民衆訴訟・機関訴訟とは(全体像)
民衆訴訟と機関訴訟は、どちらも客観訴訟と呼ばれるグループだ。自分の権利を守るための訴訟(主観訴訟)ではなく、行政が適法に行われているかを、客観的に守るための訴訟、という性格をもつ。
- ①民衆訴訟 … 国や公共団体の機関の法規違反行為の是正を求めるもの。選挙人などの資格で提起し、自己の法律上の利益にかかわらない点が特徴。選挙無効訴訟・住民訴訟が代表例。
- ②機関訴訟 … 行政機関相互の間で、権限の存否や行使をめぐって争うもの。私人ではなく、行政機関どうしの争いだ。
つまり、「自分のため」ではなく「制度の適法性のため」に使う、特別な訴訟だ。
詳しく:客観訴訟と、法律の定めが要ること
ここが心臓部。客観訴訟という性格と、提起できる場面の限定を押さえる。
民衆訴訟と機関訴訟
| 民衆訴訟 | 機関訴訟 | |
|---|---|---|
| 誰が争う | 選挙人など(自己の利益は不要) | 行政機関どうし |
| 何を争う | 機関の法規違反の是正 | 機関相互の権限の存否・行使 |
| 代表例 | 選挙無効訴訟・住民訴訟 | 国の関与に関する訴訟 |
まず民衆訴訟。これは、自分の法律上の利益にかかわらない資格で提起できるのが特徴。たとえば選挙無効訴訟は、自分が当選を争うわけでなくても、選挙人という資格で提起できる。
次に機関訴訟。これは、行政機関どうしが、権限の存否や行使をめぐって争うもの。私人は提起できない点に注意する。
そして、両者に共通する最大のポイントが法律の定めが要ること。
提起できる場面
| 区分 | 提起できるか |
|---|---|
| 法律に特別の定めがある場合 | 提起できる |
| 法律に特別の定めがない場合 | 提起できない |
客観訴訟は、法律に特別の定めがある場合に限って提起できる。「民衆」という言葉から「誰でも自由に提起できる」と思い込まないこと。定めがある場面(選挙無効訴訟・住民訴訟など)でだけ使える、限られた仕組みだ。
わかりやすく言い換えると
つまり民衆訴訟・機関訴訟は「自分のためではなく、行政の適法性を守るための客観訴訟」。民衆訴訟は選挙人などが機関の違法を正し、機関訴訟は行政機関どうしが権限を争う。どちらも法律の定めがある場面でだけ使える。
要するに押さえどころは2つ。①どちらも客観訴訟で、法律に特別の定めがある場合のみ提起できる、②民衆訴訟は選挙人など(自己の利益は不要)、機関訴訟は行政機関どうし(私人は不可)。
試験のツボ
🔴 一番出る:どちらも客観訴訟
①個人の権利救済ではなく、行政の適法性の確保が目的
②法律に特別の定めがある場合に限って提起できる
🔴 次に出る:民衆訴訟と機関訴訟の違い
民衆訴訟は選挙人など(自己の利益は不要)。機関訴訟は行政機関どうし(私人は不可)。
🟡 押さえると安定:代表例
民衆訴訟は選挙無効訴訟・住民訴訟。機関訴訟は国の関与に関する訴訟。
よくある間違い
①「民衆訴訟は、誰でも自由に提起できる」→ ✗ 法律に特別の定めがある場合に限って提起できる。
②「機関訴訟は、私人でも提起できる」→ ✗ 機関訴訟は行政機関どうしの争いで、私人は提起できない。
③「民衆訴訟・機関訴訟は、自分の権利の救済を目的とする」→ ✗ 目的は行政の適法性の確保。個人の権利救済を目的とする主観訴訟とは違う。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(客観訴訟という性格)
民衆訴訟・機関訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 民衆訴訟や機関訴訟は、自己の権利利益の救済だけを目的とするとされる
- 民衆訴訟や機関訴訟は、私人どうしの契約上の紛争を解決する訴訟をいう
- 民衆訴訟や機関訴訟は、行政庁の処分の取消しを求める抗告訴訟であるとされる
- 民衆訴訟や機関訴訟は、行政の客観的な適法性の確保を目的とする客観訴訟
解答は 4 だ。
民衆訴訟・機関訴訟は、個人の権利救済ではなく、行政の客観的な適法性の確保を目的とする客観訴訟だ。「自分のため」ではない点が出発点だ。
選択肢1の「権利救済だけ」、選択肢2の「私人間の契約」、選択肢3の「抗告訴訟」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 権利救済が目的ではない |
| 2 | ✗ | 私人間の民事訴訟とは別 |
| 3 | ✗ | 抗告訴訟とは別の類型 |
| 4 | ✓ | 適法性の確保を目的とする客観訴訟で正しい |
オリジナル問題2(法律の定め)
民衆訴訟・機関訴訟を提起できる場面に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 民衆訴訟や機関訴訟は、法律に特別の定めがある場合に限って提起できる
- 民衆訴訟は、自己の利益がなくても誰でも自由に提起できるものとされる
- 機関訴訟は、私人であっても自由に提起できるものとされている
- 民衆訴訟や機関訴訟は、特別の定めがなくても広く提起できるとされている
解答は 1 だ。
民衆訴訟・機関訴訟は、法律に特別の定めがある場合に限って提起できる。「民衆」という言葉から、誰でも自由にとは考えないことだ。
選択肢2の「誰でも自由に」、選択肢3の「私人でも」、選択肢4の「定めがなくても」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 法律に特別の定めがある場合のみで正しい |
| 2 | ✗ | 誰でも自由には提起できない |
| 3 | ✗ | 機関訴訟に私人は入れない |
| 4 | ✗ | 特別の定めが必要 |
オリジナル問題3(民衆訴訟と機関訴訟の違い)
民衆訴訟と機関訴訟の違いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 民衆訴訟は、行政機関どうしの権限の存否や行使を争う訴訟であるとされる
- 機関訴訟は、選挙人が選挙の無効を争う訴訟の代表例であるとされている
- 民衆訴訟は選挙無効訴訟など、機関訴訟は行政機関相互の権限紛争である
- 民衆訴訟と機関訴訟は、まったく同じ内容の訴訟であるとされている
解答は 3 だ。
民衆訴訟は選挙無効訴訟などで、選挙人などが機関の違法を正すもの。機関訴訟は行政機関どうしの権限紛争だ。担い手も対象も違うぞ。
選択肢1の「民衆訴訟が権限争い」、選択肢2の「機関訴訟が選挙無効」、選択肢4の「まったく同じ」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 権限の争いは機関訴訟 |
| 2 | ✗ | 選挙無効訴訟は民衆訴訟 |
| 3 | ✓ | 民衆訴訟と機関訴訟の役割分担で正しい |
| 4 | ✗ | 両者は内容が異なる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 共通の性格 = 個人の権利救済ではなく、行政の適法性の確保を目的とする客観訴訟。
- 🔴 法律の定め = 法律に特別の定めがある場合に限って提起できる(誰でも自由ではない)。
- 🟡 違いと代表例 = 民衆訴訟(選挙人など・選挙無効訴訟や住民訴訟)/機関訴訟(行政機関どうし・私人は不可)。
次に学ぶ
- 当事者訴訟 ── 民衆訴訟・機関訴訟と同じく、抗告訴訟以外の訴訟類型。
- 抗告訴訟 ── 処分を攻める、行政事件訴訟の中心となる総称。
- 取消訴訟 ── 抗告訴訟の中核。対比で訴訟類型の全体像を押さえる。
執筆: SikakuQuest編集部