譲渡所得とは(全体像)
譲渡所得は、持っている資産を売って出たもうけ(売却益)にかかる所得のこと。対象は土地・建物・株式・公社債・投資信託・金地金・宝石・書画骨董・ゴルフ会員権など、はば広い。
ただし、同じ「売る」でも別の所得になるものがある。
- 商品を売る(棚卸資産)→ 事業所得
- 山の木を売る(山林の立木)→ 山林所得
- 生活用品を売る(家具・衣服・通勤用の車など)→ 原則かからない(非課税)
生活用品でも、貴金属・宝石・書画骨董などで1個または1組30万円を超えるものは課税対象になる。
そして一番大事なのが、対象の資産によって課税のしかたが3系統に分かれること。つまり、ここが譲渡所得のすべて。
詳しく:この表だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。譲渡所得は「資産の種類で課税方式が違う」のがポイント。次の表に全部つまっている。
譲渡所得 3系統の課税方式
| 資産 | 課税方式 | ポイント |
|---|---|---|
| 土地・建物 | 分離課税 | 長期か短期かで税率が変わる(下の表) |
| 株式・公社債等 | 申告分離課税 | 税率は一律20.315% |
| 金・宝石・ゴルフ会員権など | 総合課税 | 給与などと合算。5年超なら1/2課税・最高50万円控除 |
土地建物は、長期か短期かで税率が大きく変わる。判定基準が独特なので、ここが最頻出。
土地建物の長期・短期と税率
| 長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
|---|---|---|
| 判定 | 譲渡した年の1月1日時点で所有が5年超 | 同じく5年以下 |
| 税率 | 20.315% | 39.63% |
判定は「実際に持っていた期間」ではなく、売った年の1月1日時点で5年を超えているかで見る。たとえば2020年10月に買って2025年12月に売ると、2025年1月1日では所有4年ちょっと→短期。年をまたいで2026年に売れば5年超→長期になる。
総合課税になる金地金などは、判定がふつう(取得から譲渡までの実期間)で、5年超なら利益の1/2だけが課税対象になる。さらに最高50万円の特別控除があるので、小さな売却益なら税金がかからないことも多い。
マイホーム(居住用財産)を売ったときの特例
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 所有期間に関係なく、売却益から3,000万円を引ける |
| 軽減税率 | 所有10年超なら6,000万円以下の部分が14.21%に下がる(控除と併用可) |
株式は、損が出た年の救済がポイント。上場株式の譲渡損は、同じ年の上場株式の売却益や(申告分離を選んだ)配当と相殺でき、引ききれない分は翌年から3年間くりこせる。
わかりやすく言い換えると
つまり、譲渡所得は「何を売ったかで税金のかかり方が決まる」と覚えるとラク。
土地建物は「1月1日で5年カウント」がクセモノ。売った日ではなく、売った年の年明け時点で数えるので、年末ギリギリに売るか年明けに売るかで税率が変わることがある。
金地金などの総合課税は、長く持っていれば(5年超)もうけの半分しか課税されない&50万円までは控除——個人の趣味の売買にやさしいしくみ。
試験のツボ
🔴 一番出る:土地建物の長期短期の判定と税率
①判定は「譲渡した年の1月1日」時点で5年を超えているか(実所有期間ではない)
②5年超=長期=20.315%
③5年以下=短期=39.63%
🔴 次に出る:3系統の課税方式の区別
①土地建物 = 分離課税
②株式等 = 申告分離課税で一律20.315%
③金地金など = 総合課税
🟡 押さえると安定:総合課税の「1/2」と「50万円控除」
①金地金などは、所有5年超なら利益の1/2だけが課税対象
②短期・長期を通じて最高50万円の特別控除
🟡 株式の救済:上場株式の損は損益通算+3年繰越
🟡 マイホーム特例:3,000万円控除+10年超で14.21%軽減税率(併用可)
よくある間違い
①「譲渡所得はぜんぶ同じ税率」→ ✗ 資産によって3系統に分かれる。土地建物(分離)・株式(申告分離)・金地金など(総合課税)。
②「土地建物の長期短期は実際に持っていた期間で判定」→ ✗ 「売った年の1月1日」時点で5年超かどうかで判定する。
③「総合課税の譲渡所得は全額課税」→ ✗ 5年超なら利益の1/2が課税対象。さらに最高50万円の特別控除がある。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(3系統の課税方式)
譲渡所得の課税方式に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 譲渡所得は資産の種類を問わず、すべて給与所得と合算する総合課税で計算するとされている
- 譲渡所得は資産の種類を問わず、すべて一律20.315%の分離課税で計算するものとされている
