不動産売却の流れ。媒介契約3類型から所有権移転登記まで

公開: 更新: カテゴリ: 宅建業法/民法

不動産売却は何から始める?理解する3つの軸

不動産売却の話は、3つの軸で整理できます。

  • 媒介契約3類型: 一般/専任/専属専任、業者報告義務と専任性が異なる
  • 取引フロー: 査定→媒介契約→重要事項説明→売買契約→引渡し・登記
  • 税務処理: 譲渡所得税(所有期間で短期/長期)、3,000万円特別控除等の特例

ここがポイント。媒介契約3類型は『専任性と業者責任の段階構造』ということ。一般媒介は複数業者依頼可、専任は1社のみ、専属専任は売主自身も買主探索不可という制限が段階的に強化されます。

それから、譲渡所得税は所有期間5年で税率変動という事実。5年以下は短期譲渡(税率39.63%)、5年超は長期譲渡(税率20.315%)という大きな差があり、売却タイミングが重要です。

なぜそう言えるのか、3つの軸を順番に見ていきます。


媒介契約はどれを選ぶ?——3類型(宅建業法34条の2)

3類型の比較

媒介契約3類型の特徴

**一般媒介**複数業者依頼可、自己発見取引可、業者の業務報告義務なし
**専任媒介**1社のみ依頼、自己発見取引可、業務報告義務2週間に1回・REINS登録7日以内
**専属専任媒介**1社のみ依頼、自己発見取引不可、業務報告義務1週間に1回・REINS登録5日以内

専任の利点・欠点

観点一般媒介専任系
業者の販促意欲競合あり、片手仲介志向専任なので積極的販促
自己発見取引自由専任:可/専属専任:不可
業務報告義務なし専任:2週間に1回/専属専任:1週間に1回
REINS登録義務なし専任:7日以内/専属専任:5日以内
期間制限なし3ヶ月以内(更新可)

トリビア:宅建業法34条の2の媒介契約書面化は1980年改正で義務化

媒介契約の書面化は 1980年(昭和55年)の宅建業法改正で義務化 されました。それまで媒介契約は 口約束で締結されることが多く、契約条件のトラブルが頻発した経緯があります。専任媒介・専属専任媒介の概念整備も同じ改正で行われ、現在の3類型構造が確立しました。REINS(不動産流通標準情報システム)への登録義務化 は1990年からです。

媒介報酬の上限

宅建業法46条の媒介報酬上限は次のとおり。

取引価額報酬上限率
200万円以下の部分5% + 消費税
200万円超400万円以下の部分4% + 消費税
400万円超の部分3% + 消費税

実務では「3% + 6万円 + 消費税」(速算式)で計算されることが多いです(取引価額400万円超の場合)。


売却はどう進む?——査定から登記までの流れ

5ステップの全体像

不動産売却の流れ

**STEP 1**不動産業者で 査定(複数業者が一般的、AI査定・対面査定)
**STEP 2**媒介契約締結(一般/専任/専属専任から選択)
**STEP 3**販売活動(広告・REINS登録・内覧対応)
**STEP 4**買主との 重要事項説明+売買契約(手付金10〜20%授受)
**STEP 5**引渡し・所有権移転登記(残代金授受・抵当権抹消等)

重要事項説明(宅建業法35条)

売買契約締結 に、宅建士が買主に 重要事項説明 を実施(宅建業法35条)。説明事項には以下が含まれます。

  • 物件の表示・登記・所有権関係(抵当権・賃借権等)
  • 法令上の制限(用途地域・建ぺい率・容積率)
  • 私道負担・上下水道・ガス等のインフラ
  • 解除事由・違約金・手付金

売買契約と契約不適合責任

売買契約後、目的物に契約適合しない欠陥(契約不適合)があれば、買主は 追完請求・代金減額請求・解除・損害賠償 を主張可(民法562条以下、2020年4月施行の改正民法)。

抵当権抹消と引渡し

売主の住宅ローン残債がある場合、売却代金で残債を完済し抵当権を抹消 してから所有権移転登記する流れ。司法書士が同席するのが通例です。


売却益に税金はかかる?——譲渡所得税と特例

譲渡所得の計算

譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)

項目内容
譲渡価額売却代金
取得費購入時の代金+仲介手数料+登記費用等(不明なら譲渡価額の5%)
譲渡費用売却時の仲介手数料・印紙税・解体費用等

短期譲渡 vs 長期譲渡

区分所有期間税率(所得税+住民税)
短期譲渡5年以下39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
長期譲渡5年超20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)

所有期間5年で約2倍の税率差——売却タイミングは譲渡所得税の最大の論点です。所有期間判定は 譲渡した年の1月1日時点で計算する点に注意(年明け売却で1年延びる効果)。

主要な特例

譲渡所得の主な特例

**居住用財産3,000万円特別控除**マイホーム売却で譲渡益から3,000万円控除
**居住用財産軽減税率**所有10年超で長期譲渡税率がさらに軽減(6,000万円以下14.21%)
**特定居住用財産買換え特例**マイホーム買換えで譲渡所得課税繰延べ
**空き家3,000万円特別控除**相続空き家を売却で3,000万円控除(一定要件)

