就業促進手当とは何か(本質)
条文の趣旨
失業手当を受け切るより、早く再就職した方が得になるようにしないと、再就職が遅れてしまう。雇用保険法は、早期再就職を後押しするため、残りの給付日数に応じた手当を置いている。
就業促進手当は、安定した職業に就いた者への再就職手当、その後の定着を支える就業促進定着手当、就職困難者への常用就職支度手当からなる就職促進給付である(56条の3。就業手当は令和7年4月1日に廃止)(就業促進手当の要旨)。
核心は 「早期再就職を後押し・支給残日数で給付率が変わる」 という枠組み。就業手当が令和7年4月1日に廃止された点と、再就職手当の給付率を押さえる。
わかりやすく言い換えると
要するに「失業手当が残っているうちに再就職すると、残り日数の何割かをまとめてもらえる(再就職手当)。早く決まるほど割合が高い。その後6か月続けて賃金が下がっていれば追加(定着手当)、障害等で就職が難しい人には別の手当(常用就職支度手当)が出る」ということ。
試験での位置付け
就業促進手当は、雇用保険法で頻出の論点。3つの現行手当(再就職手当・就業促進定着手当・常用就職支度手当)と就業手当の令和7年4月1日廃止、再就職手当の支給残日数3分の1以上、給付率70%・60%、就業促進定着手当の6か月要件、常用就職支度手当の就職困難者が、横断的に問われる。
なぜ重要か
出題の傾向
就業促進手当をめぐる出題は、おおむね三つの形に整理できる。
- 体系型: 再就職手当・定着手当・常用就職支度手当の区別と就業手当廃止を問う
- 給付率型: 再就職手当の支給残日数3分の1以上・給付率70%/60%を問う
- 追加型: 就業促進定着手当の6か月雇用・賃金低下要件を問う
押さえるとどう効くか
ここをつかんでおくと、早期再就職の支援がつながる。所定給付日数 の支給残日数が3分の1以上残っていれば再就職手当が支給され、60歳以上で賃金が下がる場合は 高年齢雇用継続給付 の再就職給付金と選択になり、待期・給付制限 を経た就職が前提となる、という形で押さえると、就職促進給付の全体像が定着する。
関連論点との接続
就業促進手当は、複数の論点と接続している。
- 所定給付日数 ── 支給残日数が再就職手当の要件・給付率の基礎
- 高年齢雇用継続給付 ── 高年齢再就職給付金と再就職手当は選択
- 待期・給付制限 ── 待期経過後の就職が再就職手当の前提
「早期再就職を後押しする」という枠の中で、就業促進手当は就職促進給付の中核を担っている。
詳細解説
就業促進手当は、三つの軸 で分解すると整理しやすい。第1軸「体系と就業手当の廃止」、第2軸「再就職手当」、第3軸「就業促進定着手当と常用就職支度手当」。順に押さえれば、体系問題も給付率問題も落ち着いて解ける。
ポイント1: どんな体系で何が廃止されたのか ── 3つの手当、就業手当は廃止
体系を押さえる。
就業促進手当の体系(雇用保険法56条の3)
| 手当 | 整理 |
|---|---|
| 再就職手当 | 安定した職業に就いた受給資格者への給付 |
| 就業促進定着手当 | 再就職手当受給者の定着を支える追加給付 |
| 常用就職支度手当 | 障害者等就職困難者が安定した職業に就いた場合 |
| 就業手当 | 安定した職業以外への就業への給付(令和7年4月1日廃止) |
| 趣旨 | 早期再就職の後押し |
ポイントは、就業促進手当は、安定した職業に就いた者への再就職手当、その後の定着を支える就業促進定着手当、就職困難者への常用就職支度手当からなり、安定した職業以外への就業に対する就業手当は令和7年4月1日に廃止された こと(56条の3)。早く再就職するほど有利になるよう設計され、給付の中心は再就職手当である。
ポイント2: 再就職手当はどうなるのか ── 支給残日数3分の1以上、給付率70%・60%
再就職手当を押さえる。
再就職手当(雇用保険法56条の3)
ポイントは、再就職手当は、待期経過後に安定した職業に就いた受給資格者で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある場合に支給され、給付率は支給残日数が3分の2以上で70%、3分の1以上3分の2未満で60%である こと(56条の3)。支給額は支給残日数に給付率と基本手当日額を乗じて算定する。早く再就職して支給残日数が多いほど給付率が高くなり、申請は就職日の翌日から1か月以内である。
