ」→ ✗ 基本原則は、労使対等・均衡・仕事と生活の調和・信義誠実・権利濫用の禁止の5つ。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(成立)
労働契約の成立に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 労働契約は、使用者が作成した書面を労働者に交付しなければ成立しないものとして定められているものである
- 労働契約は、労働と賃金の支払について労働者と使用者が合意することにより成立するものとされている
- 労働契約は、行政官庁の認可を受けて初めて効力を生じ、成立するものとして定められているものである
- 労働契約は、使用者が一方的に労働条件を決定して通知することによって成立するものとされているものである
解答は 2 だよ。
労働契約は、労働と賃金の支払について合意すれば成立するんだ。書面の作成は成立そのものの条件ではないよ。
選択肢1の「書面の交付が必要」、選択肢3の「認可が必要」、選択肢4の「一方的に通知」は、いずれも誤りだよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 書面は成立そのものの条件ではない |
| 2 | ✓ | 労働と賃金支払の合意で成立する |
| 3 | ✗ | 行政官庁の認可は必要ない |
| 4 | ✗ | 一方的な通知ではなく合意で成立する |
オリジナル問題2(基本原則)
労働契約法の基本原則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 労働契約法は、使用者が労働条件をその裁量で自由に決められることを唯一の原則として定めているものとされている
- 労働契約法は、労働者の側だけが信義に従い誠実に行動すべきことを基本原則として定めているものとされている
- 労働契約法は、権利を自由に行使でき、その濫用も許されることを基本原則として明文で定めているものとされる
- 労働契約法は、労使対等の合意・均衡・仕事と生活の調和・信義誠実・権利濫用の禁止の5つを基本原則として定める
解答は 4 だっ。
労働契約法の基本原則は、労使対等の合意・均衡・仕事と生活の調和・信義誠実・権利濫用の禁止の5つなんだっ。
選択肢1の「自由決定が唯一」、選択肢2の「労働者だけ」、選択肢3の「濫用も許される」は、いずれも誤りだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 自由決定を唯一の原則とはしていない |
| 2 | ✗ | 信義誠実は労使双方に及ぶ |
| 3 | ✗ | 権利の濫用はむしろ禁止されている |
| 4 | ✓ | 5つの基本原則を定めているで正しい |
オリジナル問題3(労基法との違い)
労働基準法と労働契約法の違いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 労働基準法も労働契約法も、違反に対して同一の罰則を科すことで規律する公法に当たるものとされている
- 労働契約法は罰則で最低基準を取り締まる公法で、かえって労働基準法が民事的効力を定めるものとされている
- 労働契約法は2008年に始まった民事的効力を定める法律で、労働基準法は罰則で規律する公法とされている
- 労働契約法は労働基準法より前に始まり、両者はいずれも罰則を中心に規律するものとされているものである
解答は 3 である。
労働契約法は2008年に始まった民事的な効力を定める法律で、労働基準法は罰則で規律する公法である。役割が違う。
選択肢1の「両方とも罰則の公法」、選択肢2の「逆の説明」、選択肢4の「労契法が先で両方罰則」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 労働契約法は罰則の公法ではなく民事 |
| 2 | ✗ | 公法と民事の説明が逆である |
| 3 | ✓ | 労契法は民事・労基法は公法で正しい |
| 4 | ✗ | 労働契約法は労基法より後に始まった |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 成立 = 労働と賃金支払について合意すれば成立。書面の作成は成立そのものの条件ではない。
- 🔴 5つの基本原則 = 労使対等の合意・均衡・仕事と生活の調和・信義誠実・権利濫用の禁止。
- 🟡 労基法との役割の違い = 労基法は公法・罰則。労働契約法は2008年に始まった民事的効力を定める法律(判例ルールを条文化)。
次に学ぶ
- 労働者 ── 労働契約の一方当事者。使用者の指揮命令に従って働く側。
- 解雇権濫用法理 ── 労働契約の終了(解雇)を権利濫用の禁止の考え方で規律する。
- 無期転換ルール(5年ルール) ── 有期労働契約が反復更新されたときの転換を定める。
執筆: SikakuQuest編集部