雇止め法理とは(全体像)
有期労働契約は期間が来れば終わるのが原則だが、反復更新が続いて実質的に無期契約と変わらなくなったり、労働者が「次も更新される」と期待するのが当然な状況になったりすることがある。そこで使用者が突然更新を拒む(雇止め)と解雇に近い不利益が生じる。これを解雇権濫用法理と同様に制限するのが雇止め法理。
押さえるのは2点。
- ⭐2類型のいずれかが前提 … 実質無期同視型(東芝柳町工場事件)か合理的期待型(日立メディコ事件)のいずれかに該当する場合に、雇止めの合理性・相当性が問われる。
- 効果は従前同条件で更新みなし(無期化ではない) … 合理性・相当性を欠く雇止めは従前と同一条件で更新みなし。無期契約への転換は別の無期転換ルール。
⭐一番の引っかけは「すべての雇止めが制限」「自動で無期化」「申込み不要」。対象は2類型のいずれか、効果は同一条件で更新みなし、適用には労働者の申込みが必要。
詳しく:2類型・効果・要件を表でつかむ
ここが心臓部。「どんな場合に・どうなり・何が必要か」は次の表に全部つまっている。
雇止め法理の2類型と上乗せ要件
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 実質無期同視型 | 反復更新で実質的に無期契約と同視できる(東芝柳町工場事件型) |
| 合理的期待型 | 労働者に更新を期待する合理的な理由がある(日立メディコ事件型) |
| 前提 | 上記のいずれかに該当すること |
| 上乗せ要件 | 雇止めが客観的合理的理由を欠き社会通念上相当でないこと |
効果・申込要件・時期
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 従前と同一の労働条件で契約が更新されたものとみなす(無期化ではない) |
| 申込み | 労働者が契約期間満了までに更新の申込み、または期間満了後遅滞なく締結の申込み |
| 必要性 | 労働者の申込みがあって初めて更新みなしが働く |
| 時期 | 雇止め法理は2012年8月に始まった(無期転換ルールは2013年4月) |
押さえどころは、①対象は2類型のいずれか(東芝柳町/日立メディコ)、②合理性・相当性を欠く雇止めは従前同条件で更新みなし(無期化ではない)、③適用には労働者の申込みが必要、の3つ。
わかりやすく言い換えると
要するに「何度も更新して実質ずっと働いているのと同じ場合や、次も更新されると思って当然な場合に、会社が急に更新を断る(雇止め)と、クビと同じようにつらい。そういう合理的な理由のない雇止めは、これまでと同じ条件で契約が続いたものとして扱う」というルール。
つまり、引っかけられやすいのは2つ。1つ目は「雇止めが認められないと自動で無期契約になる」と思い込むこと。実際は従前と同一条件で(有期のまま)更新みなしで、無期化は別の無期転換ルール。2つ目は「労働者が何もしなくても自動で更新される」と思い込むこと。実際は労働者の更新の申込みが必要。
試験のツボ
🔴 一番出る:2類型のいずれか
①反復更新で実質的に無期契約と同視できる(東芝柳町工場事件型)
②労働者に更新を期待する合理的な理由がある(日立メディコ事件型)のいずれか(すべての雇止めが対象ではない)
🔴 次に出る:効果(従前同条件で更新みなし)
①合理性・相当性を欠く雇止めは従前と同一の労働条件で更新されたものとみなされる
②無期契約への転換ではない(無期化は別の無期転換ルール)
🟡 押さえると安定:申込要件と時期
①適用には労働者の更新の申込み(または満了後遅滞なく締結の申込み)が必要
②雇止め法理は2012年8月に始まった(無期転換ルールは2013年4月)
よくある間違い
①「すべての有期労働契約の雇止めが雇止め法理により制限される」→ ✗ 対象は実質無期同視型(東芝柳町工場事件)または合理的期待型(日立メディコ事件)のいずれかに該当する場合。
②「雇止めが認められないと有期契約は自動的に無期契約に転換する」→ ✗ 効果は従前と同一条件で(有期のまま)更新みなし。無期への転換は別の無期転換ルール。
③「雇止め法理が適用されるのに労働者の申込みは必要ない」→ ✗ 更新みなしが働くには、労働者の更新の申込み(または満了後遅滞なく締結の申込み)が必要。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(対象の類型)
雇止め法理の対象に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 雇止め法理は、期間の定めのない労働契約の解雇そのものだけをその対象とするものとされている
- 雇止め法理は、実質的に無期と同視できる場合か、更新を期待する合理的理由がある場合を対象とする