ポイント3: 定着手当や支度手当はどうなるのか ── 定着の追加と就職困難者
定着手当と支度手当を押さえる。
定着手当・常用就職支度手当(雇用保険法56条の3)
| 手当 | 整理 |
|---|---|
| 定着手当の対象 | 再就職手当の支給を受けた者 |
| 定着手当の要件 | 同一事業主に6か月以上雇用され、再就職後6か月の賃金が離職前を下回る |
| 定着手当の上限 | 原則、基本手当日額 × 支給残日数 × 20% |
| 支度手当の対象 | 障害者その他就職困難者で支給残日数が3分の1未満等 |
| 支度手当の額 | 原則90日 × 40% × 基本手当日額(残日数で調整) |
ポイントは、就業促進定着手当は再就職手当の支給を受けた者が同一事業主に6か月以上雇用され再就職後6か月の賃金が離職前を下回る場合の追加給付(上限は原則 基本手当日額×支給残日数×20%)、常用就職支度手当は障害者等就職困難者が安定した職業に就いた場合の給付である こと(56条の3)。常用就職支度手当は支給残日数が所定給付日数の3分の1未満の者等が対象で、原則90日に40%と基本手当日額を乗じた額(支給残日数により調整)が支給される。
ポイント4: 哲学コラム ── 就業促進手当が映す「早く動くほど報われる設計」
就業促進手当という仕組みは、単なる再就職祝い金ではなく、「早く次へ動いた人ほど報われ、その後も支える」という設計思想 を映している。法は失業給付を使い切るより早期再就職が得になるよう給付率を残日数に連動させ、再就職後の賃金低下を定着手当で補い、就職が困難な人には別の手当を用意した。早く動くほど、そして続けられるように ── どれも「次の一歩を踏み出す人が、その勇気をためらわずに済む」ことを実現するための仕組みだ。シカクエが「仕組みで攻略する」と伝えているのは、こうした趣旨ごと理解すると、暗記が記憶として根づき、応用が利くようになるからだ。
就業促進手当の総整理
ここまでを整理する。第1に体系(再就職手当・就業促進定着手当・常用就職支度手当/就業手当は令和7年4月1日廃止・56条の3)、第2に再就職手当(支給残日数3分の1以上/給付率3分の2以上70%・3分の1以上3分の2未満60%/申請1か月以内)、第3に定着手当と支度手当(定着手当=6か月雇用+賃金低下/支度手当=就職困難者・支給残3分の1未満等)。この軸を順に当てはめれば安定して解ける。
よくある間違い・注意点
間違いパターン1: 「再就職手当の給付率は支給残日数にかかわらず一律である」
これは誤り。再就職手当の給付率は支給残日数が所定給付日数の3分の2以上で70%、3分の1以上3分の2未満で60%である。一律と取り違えない。
間違いパターン2: 「就業手当は現在も支給されている」
これも誤り。就業手当(安定した職業以外への就業への給付)は令和7年4月1日に廃止された。現在も支給されていると取り違えない。
就業促進手当は再就職手当・就業促進定着手当・常用就職支度手当(就業手当は令和7年4月1日廃止)。再就職手当は支給残日数3分の1以上・給付率70%/60%。定着手当は6か月雇用+賃金低下。「給付率一律」「就業手当は現存」「定着手当は要件なし」はいずれも誤り。
間違いパターン3: 「就業促進定着手当は再就職手当を受けていなくても支給される」
これも誤り。就業促進定着手当は再就職手当の支給を受けた者が、同一事業主に6か月以上雇用され、再就職後6か月の賃金が離職前を下回る場合に支給される。再就職手当の受給が前提である点を取り違えない。
似た用語との違い
高年齢雇用継続給付 の高年齢再就職給付金と再就職手当は双方該当ならいずれか一方を選択、就業促進手当は早期再就職そのものを後押しする給付 ── 高齢者の賃金補填か早期再就職の促進かが違う、と並べて押さえると混ざらない。
試験での出題パターン
完全自作のオリジナル問題で確認する。過去問そのままではない。
オリジナル問題1(基本論点)
雇用保険法の就業促進手当に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 就業促進手当は失業の認定を受けた日について日々支給される給付である
- 就業促進手当は離職前に在職したまま受給できる継続的な給付である
- 就業促進手当は再就職手当等からなり就業手当は令和7年に廃止された
- 就業促進手当は基本手当を受け切った後にのみ支給される給付である
解答は 3 だよ。
