権限の代理とは(全体像)
権限の代理とは、行政庁の権限を、別の機関(代理機関)が代わって行使するしくみのこと。ただし、その行為の法的効果は、本来の行政庁(被代理庁)に帰属する。
押さえる入口は2つ。
- 権限は移らない … 代理では、権限そのものは被代理庁に残ったまま。代理機関は、それを代わりに行使するだけ。
- 被代理庁が行政庁のまま … 行政庁はあくまで被代理庁。代理機関は「○○大臣代理」と示して(顕名)行為する。
たとえば、内閣総理大臣に事故があったとき、あらかじめ指定された国務大臣が代理を務める。このとき行政庁は内閣総理大臣のままで、代理する大臣がその職務を行う。
詳しく:法定代理と授権代理、委任との違い
ここが心臓部。代理の2つの種類と、委任との違いを押さえる。
法定代理と授権代理
| 種類 | 発動のしかた | 例 |
|---|---|---|
| 法定代理 | 法律に基づいて発動する | 内閣総理大臣の事故時の副総理 |
| 授権代理 | 行政庁の意思で代理権を与える | 大臣が局長に特定業務を授権 |
法定代理は、欠員や事故のときに法律に基づいて発動する代理。授権代理は、行政庁が自分の意思で代理権を与えるもの。授権代理は権限が移るわけではないので、原則として法律の根拠はいらない(ただし権限の全部を代理させることはできないとされる)。
次に、よく混同される「委任」との違い。
権限の代理と委任の違い
| 観点 | 権限の代理 | 権限の委任 |
|---|---|---|
| 権限の移転 | 移らない | 移る |
| 行政庁は誰か | もとの行政庁のまま | 受任した機関 |
| 法律の根拠 | 授権代理は原則不要 | 必要 |
いちばんの違いは、代理は権限が移らないが、委任は移ること。だから代理では被代理庁が行政庁のままで、授権代理には原則として法律の根拠もいらない。委任は権限の所在が変わるので法律の根拠が必要。
わかりやすく言い換えると
つまり、権限の代理は「ピンチヒッター」。権限は本来の行政庁に残したまま、代理機関が代わって行使し、効果は本来の行政庁に帰る。
委任との違いは「代理は権限が移らない/委任は移る」。要するに、代理は所在が変わらないので授権代理に法律の根拠は原則いらない、と覚えるとよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:権限は移らない(委任との違い)
代理では権限は移らず、被代理庁が行政庁のまま。委任は権限が移り受任機関が行政庁になる。
🔴 次に出る:法定代理と授権代理
①法定代理 = 法律に基づいて発動(事故・欠員など)
②授権代理 = 行政庁の意思で代理権を与える
🟡 押さえると安定:授権代理は原則として法律の根拠不要
権限が移らないので、授権代理には原則として法律の根拠はいらない。ただし全部の代理はできない。
よくある間違い
①「権限の代理では、権限が代理機関に移る」→ ✗ 代理では権限は移らない。移るのは委任。
②「授権代理にも、必ず法律の根拠が必要」→ ✗ 授権代理は権限が移らないので、原則として法律の根拠はいらない。
③「代理と委任はまったく同じもの」→ ✗ 代理は権限が移らず、委任は移る。別の制度。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(権限の代理の意味)
権限の代理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 権限の代理では、権限そのものが代理機関に移転するものとされている
- 権限の代理では権限そのものは移らず、その法的効果は本来の行政庁に帰属する
- 権限の代理では、行政庁が代理機関に変わってしまうものとされている
- 権限の代理では、代理機関が自分の名で行政庁として行為するものとされている
解答は 2 である。
権限の代理では権限は移らず、その効果は本来の行政庁(被代理庁)に帰属するのである。代理機関は、代わりに行使するだけなのだ。
選択肢1の「権限が移転」、選択肢3の「行政庁が変わる」、選択肢4の「代理機関が自分の名で行政庁として」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 代理では権限は移らない |
| 2 | ✓ | 権限は移らず効果は本来の行政庁にで正しい |
| 3 | ✗ | 行政庁は被代理庁のまま |
| 4 | ✗ | 代理であることを示して行う |
オリジナル問題2(法定代理と授権代理)
法定代理と授権代理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 法定代理は行政庁の意思で代理権を与えるもので、授権代理は法律で発動する
- 法定代理も授権代理も、どちらも権限が代理機関に移転するものとされている
- 法定代理も授権代理も、まったく区別なく同じものであるものとされている
- 法定代理は法律に基づいて発動し、授権代理は行政庁の意思で代理権を与える
解答は 4 である。
法定代理は法律に基づいて発動し、授権代理は行政庁の意思で代理権を与えるものなのである。前者は事故や欠員のとき、後者は行政庁の判断による。
選択肢1は法定代理と授権代理が逆である。選択肢2の「権限が移転」、選択肢3の「区別なく同じ」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 法定代理と授権代理の説明が逆 |
| 2 | ✗ | 代理では権限は移らない |
| 3 | ✗ | 発動のしかたが異なる |
| 4 | ✓ | 法定は法律・授権は意思で正しい |
オリジナル問題3(委任との違い)
権限の代理と委任の違いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 代理は権限が移らず授権代理は原則根拠不要、委任は権限が移り根拠必要
- 代理では権限が移り、委任では権限が移らないものとされている
- 代理も委任も、どちらも法律の根拠が必ず必要であるものとされている
- 代理も委任も、被代理庁や委任庁が行政庁のままであるものとされている
解答は 1 である。
代理では権限が移らず、授権代理は原則として法律の根拠が不要。これに対し委任は権限が移り、法律の根拠が必要なのである。所在が変わるかどうかが分かれ目だ。
選択肢2は代理と委任が逆である。選択肢3の「どちらも根拠が必要」、選択肢4の「委任庁も行政庁のまま」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 代理は移らず・委任は移り根拠必要で正しい |
| 2 | ✗ | 代理と委任の説明が逆 |
| 3 | ✗ | 授権代理は原則根拠不要 |
| 4 | ✗ | 委任では受任機関が行政庁になる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 権限は移らない(委任との違い) = 代理では権限は移らず、被代理庁が行政庁のまま。効果は本来の行政庁に帰属する。
- 🔴 法定代理と授権代理 = 法律で発動する法定代理と、行政庁の意思による授権代理。
- 🟡 授権代理は原則として法律の根拠不要 = 権限が移らないため。ただし全部の代理はできない。
次に学ぶ
執筆: SikakuQuest編集部