遺族厚生年金とは(全体像)
家計を支えてきた人が亡くなったあとも、残された家族が暮らしを立て直していけるように、基礎年金(遺族基礎年金)に報酬に応じた保障を上乗せするのが遺族厚生年金。
押さえるのは3点。
- いくら … 死亡した人の報酬比例部分の4分の3(報酬比例部分そのものではない)。
- 誰が … 遺族は配偶者・子・父母・孫・祖父母。第1順位は配偶者と子で、先順位がいれば後順位は出ない。
- いつまで … 原則は続くが、子のない30歳未満の妻は5年で終わる。
遺族になるには、いずれも死亡した人に生計を維持されていたことが前提。妻には年齢要件がないが、夫・父母・祖父母は死亡当時55歳以上で、支給は原則60歳からとなる。
詳しく:額・順位・要件を表でつかむ
ここが心臓部。「いくら・誰に・どんな要件で」は次の表に全部つまっている。
遺族厚生年金の全体像
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 額 | 死亡した人の報酬比例部分の4分の3 |
| 遺族の順位 | 第1順位:配偶者と子 → 父母 → 孫 → 祖父母 |
| 受給 | 先順位がいれば後順位には出ない |
| 短期要件 | 在職中の死亡など3類型・300月みなしで計算 |
| 長期要件 | 老齢厚生の受給権者/加入25年以上の死亡・実期間で計算 |
| 30歳未満の妻 | 子がいなければ5年の有期支給 |
押さえどころは、①額は4分の3(全額ではない)、②第1順位は配偶者と子で先順位のみ受給、③子のない30歳未満の妻は5年で終わる、の3つ。
短期要件は3類型ある。①在職中(被保険者)の死亡、②加入中に初診のある傷病で初診から5年以内の死亡、③障害等級1・2級の障害厚生年金の受給権者の死亡。いずれも加入期間が300月未満でも300月とみなして計算する。長期要件(老齢厚生の受給権者や加入25年以上の死亡)は実際の加入期間で計算する。
加えて、遺族厚生年金は遺族基礎年金と一緒に受けられ、一定の妻には中高齢寡婦加算が上乗せされる(加算額は年度ごとに改定)。
わかりやすく言い換えると
要するに「厚生年金に入っていた人が亡くなると、その家族に報酬比例部分の4分の3が出る」しくみ。
受け取れる家族には順番があって、まず配偶者と子、いなければ父母 → 孫 → 祖父母。つまり先の順位の人がいる間は、後ろの順位の人には回ってこない。そして子のいない30歳未満の妻だけは、5年でいったん区切られる。
試験のツボ
🔴 一番出る:額は報酬比例部分の4分の3
①報酬比例部分そのものではない
②その4分の3が遺族厚生年金の額
🔴 次に出る:遺族の順位は先順位のみ受給
①第1順位は配偶者と子(次に父母 → 孫 → 祖父母)
②先順位がいる間は後順位には出ない
🟡 押さえると安定:30歳未満の妻と短期要件
①子のない30歳未満の妻は5年の有期支給
②短期要件(在職中の死亡など3類型)は300月みなしで計算
よくある間違い
①「額は報酬比例部分の全額」→ ✗ 遺族厚生年金の額は報酬比例部分の4分の3。全額ではない。
②「どの遺族も一律に終身でもらえる」→ ✗ 子のない30歳未満の妻は5年の有期支給(2007年4月から有期化)。
③「先順位がいても後順位にも同時に出る」→ ✗ 先順位の遺族がいる間は、後順位の遺族には支給されない。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(額)
遺族厚生年金の額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 遺族厚生年金の額は、死亡した人の報酬比例部分の全額がそのまま遺族に支給される取扱いである
- 遺族厚生年金の額は、死亡した人の老齢基礎年金の額の2分の1に相当する額とされる取扱いである
- 遺族厚生年金の額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当するものとされる
- 遺族厚生年金の額は、遺族の人数にかかわらず全員に一律の定額が支給されるものとされる取扱いである
解答は 3 だよ。
額は死亡した人の報酬比例部分の4分の3。報酬比例部分そのもの(全額)ではないんだ。
選択肢1の「全額」、選択肢2の「老齢基礎の2分の1」、選択肢4の「一律定額」は、いずれも誤りだよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 全額ではなく4分の3である |
| 2 | ✗ | 基準は報酬比例部分で老齢基礎ではない |
| 3 | ✓ | 報酬比例部分の4分の3で正しい |
| 4 | ✗ | 報酬比例の年金で一律定額ではない |
オリジナル問題2(遺族の順位)
遺族厚生年金の遺族の順位に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 遺族厚生年金は、先順位の遺族がいても後順位の遺族へ常に同時に支給されるものとされる取扱いである
- 遺族厚生年金の遺族は、第1順位が配偶者と子で、先順位者があれば後順位者には支給されないものとされる
- 遺族厚生年金の遺族の範囲は、死亡した人の配偶者にかぎられ、子や父母は含まれないとされる取扱いである
- 遺族厚生年金の遺族の順位は、孫と祖父母が配偶者や子よりも常に優先されるものとされる取扱いである
解答は 2 だっ。
遺族は配偶者・子・父母・孫・祖父母で、第1順位は配偶者と子。先順位の人がいる間は、後順位の人には出ないんだっ。
選択肢1の「同時に支給」、選択肢3の「配偶者だけ」、選択肢4の「孫・祖父母が優先」は、いずれも誤りだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 先順位がいれば後順位には出ない |
| 2 | ✓ | 第1順位は配偶者と子・先順位のみ受給 |
| 3 | ✗ | 子や父母なども遺族に含まれる |
| 4 | ✗ | 配偶者と子が先で孫・祖父母は後 |
オリジナル問題3(30歳未満の妻)
子のない30歳未満の妻の遺族厚生年金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 子のない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は、現在もなお改正前のとおり一律に終身で支給される
- 子のない30歳未満の妻には、遺族厚生年金そのものがはじめからいっさい支給されないものとされる
- 子のない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は、10年間の有期支給と法で定められている取扱いである
- 子のない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は、5年間の有期支給とされ、終身ではない取扱いである
解答は 4 である。
子のない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は、5年間の有期支給である(2007年4月から有期化された。それまでは終身だった)。
選択肢1の「終身のまま」、選択肢2の「はじめから不支給」、選択肢3の「10年」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 終身ではなく5年の有期に改められた |
| 2 | ✗ | 5年間は支給される |
| 3 | ✗ | 10年ではなく5年である |
| 4 | ✓ | 5年間の有期支給で正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 額 = 死亡した人の報酬比例部分の4分の3(全額ではない)。
- 🔴 遺族の順位 = 第1順位は配偶者と子(次に父母 → 孫 → 祖父母)。先順位がいれば後順位には出ない。
- 🟡 30歳未満の妻と短期要件 = 子のない30歳未満の妻は5年の有期。短期要件は300月みなしで計算。
次に学ぶ
- 遺族基礎年金 ── 国民年金の土台の遺族給付。遺族厚生年金と一緒に受けられる。
- 報酬比例部分 ── 遺族厚生年金の額(4分の3)の計算のもとになる部分。
- 中高齢寡婦加算 ── 一定の妻に上乗せされる加算。あわせて押さえると厚みが出る。
執筆: SikakuQuest編集部