パワハラ防止措置とは(全体像)
職場の優越的な立場を背景とした行き過ぎた言動は、働く人の尊厳を傷つける。ただ、何がパワハラに当たるかは状況で幅があり、一律に禁止して罰するだけでは実態に合わない。そこで、パワハラ自体を直接禁止するのではなく、会社に「防ぐための仕組みづくり」を義務づけたのがパワハラ防止措置。
押さえるのは2点。
- 性質は「措置義務」 … パワハラをした人を直接罰する禁止規定ではなく、会社に相談体制づくりなどの備えを求めるもの。
- パワハラは3要件で判断 … ①優越的な関係、②業務上必要かつ相当な範囲を超える、③就業環境が害される、の3つをすべて満たすもの。
詳しく:性質・3要件・6類型・開始を表でつかむ
ここが心臓部。「何を義務づけ、どう判断し、いつから始まったか」は次の表に全部つまっている。
パワハラ防止措置の全体像
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 性質 | 会社に雇用管理上の措置を義務づける(パワハラ自体の禁止規定ではない) |
| パワハラ3要件 | ①優越的な関係を背景 ②業務上必要かつ相当な範囲を超える ③就業環境が害される |
| 事業主の措置 | 方針の明確化と周知・相談体制の整備・迅速適切な対応・プライバシー保護 |
| 罰則 | 直接の罰則なし。ただし助言・指導・勧告、勧告に従わなければ公表 |
| 始まり | 大企業2020年6月・中小企業2022年4月から |
指針が示すパワハラの6類型
| 類型 | |
|---|---|
| 1 | 身体的な攻撃 |
| 2 | 精神的な攻撃 |
| 3 | 人間関係からの切り離し |
| 4 | 過大な要求 |
| 5 | 過小な要求 |
| 6 | 個の侵害 |
押さえどころは、①30条相当の規定は措置義務で、パワハラ自体を罰する禁止規定ではない、②パワハラは3要件すべてを満たすもの(指針は6類型を例示)、③義務化は大企業2020年6月・中小2022年4月で時期がずれる、の3つ。
「業務上必要かつ相当な範囲内」の指導はパワハラに当たらない点、措置義務に直接の罰則はないが勧告・公表があり得る点も押さえる。
わかりやすく言い換えると
要するに「会社に、職場のパワハラを防ぐ仕組みづくり(相談窓口など)を義務づけるルール」。
つまり、引っかけられやすいのは2つ。1つ目は「パワハラをしたら即この法律で罰せられる」と思い込むこと。これは会社の備えを求める措置義務で、パワハラ自体を罰する禁止規定ではない。2つ目は「大企業も中小も同時に始まった」と思い込むこと。実際は大企業2020年6月・中小2022年4月と時期がずれる。
試験のツボ
🔴 一番出る:措置義務であって禁止規定ではない
①会社に防止の措置を義務づけるもの(相談体制づくりなど)
②パワハラ自体を直接禁止して行為者を罰する規定ではない
🔴 次に出る:パワハラは3要件・指針は6類型
①3要件=優越的な関係/業務上必要かつ相当な範囲を超える/就業環境が害される(すべて満たす)
②指針の6類型=身体的攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害
🟡 押さえると安定:義務化の時期と罰則
①義務化は大企業2020年6月・中小2022年4月(時期がずれる)
②直接の罰則はないが、勧告に従わなければ公表されうる
よくある間違い
①「パワハラそのものを禁止して行為者を罰する規定」→ ✗ 会社に防止の措置を義務づける措置義務であり、パワハラ自体の禁止規定ではない。
②「大企業も中小企業も2020年6月に同時に始まった」→ ✗ 大企業は2020年6月、中小企業は遅れて2022年4月から義務化された。
③「罰則がないので会社は何もしなくてよい」→ ✗ 直接の罰則はないが、助言・指導・勧告の対象になり、勧告に従わなければ公表されうる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(制度の性質)
パワハラ防止措置の性質に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- パワハラ防止の規定は、パワハラそのものを直接に禁止して、行為者本人を処罰することを内容とするものとされる
- パワハラ防止の規定は、事業主に対し、職場のパワハラを防ぐ雇用管理上の措置を講じる義務を課すものとされている
- パワハラ防止の規定は、労働者本人に対してパワハラを行わない努力義務のみを課しているものとされているものである
- パワハラ防止の規定は、パワハラを行った労働者個人が支払う損害賠償額の上限を定めるものとされているものである
