マイホーム購入で何を知るべき?3つの軸
マイホーム購入の話は、3つの法的軸で整理できます。
- 重要事項説明: 宅建業法35条、契約締結前に宅建士が書面で説明(必須)
- 契約不適合責任: 民法562条以下、購入後に物件の隠れた欠陥が見つかった場合の救済
- 住宅ローン控除: 租税特別措置法、年末ローン残高の0.7%を所得税から最長13年控除
ここがポイント。重要事項説明は契約締結前に必ず受けられるということ。「説明されてない」「読まないままサインした」は後の争いの種、その場で疑問は質問する習慣が必要。
それから、購入後でも物件の問題は法律で救済されるという事実。瑕疵担保責任から名称変更された「契約不適合責任」が、買主の保護を強化する仕組みになっています。
なぜそう言えるのか、3軸を順番に見ていきます。
契約前に何を説明される?——重要事項説明(宅建業法35条)
重要事項説明とは
宅建業法35条により、不動産業者は売買契約締結前に重要事項を書面(重要事項説明書)で説明する義務を負います。
- 物件の物理的事項: 所在地・面積・登記の状態・接道状況・インフラ
- 法令上の制限: 都市計画法・建築基準法による用途・容積率制限
- 取引条件: 代金・手付金・契約解除条件・契約不適合責任の特約
宅建士の記名・押印が必須
重要事項説明書は 宅地建物取引士(宅建士)が記名・押印する必要があります(宅建業法35条5項)。これが宅建士の独占業務の中核。
説明は 対面が原則でしたが、2021年4月から オンライン重要事項説明(IT重説)も解禁——場所を問わず受けられるようになりました。
確認すべき重要ポイント
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 登記 | 抵当権・差押え等の権利関係 |
| 境界 | 隣地との境界確定の有無 |
| 接道 | 建築基準法の接道義務(2m以上) |
| インフラ | 上下水道・ガス・電気の引き込み状況 |
| 法令上の制限 | 用途地域・建ぺい率・容積率・高さ制限 |
| 管理規約 | マンションの場合の管理費・修繕積立金 |
| 特約 | 契約不適合責任の特約・期間制限 |
私たちが取材した不動産取引に詳しい弁護士の話では、「重要事項説明で『説明していない』と立証できれば、後の損害賠償請求で有利になる。録音を残しておく価値は大きい」とのこと。
説明欠落の効果
重要事項説明がない・不十分な場合:
- 宅建業法違反: 行政処分(業務停止等)の対象
- 損害賠償請求: 民法に基づく説明義務違反として
- 契約解除: 重要な事実の不告知は錯誤・詐欺で取消可能(民法95条/96条)
買った家に欠陥があったら?——契約不適合責任(2020年改正)
瑕疵担保責任からの名称変更
トリビア:瑕疵担保責任は2020年4月改正で『契約不適合責任』に
2020年4月の民法大改正で、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に名称変更されました。単なる名称変更ではなく、買主の救済手段が拡大された実質的改正です。
契約不適合責任の内容(民法562〜566条)
物件が「契約の内容に適合しない」場合、買主は4つの救済を求められます:
契約不適合責任の4つの救済
改正のポイント
旧瑕疵担保責任との比較:
| 観点 | 旧法(瑕疵担保責任) | 新法(契約不適合責任) |
|---|---|---|
| 対象 | 「隠れた瑕疵」のみ | 契約に適合しないすべて |
| 追完請求 | なし | あり(修補・代替物・不足分) |
| 代金減額 | 解除のみ | 減額請求可能 |
| 期間 | 知った時から1年内に解除/賠償 | 知った時から1年内に通知(請求は時効による) |
→ 「通知だけで権利保全」できるようになり、買主の負担が大幅軽減されました。
売主が宅建業者の場合の特例
宅建業者が売主の場合、宅建業法40条により 「引渡しから2年以上」の特約が必要——これより買主に不利な特約は無効です。一般的には「引渡しから2年」が業界慣行。
私たちが取材した不動産トラブルに詳しい弁護士の話では、「契約不適合の発見は引渡しから1年以内が多い。2年特約があれば余裕を持って対応できる」とのこと。
税金は安くなる?——住宅ローン控除(租税特別措置法)
概要
住宅ローンを使ってマイホームを購入すると、年末ローン残高の0.7%を所得税から控除できます(租税特別措置法41条、住宅借入金等特別控除)。
- 控除率: 年末ローン残高の 0.7%
- 控除期間: 新築住宅で 最長13年、中古・リフォームで10年
- 借入限度額: 環境性能で変動(新築: 認定長期優良住宅5,000万円、ZEH水準4,500万円、省エネ基準4,000万円、その他3,000万円)
- 所得制限: 合計所得2,000万円以下
- 床面積要件: 50㎡以上(合計所得1,000万円以下なら40㎡以上)
節税額の例
| 借入残高 | 控除額(年) |
|---|---|
| 3,000万円 | 21万円 |
| 4,000万円 | 28万円 |
| 5,000万円 | 35万円 |
13年間で 総額200〜400万円規模の節税になる、最も大きな所得控除制度の一つ。
初年度の確定申告必須
住宅ローン控除を受けるには、入居初年度に確定申告が必須。2年目以降は年末調整で対応できます。
申告に必要な書類:
- 住民票・登記事項証明書
- 売買契約書
- 住宅ローン残高証明書
- (長期優良住宅等の場合)認定通知書
購入はどう進む?費用は?——流れと諸費用
購入の8ステップ
マイホーム購入の流れ
諸費用の目安
物件価格の 5〜10% が諸費用。例えば3,000万円の物件なら150〜300万円が必要:
