退職所得とは(全体像)
退職所得は、退職金・退職手当など、退職に基因して受け取る一時金にかかる所得のこと。長年の勤務へのねぎらいと、これからの生活の元手という性格があるので、税金が軽くなるしくみが用意されている。
押さえるのは3つ。
- 対象 … 退職金・退職手当・確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)を一時金で受け取るとき・中小企業退職金共済の一時金・役員退職金など。
- 計算 … (収入金額 − 退職所得控除額) × 1/2 で、控除を引いてさらに半分にする(だから軽い)。
- 課税 … 分離課税で、申告書を出せば原則確定申告は不要。
なお、DC・DBを年金として分割で受け取るときは退職所得ではなく雑所得になる。「一時金なら退職所得/年金なら雑所得」が分かれ目。
詳しく:この表だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。退職所得の中身は、次の2つの表に全部つまっている。
退職所得の計算
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算式 | (収入金額 − 退職所得控除額) × 1/2 |
| 退職所得控除(20年以下) | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 退職所得控除(20年超) | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
| 勤続年数の端数 | 1年未満は1年に切上げ(10年6か月→11年) |
| 障害が原因の退職 | 控除額に100万円を加算 |
課税のしかたと例外
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税方式 | 分離課税(給与など他の所得と合算しない) |
| 申告書を出すと | 正しく源泉徴収され、原則確定申告は不要 |
| 申告書を出さないと | 一律20.42%を源泉徴収され、後で確定申告して精算 |
| 特定役員退職手当等 | 役員などで勤続5年以下 → 1/2課税なし |
| 短期退職手当等 | 役員以外で勤続5年以下 → 控除後の300万円超の部分は1/2課税なし |
計算の流れは、まず勤続年数で退職所得控除を出し、収入から引いて、残りを半分にするだけ。たとえば勤続30年・退職金2,000万円なら、控除は 800万円+70万円×10年=1,500万円、退職所得は (2,000万円−1,500万円)×1/2=250万円。
わかりやすく言い換えると
要するに、退職所得は「たくさん引いて、さらに半分」にしてくれる、いちばん税金にやさしい所得、と覚えるとラク。長く勤めた人ほど控除が分厚くなるので、勤続20年を境に控除の式が変わる。
つまり、申告書を1枚出すかどうかが分かれ目。出せば正しい税額で完了、出さないと多めに引かれて後で取り戻す手間がかかる、という違い。
試験のツボ
🔴 一番出る:計算式と退職所得控除の金額
①計算 = (収入金額 − 退職所得控除額) × 1/2
②控除(20年以下)= 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
③控除(20年超)= 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
🔴 次に出る:分離課税と申告書
①退職所得は分離課税(他の所得と合算しない)
②申告書を出せば原則確定申告なし/出さないと20.42%源泉徴収+後で精算
🟡 押さえると安定:端数と例外
①勤続年数の1年未満は1年に切上げ・障害退職は控除+100万円
②役員などで勤続5年以下(特定役員退職手当等)は1/2課税なし
よくある間違い
①「退職金は全額そのまま課税される」→ ✗ 退職所得控除を引いて、さらに1/2にする。全額ではない。
②「退職所得控除は勤続年数に関係なく一律」→ ✗ 20年以下は年40万円、20年超は800万円+年70万円。年数で変わる。
③「給与と同じく年末調整だけで終わる」→ ✗ 退職所得は分離課税で年末調整の対象外。申告書を出すかどうかで取扱いが変わる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(退職所得控除の計算)
退職所得控除額の計算に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 退職所得控除は、勤続年数にはかかわらず一律で常に800万円が適用されるものとして扱われる
- 退職所得控除は、20年以下は年40万円、20年超は800万円+70万円×(年数−20年)である
- 退職所得控除は、勤続年数が短いほど控除額が大きくなるように設計されているものとして扱われている
- 退職所得控除は、収入金額のちょうど半分をそのまま控除額とする方式で計算されるものとして扱われる
解答は 2 だっ。
要するに、退職所得控除は勤続20年を境にスピードが変わるんだっ。20年以下は1年あたり40万円(最低80万円)、20年を超えると800万円に70万円×超えた年数を足すんだっ!