解答は 2 だよ。
パワハラ防止の規定は、会社(事業主)に防止の措置を義務づけるものなんだ。パワハラ自体を罰する禁止規定ではないよ。
選択肢1の「行為者を処罰」、選択肢3の「労働者本人への努力義務」、選択肢4の「賠償額の上限」は、いずれも誤りだよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | パワハラ自体を罰する禁止規定ではない |
| 2 | ✓ | 事業主に雇用管理上の措置義務を課す |
| 3 | ✗ | 労働者本人でなく事業主への措置義務 |
| 4 | ✗ | 損害賠償額の上限を定める規定ではない |
オリジナル問題2(パワハラの3要件)
職場のパワハラの判断に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 職場のパワハラは、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境が害されるものとされている
- 職場のパワハラは、優越的な関係さえあれば、業務上必要かつ相当な範囲内の指導も当然にこれに含まれるものとされている
- 職場のパワハラは、身体的な攻撃のみを指し、精神的な攻撃や人間関係からの切り離しはおよそ含まれないものとされている
- 職場のパワハラは、労働者どうしの私的なトラブルであれば、業務と無関係でもすべてこれに当たるものとされている
解答は 1 だっ。
職場のパワハラは、①優越的な関係②業務上必要かつ相当な範囲を超える③就業環境が害されるの3要件で判断するんだっ。
選択肢2の「範囲内の指導も含む」、選択肢3の「身体的攻撃のみ」、選択肢4の「私的トラブルも全部」は、いずれも誤りだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 3要件をすべて満たすもので正しい |
| 2 | ✗ | 必要かつ相当な範囲内の指導は含まれない |
| 3 | ✗ | 指針は6類型を示し身体的攻撃だけではない |
| 4 | ✗ | 業務と無関係の私的トラブルは別である |
オリジナル問題3(義務化の時期)
パワハラ防止の措置義務と時期に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 措置義務は、大企業も中小企業もそろって2020年6月から同時に始まったものとして定められているものである
- 措置義務には直接の罰則がいっさいないため、事業主はおよそ何らの対応も求められないものとして定められているものである
- 措置義務は中小企業にはおよそ課されず、大企業だけが永久に対象であり続けるものとして定められているものである
- 措置義務は相談体制の整備などを内容とし、大企業は2020年6月、中小企業は2022年4月から始まったとされる
解答は 4 である。
措置義務は相談体制の整備などを内容とし、大企業は2020年6月、中小企業は2022年4月から始まった。直接の罰則はないが、勧告に従わなければ公表されうる。
選択肢1の「同時に2020年6月」、選択肢2の「何もしなくてよい」、選択肢3の「中小は対象外」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 中小企業は2022年4月からで同時ではない |
| 2 | ✗ | 勧告・公表の対象で何もしなくてよくない |
| 3 | ✗ | 中小企業も措置義務の対象である |
| 4 | ✓ | 措置の内容・大2020年6月中2022年4月で正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 性質と3要件 = 会社に措置を義務づける措置義務(パワハラ自体の禁止規定ではない)。3要件=優越的な関係/範囲を超える/就業環境が害される。
- 🔴 6類型 = 指針は身体的攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害を示す。
- 🟡 措置と時期 = 方針明確化・相談体制・迅速対応・プライバシー保護。義務化は大企業2020年6月・中小2022年4月。罰則はないが勧告・公表あり。
次に学ぶ
- 育児・介護休業法 ── 同じく職場での両立や不利益にかかわる雇用管理上のルール。
- 安全配慮義務 ── 使用者が労働者の安全・健康・環境に配慮する一般的な義務。趣旨が重なる。
- 労働契約 ── 防止措置は労働契約に基づく職場環境の保護として現れる。
執筆: SikakuQuest編集部