履行遅滞・履行不能とは(全体像)
履行遅滞と履行不能は、どちらも債務不履行の代表的な型だ。
- 履行遅滞 … 履行は可能なのに、期日を過ぎても履行しない。
- 履行不能 … 履行がそもそもできない(目的物が滅失した場合など)。
このうち、履行遅滞がいつから始まるかは、期限の定め方で変わる。
- 確定期限がある … 期限が来た時から遅滞。
- 不確定期限がある … 期限が来た後に、催告を受けるか、期限の到来を知った時から遅滞。
- 期限の定めがない … 債権者が催告した時から遅滞。
ここで「期限の定めがない場合」と「原始的不能」が試験で狙われる。
詳しく:遅滞の起算点と原始的不能をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。「履行遅滞の起算点」と「原始的不能でも契約有効(2020年改正)」が問われやすい。
履行遅滞の起算点
| 期限の定め | いつから遅滞か | 注意点 |
|---|---|---|
| 確定期限 | 期限が来た時から | — |
| 不確定期限 | 期限到来後の催告、または到来を知った時 | — |
| 期限の定めなし | 債権者が催告した時から | 契約成立時からではない |
いちばん引っかかるのが期限の定めがない場合。「すぐに履行すべきだから、契約成立時から遅滞では?」と思いがちだが、正しくは債権者が催告した時から遅滞になる。「成立時から遅滞」と読むのは誤りだ。
次に原始的不能。契約をした時点で、すでに履行が不可能だった場合(売る約束をした建物が契約前に焼けていた等)。昔は「そんな契約は無効」とされたが、2020年改正で契約は有効となり、損害賠償を請求できる。「原始的不能の契約は無効」と覚えていると間違える。
わかりやすく言い換えると
つまり、履行遅滞は「やればできるのに、やらないで遅れている」状態、履行不能は「もうできない」状態とイメージするとつかみやすい。
要するに、遅滞が始まるタイミングは期限しだい。確定期限なら期限が来た時から、期限が決まっていなければ「払って(やって)」と催告された時から。何も言われなくても成立時から遅刻扱い、ではない。
そして、契約の前から履行が不可能だったとき(原始的不能)でも、契約自体は有効。だから、約束を果たせなかった分の損害賠償を求められる——これが2020年改正の勘どころだ。
試験のツボ
🔴 一番出る:履行遅滞の起算点
①確定期限は期限が来た時から遅滞
②期限の定めがなければ、債権者が催告した時から遅滞(成立時からではない)
🔴 次に出る:原始的不能でも契約有効
①契約の時点で履行が不可能でも、2020年改正で契約は有効
②約束を果たせなかった分の損害賠償を請求できる
🟡 押さえると安定:2つの型
①履行遅滞=できるのに遅れている
②履行不能=そもそもできない
よくある間違い
①「期限の定めがない債務は、契約成立時から遅滞になる」→ ✗ 債権者が催告した時から遅滞になる。
②「契約の時点で履行が不可能なら、その契約は無効だ」→ ✗ 2020年改正で契約は有効。損害賠償を請求できる。
③「履行不能とは、期日に遅れている状態のことだ」→ ✗ それは履行遅滞。履行不能はそもそも履行ができない状態。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(確定期限の起算点)
確定期限のある債務の履行遅滞について、正しいものはどれか。
- 確定期限のある債務は、契約が成立した時から当然に遅滞になるとされている
- 確定期限のある債務は、債権者が催告するまで遅滞にならないとされているのである
- 確定期限のある債務は、その期限が到来した時から遅滞になるものとされている
- 確定期限のある債務は、いつまでたっても遅滞にならないとされているのである
解答は 3 である。
確定期限のある債務は、その期限が来た時から遅滞になるのだ。
選択肢1「成立した時から」、選択肢2「催告するまで遅滞にならない」、選択肢4「いつまでも遅滞にならない」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 成立時ではなく期限到来時 |
| 2 | ✗ | 確定期限では催告は不要 |
| 3 | ✓ | 期限が来た時から遅滞で正しい |
| 4 | ✗ | 期限到来で遅滞になる |
オリジナル問題2(期限の定めがない場合)
期限の定めがない債務の履行遅滞について、正しいものはどれか。
- 期限の定めがない債務は、債権者が催告した時から遅滞になるものとされている
- 期限の定めがない債務は、契約が成立した時から当然に遅滞になるとされている
- 期限の定めがない債務は、まったく遅滞にならないものとされているのである
- 期限の定めがない債務は、債務者が望んだ時から遅滞になるとされているのである
解答は 1 である。
期限の定めがない債務は、債権者が催告した時から遅滞になるのだ。成立した時からではない。
選択肢2「成立した時から」、選択肢3「まったく遅滞にならない」、選択肢4「債務者が望んだ時から」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 催告した時から遅滞で正しい |
| 2 | ✗ | 成立時からではない |
| 3 | ✗ | 催告により遅滞になる |
| 4 | ✗ | 債務者の希望によるのではない |
オリジナル問題3(原始的不能)
契約の時点ですでに履行が不可能だった場合について、正しいものはどれか。
- 原始的不能の契約は、はじめから当然に無効だとされているのである
- 原始的不能の場合、債権者はいっさい損害賠償を請求できないとされている
- 原始的不能の契約は、債務者が望めば有効になるとされているのである
- 原始的不能でも契約は有効で、損害賠償を請求できる場合があるとされる
解答は 4 である。
契約の時点ですでに履行が不可能(原始的不能)でも、2020年改正で契約は有効とされ、損害賠償を請求できる場合があるのだ。
選択肢1「はじめから無効」、選択肢2「損害賠償を請求できない」、選択肢3「債務者が望めば有効」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 改正で契約は有効 |
| 2 | ✗ | 損害賠償を請求できる |
| 3 | ✗ | 債務者の希望によらず有効 |
| 4 | ✓ | 契約有効・損害賠償可で正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 履行遅滞の起算点 = 確定期限は期限到来時、期限の定めなしは債権者の催告時(成立時ではない)。
- 🔴 原始的不能 = 2020年改正で契約は有効。損害賠償を請求できる。
- 🟡 2つの型 = 履行遅滞(できるのに遅れる)/履行不能(そもそもできない)。
次に学ぶ
- 債務不履行 ── 履行遅滞・履行不能を含む全体像。3類型と帰責事由を押さえられる。
- 損害賠償 ── 不履行で生じる損害の賠償。範囲を整理できる。
- 解除 ── 履行不能などへの対応。無催告解除とつながる。
執筆: SikakuQuest編集部