- 譲渡所得は土地建物が分離課税、株式が申告分離、金地金などが総合課税の3系統に分かれる
- 譲渡所得は商品の売却益や山の木の売却益も含めて、すべて譲渡所得として課税するとされる
解答は 3 だよ。
譲渡所得は、つまり「何を売ったか」で課税方式が3系統に分かれるんだ。土地建物は分離課税、株式は申告分離課税で一律20.315%、金地金・宝石・ゴルフ会員権などは総合課税だよ。要するに、ぜんぶ同じ税率でもないし、ぜんぶ総合課税でもないんだ。わかりやすく言い換えると、資産ごとにルールが用意されているイメージだね。商品の売却益は事業所得、山の木は山林所得で別区分だから、なんでも譲渡所得になるわけでもないよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 総合課税は金地金などだけ。土地建物・株式は分離課税 |
| 2 | ✗ | 20.315%は株式と土地建物の長期。短期や総合課税は別 |
| 3 | ✓ | 土地建物=分離、株式=申告分離、金地金など=総合課税で正しい |
| 4 | ✗ | 商品は事業所得、山の木は山林所得で別区分 |
オリジナル問題2(総合課税の譲渡所得)
金地金など総合課税の譲渡所得に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 所有期間が5年を超える場合は、譲渡益の全額がそのまま課税対象となるものとされている
- 所有期間が5年を超える場合は、譲渡益の1/2が課税対象となり、最高50万円の特別控除がある
- 所有期間にかかわらず、譲渡益から一律で3,000万円を控除できるものとして取り扱われている
- 所有期間にかかわらず、譲渡益はすべて非課税となり申告も不要であるものとされている
解答は 2 だっ。
金地金・宝石・ゴルフ会員権などの総合課税の譲渡所得は、所有5年超なら譲渡益の1/2だけが課税対象になるんだっ!さらに短期・長期を通じて最高50万円の特別控除があるよっ。要するに、長く持てば半分・しかも50万円おまけ、というやさしいしくみだっ。つまり全額課税ではないし、3,000万円控除はマイホーム(土地建物)の特例だから、ここでは関係ないんだっ!
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 5年超なら1/2が課税対象。全額ではない |
| 2 | ✓ | 5年超で1/2課税・最高50万円控除で正しい |
| 3 | ✗ | 3,000万円控除はマイホームの特例 |
| 4 | ✗ | 非課税ではない。利益が出れば課税される |
オリジナル問題3(土地建物の長期短期)
土地建物の譲渡所得の長期短期判定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下なら短期と判定する
- 実際に取得してから譲渡するまでの所有期間が5年を超えていれば長期と判定するものとされる
- 土地建物の譲渡所得は、長期短期を問わず一律で39.63%の税率が適用されるものとされている
- 土地建物の譲渡所得は、保有していた月数にかかわらず常に短期として課税されるものとされる
解答は 1 である。
土地建物の長期短期は、つまり「譲渡した年の1月1日」時点で所有が5年を超えているかで判定する。実際に持っていた期間ではない点がクセモノである。5年超なら長期で税率20.315%、5年以下なら短期で税率39.63%だ。要するに、年末に売るか年明けに売るかで税率が変わることもあるので、1月1日基準だけは指で刻みこむとよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 譲渡年の1月1日時点で5年超なら長期で正しい |
| 2 | ✗ | 実所有期間ではなく1月1日基準で判定する |
| 3 | ✗ | 39.63%は短期。長期は20.315% |
| 4 | ✗ | 常に短期ではない。1月1日基準で長期短期が分かれる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 土地建物 = 分離課税。譲渡した年の1月1日で5年超=長期20.315%/5年以下=短期39.63%。
- 🔴 3系統 = 土地建物(分離)・株式(申告分離20.315%)・金地金など(総合課税)。
- 🟡 総合課税の譲渡所得 = 5年超で1/2課税・最高50万円控除。
- 🟡 マイホーム特例 = 3,000万円控除+10年超で14.21%軽減税率(併用可)。
次に学ぶ
- 退職所得 ── 退職金にかかる所得。分離課税で「(収入−控除)×1/2」。譲渡所得と同じ分離課税の仲間として対比すると整理しやすい。
- 給与所得 ── 給料にかかる所得。総合課税で年末調整。「合算する所得」と「分けて計算する所得」の対比で覚える。
- 所得税の仕組み ── 所得を10区分に分けるしくみ。譲渡所得はその1つという全体像が見える。
執筆: SikakuQuest編集部