絶対的記載事項とは(全体像)
定款の心臓部、それが絶対的記載事項である。絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項をいう。一つでも欠ければ、定款そのものが無効になる、最も重い事項である。
押さえるべきは、その5つの中身である。
- 目的 … 会社が行う事業の内容。
- 商号 … 会社の名称。
- 本店の所在地 … 会社の本拠地。
- 出資される財産の価額またはその最低額 … 設立時に集めるお金の額。
- 発起人の氏名・名称および住所 … 会社を起こす者。
「重要な事項はすべて絶対的記載事項だ」と思い込んではならない。重要に見えても、絶対的記載事項ではないものがあるのである。
詳しく:5事項と、間違えやすい2点
ここが核心である。腰を据えて見極めるがよい。問われるのは、5事項の中身と、間違えやすい2点である。
絶対的記載事項の5つ
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 会社の事業の内容 |
| 商号 | 会社の名称 |
| 本店の所在地 | 会社の本拠地 |
| 出資される財産の価額・最低額 | 設立時に集める財産の額 |
| 発起人の氏名等 | 発起人の氏名・名称および住所 |
まず5事項である。目的・商号・本店の所在地・出資される財産の価額(または最低額)・発起人の氏名等。この5つを必ず書く。一つでも欠ければ定款は無効になる。
そして、間違えやすい2点を見極めよう。
間違えやすい2点
| 論点 | 正しい理解 |
|---|---|
| 発行可能株式総数 | 絶対的記載事項ではない。設立時までに定めればよい |
| 本店の所在地 | 市区町村(最小行政区画)まで書けば足りる |
第一に、発行可能株式総数である。重要そうに見えるが、これは絶対的記載事項ではない。定款を作るときに書いていなくても、会社の成立時(設立登記)までに定めれば足りるのである。
第二に、本店の所在地である。これは市区町村(最小行政区画)まで書けば足りる。番地まで定款に書く必要はないのである。
わかりやすく言い換えると
要するに、絶対的記載事項とは「定款に絶対書かないといけない、5つの必須項目」である。
つまり、①書くのは目的・商号・本店・出資額・発起人の5つ。「会社は何をして(目的)」「何という名で(商号)」「どこに本拠を置き(本店)」「いくら集め(出資額)」「だれが起こすか(発起人)」と覚えると整理しやすい。一つでも抜けたら、定款はまるごとアウトである。
②ひっかけが2つ。発行可能株式総数は、いかにも大事そうだが5つには入らない。あとで(設立までに)決めればよい。そして本店は、市区町村まででよく、番地まではいらない。
③この2点を取り違えないことが、合否を分ける一手になる、と心得るがよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:5事項を欠くと定款は無効
①目的・商号・本店の所在地・出資される財産の価額等・発起人の氏名等の5つ
②一つでも欠けば定款全体が無効になる
🔴 次に出る:発行可能株式総数は絶対的記載事項ではない
①発行可能株式総数は5事項に含まれない
②設立時(設立登記)までに定めればよい
🟡 押さえると安定:本店の所在地の記載
①本店の所在地は市区町村(最小行政区画)まででよい
②番地まで定款に書く必要はない
よくある間違い
①「発行可能株式総数も絶対的記載事項である」→ ✗ 発行可能株式総数は絶対的記載事項ではなく、設立時までに定めればよい。
②「本店の所在地は、番地まで定款に書かなければならない」→ ✗ 本店の所在地は、市区町村(最小行政区画)まで書けば足りる。
③「絶対的記載事項が一つ欠けても、定款は有効である」→ ✗ 絶対的記載事項を一つでも欠くと、定款全体が無効になる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(絶対的記載事項の意味)
絶対的記載事項に関する記述として、正しいものはどれか。
- 絶対的記載事項は、一つ欠けても定款全体には影響しないものとされている
- 絶対的記載事項は定款に必ず記載すべき事項で、欠けば定款全体が無効になる
- 絶対的記載事項は、記載しなくてもその事項の効力だけが生じないものとされる
- 絶対的記載事項は、発起人が任意に記載するか決められるものとされている
解答は 2 である。
理を解き明かそう。絶対的記載事項は、定款に必ず記載すべき事項であり、一つでも欠けば定款全体が無効になる。最も重い事項である。
選択肢3のように「その事項の効力だけが生じない」のは、相対的記載事項の話である。絶対的記載事項は定款全体が無効になるのである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 一つ欠けば定款全体が無効になる |
| 2 | ✓ | 必ず記載すべき事項で、欠けば定款無効 |
| 3 | ✗ | それは相対的記載事項の説明 |
| 4 | ✗ | 任意に記載を決められるものではない |
オリジナル問題2(発行可能株式総数)
発行可能株式総数の扱いに関する記述として、正しいものはどれか。
- 発行可能株式総数は絶対的記載事項ではなく、設立時までに定めればよいものである
- 発行可能株式総数は絶対的記載事項であり、定款作成時に必ず記載すべきものとされる
- 発行可能株式総数は記載しなくてもよく、設立後も一切定める必要はないものとされる
- 発行可能株式総数を欠くと、定款の作成時点で定款全体が無効になるものとされる
解答は 1 である。
本質を見極めよう。発行可能株式総数は、絶対的記載事項ではない。定款を作るときに書いていなくても、会社の成立時(設立登記)までに定めれば足りるのである。
選択肢2のように「絶対的記載事項」とするのは誤りである。重要に見えても5事項には入らないと押さえるがよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 絶対的記載事項ではなく、設立時までに定めればよい |
| 2 | ✗ | 絶対的記載事項ではない |
| 3 | ✗ | 設立時までには定める必要がある |
| 4 | ✗ | 欠いても作成時点で定款無効にはならない |
オリジナル問題3(本店の所在地)
定款に記載する本店の所在地に関する記述として、正しいものはどれか。
- 本店の所在地は、地番や建物名まで詳しく定款に記載しなければならないものとされる
- 本店の所在地は、絶対的記載事項ではないので記載しなくてもよいものとされている
- 本店の所在地は、都道府県名まで記載すれば足り、市区町村は不要であるものとされる
- 本店の所在地は、市区町村(最小行政区画)まで定款に記載すれば足りるものである
解答は 4 である。
高みより理を見渡そう。定款に記す本店の所在地は、市区町村(最小行政区画)まで書けば足りる。番地まで定款に書く必要はないのである。
選択肢1のように「地番や建物名まで」記載する必要はない。市区町村までで足りると押さえるがよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 地番や建物名まで定款に書く必要はない |
| 2 | ✗ | 本店の所在地は絶対的記載事項である |
| 3 | ✗ | 市区町村まで記載が必要である |
| 4 | ✓ | 市区町村(最小行政区画)まで書けば足りる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 5事項 = 目的・商号・本店の所在地・出資される財産の価額等・発起人の氏名等。欠けば定款全体が無効。
- 🔴 発行可能株式総数 = 絶対的記載事項ではない。設立時(設立登記)までに定めればよい。
- 🟡 本店の所在地 = 市区町村(最小行政区画)まで書けば足りる。番地までは不要。
次に学ぶ
- 定款 ── 絶対的記載事項を含む定款の全体像。3類型の記載事項を押さえる。
- 株式会社の設立 ── 定款を含む設立手続の全体像。法人成立の時点もわかる。
- 発起人 ── 絶対的記載事項にも名が載る発起人。会社を起こす者の責任を押さえる。
執筆: SikakuQuest編集部