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 物件価格の3% + 6万円 + 消費税 |
| 登記費用(司法書士報酬含む) | 30〜80万円 |
| 不動産取得税 | 評価額の3〜4%(軽減措置あり) |
| 印紙税 | 1〜3万円(契約書ごと) |
| 火災保険・地震保険 | 10〜30万円(10年分) |
| 住宅ローン保証料・事務手数料 | 借入額の0〜2% |
手付金の役割
手付金は 物件価格の5〜10%程度(最大20%、宅建業法39条)。買主が解約する場合は手付放棄、売主が解約する場合は手付倍返しで契約解除可能(民法557条 解約手付)。
ただし、相手方が履行に着手した後は解約不可。
- 重要事項説明は 宅建業法35条、契約締結前に宅建士の記名・押印付き書面で説明
- IT重説(オンライン)は2021年4月から解禁
- 契約不適合責任は 2020年4月改正で名称変更(旧:瑕疵担保責任)、買主の救済拡大
- 救済手段4つ: 追完請求・代金減額・損害賠償・契約解除
- 売主が宅建業者なら 引渡しから2年以上の特約が必須(宅建業法40条)
- 住宅ローン控除は 年末残高0.7%・最長13年、年21〜35万円の節税
- 諸費用は物件価格の 5〜10%、手付金は5〜10%程度
- 手付金は買主放棄/売主倍返しで解約可(履行着手前)
理解度チェック
ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。
宅建業法35条の重要事項説明について、正しい説明はどれか。
- 宅地建物取引士の記名・押印が必須で売買契約締結前の説明
- 売買契約成立後に書面で送付すれば法的に有効となる仕組み
- 不動産業者の役員が説明すれば宅建士関与は法律上不要
- 口頭での説明のみで書面交付は法律上義務付けられない
解答は 1 である。
宅建業法35条により、重要事項説明は 売買契約締結前に 宅建士の記名・押印付きの書面で行うことが必須。これは宅建士の独占業務の中核であり、説明欠落は宅建業法違反・損害賠償請求・契約解除の対象となる。2021年4月からはIT重説(オンライン)も解禁。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ 正解 | 法律の正しい構造 |
| 2 | ✗ 誤り | 締結後ではなく前 |
| 3 | ✗ 誤り | 宅建士関与は必須 |
| 4 | ✗ 誤り | 書面交付が義務 |
契約締結前 + 宅建士記名押印——これが35条の核心要件なのである。
2020年4月改正後の契約不適合責任について、買主が請求できる救済として該当しないものはどれか。
- 追完請求(修補・代替物引渡し・不足分の引渡し)
- 代金減額請求(追完がされない場合)
- 売買物件の永久占有権付き利用許諾請求
- 契約解除(重大な不適合の場合に限る)
解答は 3 である。
民法562条以下により、買主は 追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除の4つの救済を求められる。「永久占有権付き利用許諾」のような制度は法律上存在しない。2020年4月改正で旧瑕疵担保責任から「契約不適合責任」に名称変更され、買主の救済手段が大幅に拡大した。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 該当する | 民法562条 |
| 2 | ✗ 該当する | 民法563条 |
| 3 | ✓ 該当しない | 法律にない制度 |
| 4 | ✗ 該当する | 民法541条/542条 |
4つの救済手段——これが契約不適合責任の現代的な保護枠組みなのである。
2024年以降の住宅ローン控除の控除率と最長期間として、正しい組合せはどれか。
- 年末ローン残高の1.0%・最長10年で打ち切られる制度
- 年末ローン残高の0.7%・新築住宅で最長13年の控除制度
- 年末ローン残高の2.0%・最長20年の長期控除となる仕組み
- 借入時の元本の0.5%・最長5年で完了する短期制度
解答は 2 である。
租税特別措置法41条により、2024年以降の住宅ローン控除は 年末ローン残高の0.7%を所得税から控除、新築住宅で 最長13年(中古・リフォームは10年)。借入限度額は環境性能で変動し、認定長期優良住宅5,000万円・省エネ基準4,000万円等。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 旧法の数値 |
| 2 | ✓ 正解 | 現行法の正しい構造 |
| 3 | ✗ 誤り | 数字が異なる |
| 4 | ✗ 誤り | 元本ではなく残高 |
0.7%×13年——これが現行住宅ローン控除の決定的な数値構造なのである。
おわりに
マイホーム購入の話は、知っているか知らないかで購入後の安心度が大きく変わる典型例です。今日見た3つの基本——重要事項説明・契約不適合責任・住宅ローン控除——を覚えておけば、買う側として自分を守る根拠が手に入ります。
自分の権利を知るというのは、誰かに任せきりにするのではなく、自分で判断できる材料を持つこと。法律はそのための道具です。
不動産取引は専門性が高い分野。宅建業者・司法書士・税理士・FP・住宅ローン相談窓口——相談先は意外と多くあります。気になることがあれば、まず話を聞いてもらうところから始めるのがおすすめです。
法律の論点はパターン化しやすい分野。スキマ時間で1問ずつ感触を掴みたい方は、シカクエのアプリも選択肢のひとつです。
1日10分から、通勤の往復だけでも知識が積み上がります。シカクエアプリ
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