仮の義務付け・仮の差止めとは(全体像)
仮の義務付け・仮の差止めとは、義務付け訴訟や差止訴訟で、判決(本案)を待っていられないほど切迫したときに、裁判所が仮に(暫定的に)義務付けや差止めを命ずる制度のこと。判決前の応急の救済だ。
- 仮の義務付け … 本案判決を待たずに、暫定的に「処分をせよ」と命ずる(例:保育所への緊急の入所)。
- 仮の差止め … 本案判決を待たずに、暫定的に「処分をするな」と止める(例:送還の一時停止)。
執行停止が「処分を止める」方向の救済なのに対し、こちらは義務付け・差止訴訟とセットの仮の救済だ。
詳しく:厳しい要件と、執行停止との違い
ここが心臓部。3つの要件と、執行停止より厳しい理由を押さえる。
仮の義務付け・仮の差止めの要件
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 本案訴訟の提起 | 義務付け訴訟・差止訴訟が起こされていること |
| 償えない損害+緊急性 | 償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること |
| 本案に理由 | 本案について理由があるとみえること |
まず本案訴訟が前提。仮の義務付け・仮の差止めは、義務付け訴訟・差止訴訟が起こされていてはじめて使える。本案の訴訟なしには申し立てられない。
次に、執行停止との違いがいちばんのヤマだ。
執行停止との損害要件の違い
| 制度 | 損害の要件 |
|---|---|
| 執行停止 | 重大な損害を避けるため緊急の必要 |
| 仮の義務付け・仮の差止め | 償うことのできない損害を避けるため緊急の必要 |
執行停止の要件が「重大な損害」なのに対し、仮の義務付け・仮の差止めは、より厳しい「償うことのできない損害」が必要だ。なぜ厳しいかというと、まだ本案で勝つ前の段階で、行政に「処分をせよ」と積極的な義務を課すことになるからだ。これに加えて、本案に理由があるとみえることも要る。
わかりやすく言い換えると
つまり仮の義務付け・仮の差止めは「判決を待てないときの、義務付け・差止訴訟版の緊急救済」。本案訴訟が前提で、償えない損害を避ける緊急の必要と、本案に理由があることが要る。執行停止より要件は厳しい。
要するに押さえどころは2つ。①本案訴訟の提起が前提で、償えない損害を避ける緊急の必要と本案に理由があることが要件、②執行停止の「重大な損害」より厳しい「償えない損害」が課される。
試験のツボ
🔴 一番出る:執行停止との要件比較
①執行停止 = 重大な損害を避ける緊急の必要
②仮の義務付け・仮の差止め = 償えない損害を避ける緊急の必要(より厳しい)
🔴 次に出る:本案訴訟が前提
義務付け訴訟・差止訴訟が起こされていることが前提。本案なしには使えない。
🟡 押さえると安定:本案に理由
本案について理由があるとみえることも要件になる。
よくある間違い
①「執行停止と仮の義務付けは、まったく同じ要件である」→ ✗ 仮の義務付け・仮の差止めは「償えない損害」で、執行停止より厳しい。
②「本案訴訟を起こさなくても、仮の義務付けはできる」→ ✗ 義務付け訴訟・差止訴訟の提起が前提になる。
③「仮の義務付けは、本案に理由がないと見えても認められる」→ ✗ 本案について理由があるとみえることも要件。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(仮の義務付け・仮の差止めの意味)
仮の義務付け・仮の差止めに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 仮の義務付け・仮の差止めとは、本案の判決そのものをいうものとされる
- 仮の義務付け・仮の差止めとは、私人間の紛争を解決する制度をいう
- 仮の義務付け・仮の差止めは、本案判決を待てないときの暫定的な救済
- 仮の義務付け・仮の差止めとは、処分の取消しを求める訴訟をいうとされる
解答は 3 だ。
仮の義務付け・仮の差止めは、本案判決を待てないときに、暫定的に義務付けや差止めを命ずる緊急救済だ。義務付け訴訟・差止訴訟とセットの仮の救済だぞ。
選択肢1の「本案の判決そのもの」、選択肢2の「私人間の紛争」、選択肢4の「取消しを求める訴訟」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 判決そのものではなく仮の救済 |
| 2 | ✗ | 私人間の紛争とは別 |
| 3 | ✓ | 本案判決を待てないときの暫定的救済で正しい |
| 4 | ✗ | 取消訴訟とは別 |
オリジナル問題2(要件)
仮の義務付け・仮の差止めの要件に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 仮の義務付けには、本案訴訟の提起はまったく必要ないものとされる
- 仮の義務付けは、損害の程度に関係なく認められるものとされる
- 仮の義務付けは、本案に理由がないと見えても認められるとされる
- 仮の義務付けには、本案訴訟の提起と償えない損害の緊急性が要る
解答は 4 だ。
仮の義務付けには、本案訴訟の提起と、償えない損害を避ける緊急の必要が要る。本案に理由があるとみえることも要件だぞ。
選択肢1の「本案訴訟が不要」、選択肢2の「損害に関係なく」、選択肢3の「理由がなくても」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 本案訴訟の提起が前提 |
| 2 | ✗ | 償えない損害の緊急性が必要 |
| 3 | ✗ | 本案に理由があるとみえることが必要 |
| 4 | ✓ | 本案訴訟の提起+償えない損害の緊急性で正しい |
オリジナル問題3(執行停止との比較)
執行停止との比較に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 仮の義務付けは、執行停止とまったく同じ要件で認められるとされている
- 仮の義務付けは、執行停止より厳しい「償えない損害」が要件である
- 仮の義務付けは、執行停止よりもゆるい要件で認められるとされる
- 仮の義務付けは、執行停止と異なり要件がまったくないとされる
解答は 2 だ。
仮の義務付け・仮の差止めは、執行停止の「重大な損害」より厳しい、「償えない損害」が要件だ。行政に積極的義務を課すから、ハードルが高いぞ。
選択肢1の「まったく同じ」、選択肢3の「よりゆるい」、選択肢4の「要件がない」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 損害の要件が異なる |
| 2 | ✓ | 執行停止より厳しい「償えない損害」で正しい |
| 3 | ✗ | むしろ厳しい要件 |
| 4 | ✗ | 厳格な要件がある |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 意味 = 本案判決を待てないとき、暫定的に義務付け・差止めを命ずる緊急救済。
- 🔴 執行停止との違い = 執行停止の「重大な損害」より厳しい「償えない損害」が要件。
- 🟡 要件 = 本案訴訟の提起が前提。償えない損害の緊急性+本案に理由があるとみえること。
次に学ぶ
執筆: SikakuQuest編集部