体系と就業手当廃止を問う基本論点なんだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 早期再就職へ |
| 2 | ✗ | 再就職が前提 |
| 3 | ✓ | 就業手当廃止 |
| 4 | ✗ | 残日数あるうち |
再就職手当等の体系・就業手当は令和7年廃止——ここを固めるのが第一歩だよ。
オリジナル問題2(応用論点)
再就職手当に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 支給残日数が3分の2以上で70%・3分の1以上3分の2未満で60%である
- 給付率は支給残日数にかかわらず一律で50%に固定された割合である
- 支給残日数が所定給付日数の10分の1以上残っていれば必ず支給される手当である
- 再就職手当は安定した職業以外の就業に対して支給される手当である
解答は 1 だっ。
支給残日数と給付率を問う応用論点だっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 70%か60% |
| 2 | ✗ | 残日数で変動 |
| 3 | ✗ | 3分の1以上 |
| 4 | ✗ | 安定職が対象 |
3分の2以上70%・3分の1以上60%——区別で見るのが要だっ!
オリジナル問題3(特殊論点:定着手当・支度手当)
就業促進定着手当・常用就職支度手当に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 就業促進定着手当は再就職手当を受けていなくても支給される手当である
- 常用就職支度手当は支給残日数が3分の2以上の者に限る手当である
- 就業促進定着手当は再就職後の賃金上昇を条件に支給される手当である
- 就業促進定着手当は再就職手当受給者が6か月雇用され賃金低下で支給
解答は 4 である。
定着手当の要件を問うものである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 受給が前提 |
| 2 | ✗ | 就職困難者 |
| 3 | ✗ | 賃金低下要件 |
| 4 | ✓ | 6か月+低下 |
再就職手当受給者が6か月雇用+賃金低下と押さえるのが肝要である。
まとめ
就業促進手当は、早期再就職を後押しする、雇用保険法56条の3の就職促進給付。体系と就業手当の廃止/再就職手当/就業促進定着手当と常用就職支度手当 ── この三軸を押さえれば、体系問題も給付率問題も安定して解ける。
押さえどころ3つ
- 体系と就業手当の廃止: 再就職手当・就業促進定着手当・常用就職支度手当からなる(56条の3)/安定した職業以外への就業に対する就業手当は令和7年4月1日に廃止
- 再就職手当: 待期経過後に安定した職業に就き支給残日数が所定給付日数の3分の1以上/給付率は支給残日数3分の2以上で70%・3分の1以上3分の2未満で60%/支給残日数×給付率×基本手当日額・申請は就職日の翌日から1か月以内
- 就業促進定着手当と常用就職支度手当: 定着手当は再就職手当受給者が同一事業主に6か月以上雇用され再就職後6か月の賃金が離職前を下回る場合の追加(上限は原則 基本手当日額×支給残日数×20%)/常用就職支度手当は就職困難者が対象(支給残日数3分の1未満等・原則90日×40%×基本手当日額)
次に学ぶべき関連用語
就業促進手当をつかんだら、要件の基礎となる 所定給付日数 を読み返し、再就職手当と選択になる 高年齢雇用継続給付 の再就職給付金と、就職の前提となる 待期・給付制限 を確かめると、就職促進給付の全体像が立体的になる。
論点を一つずつ積み上げれば、見える景色は確かに変わっていく。就業促進手当は就職促進給付の中核。ここを越えれば、移転費や求職活動支援費の各論点が順につながって見えてくる。
学習の進め方の目安
就業促進手当を自分のものにできたかは、次の三つの問いで確かめられる。「再就職手当・就業促進定着手当・常用就職支度手当の体系と就業手当の令和7年4月1日廃止を述べられるか」「再就職手当が支給残日数3分の1以上で給付率70%・60%であることを説明できるか」「就業促進定着手当の6か月雇用・賃金低下要件を区別できるか」。即答できなければ、該当のセクションに戻ればいい。戻ることは後退ではなく、定着への近道になる。
執筆: SikakuQuest編集部