つまり長く勤めた人ほど控除が分厚くなる作りで、一律でも、短いほど大きいわけでもないっ。選択肢1の「一律800万円」、選択肢3の「短いほど大きい」、選択肢4の「収入の半分が控除」はどれも誤りだっ!
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 一律ではなく勤続年数で変わる |
| 2 | ✓ | 20年以下年40万・20年超800万+70万×(年数−20)で正しい |
| 3 | ✗ | 長いほど控除が大きくなる設計 |
| 4 | ✗ | 収入の半分を控除する方式ではない |
オリジナル問題2(退職所得の金額の計算)
退職所得の金額の計算に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 退職所得の金額は、退職金の収入金額がそのまま課税対象になるものとされている
- 退職所得の金額は、収入金額に退職所得控除額を足したうえで2倍にして求めるとされる
- 退職所得の金額は、収入金額から退職所得控除額を引き、その残りを1/2にして求める
- 退職所得の金額は、給与所得と合算したうえで超過累進税率を適用して求めるものとされる
解答は 3 だよ。
つまり、退職所得は「控除を引いて、さらに半分」が基本式だよ。(収入金額 − 退職所得控除額) × 1/2 で求めるんだ。
要するに、たとえば勤続30年・退職金2,000万円なら、控除1,500万円を引いた500万円の半分=250万円が退職所得になるんだよ。選択肢1の「全額」、選択肢2の「足して2倍」、選択肢4の「給与と合算」はどれも誤りなんだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 控除を引いて半分にするので全額ではない |
| 2 | ✗ | 引いて1/2が正しく、足して2倍ではない |
| 3 | ✓ | (収入−退職所得控除)×1/2で正しい |
| 4 | ✗ | 分離課税で給与とは合算しない |
オリジナル問題3(課税方式と申告書)
退職所得の課税方式に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 退職所得は分離課税であり、申告書を出せば原則として確定申告は不要になるとされる
- 退職所得は給与所得と合算する総合課税で、年末調整だけで課税が完結するものとされる
- 退職所得は申告書の提出にかかわらず、必ず確定申告をしなければならないものとされる
- 退職所得は申告書を出さなくても、いつも正しい税額が自動で源泉徴収されるとされる
解答は 1 である。
つまり、退職所得は他の所得と合算しない分離課税である。「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に出せば、退職所得控除と1/2を反映した正しい税額で源泉徴収され、原則として確定申告は不要になる。
要するに、申告書を出さないと一律20.42%が源泉徴収され、後から確定申告で精算することになる。選択肢2の「総合課税・年末調整完結」、選択肢3の「必ず確定申告」、選択肢4の「出さなくても正しい税額」はいずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 分離課税・申告書提出で原則確定申告不要で正しい |
| 2 | ✗ | 分離課税で給与とは合算せず年末調整の対象外 |
| 3 | ✗ | 申告書を出せば確定申告は原則不要 |
| 4 | ✗ | 申告書がないと20.42%源泉徴収+後で精算 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 計算 = (収入金額 − 退職所得控除額) × 1/2。退職所得控除は20年以下が年40万円(最低80万円)、20年超が800万円+70万円×(年数−20年)。
- 🔴 課税 = 分離課税。申告書を出せば原則確定申告なし/出さないと20.42%源泉徴収+後で精算。
- 🟡 端数と例外 = 勤続1年未満は1年切上げ・障害退職は控除+100万円。役員などで勤続5年以下(特定役員退職手当等)は1/2課税なし。
次に学ぶ
- 給与所得 ── 働いている間にもらう給与の所得。退職所得は「辞めるときの一時金」、給与所得は「働いている間の対価」という対比で押さえると混ざらない。
- 所得税の仕組み ── 所得は10種類に分かれ、合算する総合課税と切り離す分離課税がある。退職所得は分離課税の代表例。
- 事業所得 ── 事業で得た所得。実額の経費を引く点が、年数で控除する退職所得との違い。
執筆: SikakuQuest編集部