実務家の視点から言えば、3,000万円特別控除はマイホーム売却の最強の節税ツール。所有期間にかかわらず適用可能で、譲渡益が3,000万円以下なら税額ゼロも実現可能です。

私たちが取材した不動産系税理士の話では、「マイホーム売却は3,000万円控除と長期譲渡税率の2段階節税。確定申告で必ず適用申請すべき」とのこと。

  • 不動産売却の核心は 媒介契約3類型・取引フロー・税務処理 の3軸
  • 媒介契約は 一般/専任/専属専任 の3類型(宅建業法34条の2)
  • 専任系は 業務報告義務・REINS登録等が課される、一般媒介は緩い
  • 媒介報酬上限は 3% + 6万円 + 消費税(速算式、400万円超)
  • 取引フローは 査定→媒介→販促→重説/契約→引渡し・登記 の5ステップ
  • 重要事項説明(宅建業法35条)は売買契約 に宅建士が実施
  • 売買後の 契約不適合責任(民法562条以下、2020年改正)で買主保護
  • 譲渡所得税は 5年以下=39.63%、5年超=20.315% で大差
  • 所有期間判定は 譲渡年の1月1日時点で計算
  • マイホーム売却の 3,000万円特別控除 が最強の節税特例

理解度チェック

ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。

📝 オリジナル問題 1 媒介契約3類型

媒介契約3類型について、正しい説明はどれか。

  1. すべての類型で複数業者への依頼が認められる仕組み形扱い
  2. 一般媒介のみ自己発見取引が認められるという原則ルール扱い
  3. 専属専任媒介は1社のみ依頼で自己発見取引も不可となる類型
  4. 3類型の違いは契約期間のみで業者責任は同一となる仕組み形
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 3 である。

宅建業法34条の2により、媒介契約は 一般/専任/専属専任 の3類型。専属専任媒介は1社のみへの依頼で自己発見取引(売主自身が買主を見つけて契約)も不可、業務報告義務 1週間に1回・REINS登録 5日以内 と最も厳格。専任媒介は自己発見取引可・報告2週間に1回・REINS7日以内、一般媒介は複数依頼可・報告義務なしと段階的に緩い構造。

選択肢判定理由
1✗ 誤り専任系は1社のみ
2✗ 誤り専任も自己発見可
3✓ 正解34条の2の正しい3類型構造
4✗ 誤り業者責任も異なる

専属専任の最厳格規律——これが3類型の核心なのである。

📝 オリジナル問題 2 重要事項説明

重要事項説明(宅建業法35条)について、正しい説明はどれか。

  1. 売買契約締結後に書面のみで実施される事後説明である仕組み
  2. 売買契約締結前に宅建士が口頭+書面で実施する原則的な義務
  3. 重要事項説明は買主の求めがあった場合のみ実施される仕組み
  4. 一般媒介の場合は重要事項説明が不要となる例外的な決まり扱い
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 2 である。

宅建業法35条により、重要事項説明は 売買契約締結前に宅建士が買主に対して口頭+書面(重要事項説明書) で実施することが必須。説明事項には物件表示・登記・所有権関係・法令上の制限・私道負担・インフラ・解除事由・違約金・手付金等が含まれ、宅建士証の提示も求められる。買主の判断材料を提供する制度的義務で、媒介類型を問わず実施される。

選択肢判定理由
1✗ 誤り締結前
2✓ 正解35条の正しいルール
3✗ 誤り買主の求めの有無に関係ない
4✗ 誤り媒介類型を問わず実施

契約締結前の宅建士による説明義務——これが35条の核心なのである。

📝 オリジナル問題 3 譲渡所得税

不動産売却の譲渡所得税について、正しい説明はどれか。

  1. 所有期間が5年を境に短期/長期で税率が大きく異なる仕組み
  2. 譲渡所得税は所有期間に関係なく一律10%の税率となる原則
  3. マイホーム売却では譲渡所得税が完全に免除される仕組み形
  4. 譲渡費用は計算上控除できないという決まりがある原則扱い
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 1 である。

不動産売却の譲渡所得税は、所有期間5年以下=短期譲渡39.63%、5年超=長期譲渡20.315%(所得税+住民税)と大きな税率差がある。所有期間判定は 譲渡した年の1月1日時点で計算。マイホーム売却には 居住用財産3,000万円特別控除等の特例があり、譲渡益から3,000万円控除可能。確定申告で適用申請が必要で、適用漏れに注意。

選択肢判定理由
1✓ 正解5年境の税率差の正しい説明
2✗ 誤り一律10%ではない
3✗ 誤り完全免除はない(特別控除で軽減)
4✗ 誤り譲渡費用は控除可

5年境の短期/長期税率差——これが譲渡所得税の核心なのである。



おわりに

不動産売却は、知っているか知らないかで動き方が大きく変わる典型例です。今日見た3つの基本——媒介契約3類型・取引フロー・税務処理——を覚えておけば、不動産売却を考えた時の地図が手に入ります。

自分の権利を知るというのは、誰かに任せきりにするのではなく、自分で判断できる材料を持つこと。法律はそのための道具です。

不動産売却は、法律・税務・契約が交錯する複雑な分野。宅建協会・不動産系弁護士・税理士・司法書士・ファイナンシャルプランナー——相談先は意外と多くあります。気になることがあれば、まず話を聞いてもらうところから始めるのがおすすめです。

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