- 雇止め法理は、契約回数や更新の期待を問わず、すべての有期契約の雇止めを一律に制限するものとされる
- 雇止め法理は、労働者ではなく使用者が更新を希望した場合に限って適用されるものとされているものである
解答は 2 だよ。
雇止め法理は、実質的に無期と同視できる場合(東芝柳町型)か、更新を期待する合理的理由がある場合(日立メディコ型)を対象とするんだ。
選択肢1の「解雇そのもの」、選択肢3の「すべて一律」、選択肢4の「使用者の希望」は、いずれも誤りだよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 有期契約の雇止めが対象である |
| 2 | ✓ | 実質無期同視型・合理的期待型の2類型で正しい |
| 3 | ✗ | すべての雇止めを一律に制限するものではない |
| 4 | ✗ | 必要なのは労働者の更新の申込みである |
オリジナル問題2(効果)
雇止めが認められない場合の効果に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 雇止めが認められない場合は、有期労働契約が当然に期間の定めのない無期契約へ転換するものとされる
- 雇止めが認められない場合でも契約は終了し、使用者は金銭の補償だけを行えば足りるものとされている
- 雇止めが認められない場合は、従前と同一の労働条件で当該有期労働契約が更新されたものとみなされる
- 雇止めが認められない場合は、労働条件を使用者が自由に引き下げて契約を更新できるものとされている
解答は 3 だっ。
効果は、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなすことだっ(無期化ではない)。
選択肢1の「無期へ転換」、選択肢2の「金銭補償だけ」、選択肢4の「条件引下げ」は、いずれも誤りだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 無期化ではなく従前同条件で更新みなしである |
| 2 | ✗ | 契約は更新されたものとみなされる |
| 3 | ✓ | 従前と同一条件で更新みなしで正しい |
| 4 | ✗ | 従前と同一の労働条件で更新される |
オリジナル問題3(申込要件と時期)
雇止め法理の適用要件と時期に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 雇止め法理は、労働者が更新の申込みをしなくても、当然に更新みなしが働くものとされているものである
- 雇止め法理は、使用者が更新を申し込んだ場合に限り、従前と同一条件での更新みなしが働くものとされる
- 雇止め法理は、無期転換ルールよりも後の2020年に始まった制度とされているものである
- 雇止め法理の適用には労働者が更新の申込み等をすることが必要で、2012年8月に始まったとされる
解答は 4 である。
雇止め法理の適用には労働者が更新の申込み等をすることが必要で、2012年8月に始まった(無期転換ルールは2013年4月)。
選択肢1の「申込み不要」、選択肢2の「使用者の申込み」、選択肢3の「2020年・無期転換より後」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 労働者の更新の申込みが必要である |
| 2 | ✗ | 必要なのは労働者の申込みである |
| 3 | ✗ | 2020年ではなく2012年8月で無期転換より先 |
| 4 | ✓ | 労働者の申込みが必要・2012年8月に始まったで正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 2類型 = ①反復更新で実質的に無期契約と同視できる場合(東芝柳町工場事件型)、または②更新を期待する合理的な理由がある場合(日立メディコ事件型)のいずれか。
- 🔴 効果 = 2類型のいずれかに該当し、雇止めが客観的合理的理由を欠き社会通念上相当でないときは、従前と同一の労働条件で更新されたものとみなされる(無期契約への転換ではない)。
- 🟡 要件と時期 = 適用には労働者の更新の申込み(または満了後遅滞なく締結の申込み)が必要。雇止め法理は2012年8月に始まった(無期転換ルールは2013年4月)。
次に学ぶ
- 労働契約 ── 雇止めは有期労働契約の更新をめぐる場面で問題になる。
- 解雇権濫用法理 ── 雇止め法理はこの考え方を有期契約の更新拒否に及ぼしたもの。
- 無期転換ルール(5年ルール) ── 反復更新された有期契約を無期契約へ転換する別の仕組み。
執筆: SikakuQuest編集部