債務不履行とは(全体像)
債務不履行とは、「約束したのに、約束どおりにやらない」状態のこと。お金を貸したのに返してもらえない、物を買ったのに渡してもらえない——こうした場面で問題になる。
中身は、伝統的に3つの型に分けて理解される。
- 履行遅滞 … 履行できるのに、期日を過ぎても履行しない。
- 履行不能 … そもそも履行ができない。
- 不完全履行 … 履行はしたが、中身が不十分。
債権者は、債務不履行に対して①損害賠償②解除③強制履行を求められる。ただし、損害賠償には条件がある。それが「帰責事由」だ。
詳しく:3類型と帰責事由をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。債務不履行は、「3類型」と「損害賠償には帰責事由が必要(2020年改正)」が問われやすい。
債務不履行のポイント
| 論点 | 結論 | 引っかけ |
|---|---|---|
| 3類型 | 履行遅滞・履行不能・不完全履行 | — |
| 損害賠償の要件 | 債務者の帰責事由が必要 | 不履行があれば自動、ではない |
| 帰責事由の意味 | 契約・取引通念に照らした責めに帰すべき事由 | 単なる「過失」とは区別される(2020年改正) |
| 債権者の手段 | 損害賠償・解除・強制履行 | — |
いちばん引っかかるのが帰責事由。「債務不履行があれば、当然に損害賠償できる」と思いがちだが、そうではない。損害賠償には、債務者の帰責事由(責めに帰すべき事由)が必要だ。
そして、2020年改正のポイント。この帰責事由は、昔ながらの「過失があったか」という見方ではなく、「その契約の内容や取引上の常識に照らして、債務者に責任を負わせるべきか」で判断する。「帰責事由=過失」と単純に結びつけないのが、改正後のコツだ。
わかりやすく言い換えると
つまり、債務不履行は「約束を守らないこと」で、その型は「遅れた・できない・中身が不十分」の3つとイメージするとつかみやすい。
要するに、約束を破られたら、債権者はお金で埋め合わせを求める(損害賠償)か、契約をやめる(解除)か、無理にでもやらせる(強制履行)かを選べる。
ただし、お金の埋め合わせ(損害賠償)には、債務者を責められる事情(帰責事由)が必要。そして、その判断は「うっかり(過失)があったか」ではなく、契約や取引の常識に照らして決める——ここが2020年改正の勘どころだ。
試験のツボ
🔴 一番出る:損害賠償には帰責事由が必要
①債務不履行があれば自動的に損害賠償できるわけではない
②債務者の帰責事由(責めに帰すべき事由)が必要
🔴 次に出る:帰責事由の意味(2020年改正)
①契約の内容・取引上の常識に照らして判断する
②昔ながらの「過失」という考え方とは区別される
🟡 押さえると安定:3類型と債権者の手段
①履行遅滞・履行不能・不完全履行の3類型
②損害賠償・解除・強制履行を求められる
よくある間違い
①「債務不履行があれば、当然に損害賠償ができる」→ ✗ 債務者の帰責事由が必要。不履行があれば自動ではない。
②「帰責事由とは、要するに過失のことだ」→ ✗ 2020年改正後は、契約・取引通念に照らした評価で、過失とは区別される。
③「債権者は、損害賠償しか求められない」→ ✗ 損害賠償・解除・強制履行を選べる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(債務不履行の意味と3類型)
債務不履行について、正しいものはどれか。
- 債務不履行とは、債権者が自分の権利を行使しないことをいうものとされている
- 債務不履行は、約束どおり履行しないことで、遅滞・不能・不完全履行に分けられる
- 債務不履行とは、契約がはじめから無効であることをいうものとされているのである
- 債務不履行は、履行不能の場合だけを指すものとされているのである
解答は 2 である。
債務不履行は、債務者が約束どおりの履行をしないことで、履行遅滞・履行不能・不完全履行の3類型に分けられるのだ。
選択肢1「債権者が権利を行使しない」、選択肢3「契約がはじめから無効」、選択肢4「履行不能だけ」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 債務者が履行しないこと |
| 2 | ✓ | 約束どおり履行しない・3類型で正しい |
| 3 | ✗ | 契約は有効に成立している |
| 4 | ✗ | 履行不能だけではない |
オリジナル問題2(帰責事由)
債務不履行による損害賠償について、正しいものはどれか。
- 債務不履行があれば、債務者の事情を問わず当然に損害賠償が生じるとされている
- 損害賠償には、債権者の帰責事由が必要だとされているのである
- 損害賠償には、債務者の故意が必要で過失では足りないとされているのである
- 損害賠償には、契約や取引通念に照らした債務者の帰責事由が必要である
解答は 4 である。
損害賠償には、契約や取引通念に照らした債務者の帰責事由が必要なのだ。不履行があれば自動ではない。
選択肢1「事情を問わず当然に生じる」、選択肢2「債権者の帰責事由が必要」、選択肢3「故意が必要」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 債務者の帰責事由が必要 |
| 2 | ✗ | 必要なのは債務者の帰責事由 |
| 3 | ✗ | 故意に限られない |
| 4 | ✓ | 契約・取引通念による帰責事由が必要で正しい |
オリジナル問題3(債権者の手段)
債務不履行に対して債権者がとれる手段について、正しいものはどれか。
- 債権者は、損害賠償・解除・強制履行を求めることができるとされている
- 債権者は、損害賠償を求めることしかできないとされているのである
- 債権者は、契約を解除することはいっさいできないとされているのである
- 債権者は、強制履行を求めることはいっさいできないとされているのである
解答は 1 である。
債権者は、損害賠償・解除・強制履行を求めることができるのだ。
選択肢2「損害賠償しかできない」、選択肢3「解除できない」、選択肢4「強制履行できない」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 損害賠償・解除・強制履行を選べるで正しい |
| 2 | ✗ | 解除や強制履行も選べる |
| 3 | ✗ | 解除もできる |
| 4 | ✗ | 強制履行もできる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 損害賠償の要件 = 債務者の帰責事由が必要(不履行があれば自動ではない)。
- 🔴 帰責事由の意味 = 契約・取引通念に照らした評価(2020年改正で過失とは区別)。
- 🟡 3類型と手段 = 履行遅滞・履行不能・不完全履行/損害賠償・解除・強制履行。
次に学ぶ
- 履行遅滞・履行不能 ── 債務不履行の代表的な2つの型。遅滞の起算点などを押さえられる。
- 解除 ── 債務不履行への対応の一つ。2020年改正の帰責事由不要化を理解できる。
- 損害賠償 ── 賠償の範囲(通常損害・特別損害)を押さえられる。
執筆: SikakuQuest編集部