社労士の勉強、最初の1ヶ月でやること

公開: 更新: カテゴリ: 学習法・キャリア

まず、勉強より先に「制度の確認」

意外に思うかもしれませんが、最初の1ヶ月でいちばん先にやるべきは、参考書を開くことではありません。受験そのものに関わる制度の確認です。

具体的には三つ。自分が受験資格のどの区分(学歴・実務経験・国家資格合格)に当てはまるか。その証明にどんな書類が要るか。そして、年間の流れ(官報公示→受験申込→試験→合格発表)の順序です。

なぜこれを最初に置くのか。社労士試験は年に一度で、申込の期間も決まっています。受験資格の証明書類は、学校や勤務先に発行を依頼することがあり、取り寄せに時間がかかります。勉強だけ進めて、この事務を直前に始めると、間に合わずに一年がずれることがあるんです。

ここは、勉強の前にやる「土台の確認」と捉えてください。一度確認してしまえば、あとは安心して学習に集中できます。最初の1ヶ月のうち、ほんの一部の時間をここに使うだけで、後半の不安がぐっと減ります。

やり方も難しくありません。試験の公式情報で受験資格の区分を見て、自分の学歴・職歴・保有資格がどれに当てはまりそうかを照らし合わせる。当てはまりそうな区分が分かったら、その区分に必要な証明書類が何かをメモしておく。これだけで、初月にやるべき制度確認は、ほぼ片づきます。

判断に迷う部分が出てきても、そこで止まらなくて大丈夫です。「ここは要問い合わせ」と印をつけて、学習と並行して確かめていけばいい。完全に解決してから勉強を始めようとすると、かえって着手が遅れます。確認は進めつつ、勉強も始める。この並行が、初月の正しい歩き方です。

個人的には、ここを後回しにしないことが、初月でいちばん費用対効果の高い行動だと思っています。地味ですが、合否ではなく「受験できるかどうか」に関わる部分だからです。


次に、試験の「全体像」を俯瞰する

制度の確認ができたら、次は試験そのものの全体像をつかみます。細部の暗記に入る前に、地図を広げる段階です。

押さえておきたいのは二つ。一つは、選択式8科目・択一式7科目という構成。もう一つは、総得点の基準点に加えて、各科目に基準点があるという仕組みです。この二つを最初に知っておくと、「なぜ全科目に手を入れる必要があるのか」が腑に落ちます。

科目別基準点があるという仕組みを最初に知っているかどうかで、学習設計が変わります。知らないと「得意科目を伸ばせばいい」と進めてしまい、後で苦手科目の基準点に直面する。先に全体像を持っておくと、最初から「全科目を置き去りにしない」方針で組めます。

このとき、科目の地図も一緒に眺めておきます。社労士の科目は、働くことに関わる「労働科目群」と、保険・年金に関わる「社会保険科目群」に大きく分けられます。徴収法は労災・雇用と、国民年金は厚生年金と関係が深い、といったつながりも、ざっくりで構わないので見ておく。

ここで完璧に理解する必要はありません。「こういう地図の試験なんだ」と輪郭をつかむだけで十分です。地図を持ってから歩き出すのと、地図なしで歩き出すのとでは、同じ一歩でも迷いの量が違います。初月にやる「俯瞰」は、その後の数か月の効率を左右する投資なんです。

俯瞰のやり方も、大げさに考えなくて構いません。テキストや講座の目次を、最初に一度ゆっくり眺める。それだけでも、科目の数と並び、どのあたりにどんな話が来るかが頭に入ります。目次は、いちばん手軽な「試験の地図」です。中身に入る前に、まず目次で全体の形を見ておく——この一手間が、後で効いてきます。

もう一つ、全体像を持つと得られるのが「現在地が分かる」効果です。地図がないと、進んでいても終わりが見えず不安になりやすい。けれど「労働科目群を見ている」「次は社会保険科目群」と現在地が言えると、同じ進度でも手応えが変わります。範囲が広い試験ほど、この効果は続ける力に直結します。


そして、「1科目を薄く一周」してみる

制度と全体像を確認したら、いよいよ中身に入ります。ここでの合言葉は、「完璧に」ではなく「薄く一周」です。

最初の1ヶ月で全科目を完全に覚えようとすると、ほぼ確実に息切れします。そうではなく、まず1科目を選び、条文の趣旨・主要な用語・どんな形で問われるかを、大まかに通してみる。細かい数字や例外を全部固定するのは、この段階ではありません。

初月の重心の置き方

やること重心
制度の確認受験資格・書類・年間の流れ
全体像の俯瞰科目構成・基準点・科目の地図
1科目を薄く一周完璧でなく「輪郭をつかむ」

薄く一周する目的は、知識を完成させることではありません。「この試験は、どのくらいの粒度で、どんな問われ方をするのか」を体感することです。一周してみると、「思ったより条文の言い回しが問われる」「数字より仕組みの理解が要る」といった感触がつかめます。その感触が、二周目以降の精度を上げてくれます。

ここで大事なのは、進み方を論点単位に小さく刻むこと。たとえば労働基準法なら「労働時間」「休日」「賃金」、健康保険法なら「被保険者」「保険給付」というように、科目をさらに小さなまとまりに分ける。一回の学習を小さくしておくと、生活の波があっても止まりにくく、どこに穴があるかも見えやすくなります。

どの科目から薄く一周するか、で迷う必要もありません。唯一の正解はなく、関心を持てそうな科目や、仕事や生活でなじみのある分野から入って構わない。最初の科目選びに時間をかけて止まるより、選べる範囲でさっと決めて動き出すほうが、初月の趣旨に合っています。

そして、一周し終えても「ほとんど覚えていない」と感じるのが普通です。それは失敗ではなく、薄く一周の設計どおりの状態です。初月で覚えるのではなく、初月は「これから何度も戻ってくる地図」を作る——そう捉えておくと、覚えていないことに不安を感じずに済みます。


早めに「解く学習」にも触れておく

最後にもう一つ、初月のうちにやっておくと差がつくことがあります。それは、過去問など「解く学習」に早めに触れておくことです。

テキストを読んで「分かった」と感じることと、選択肢の正誤を判断したり空欄を埋めたりできることは、別の能力です。読む学習だけを続けると、できるつもりのまま本番形式でつまずく、ということが起きます。

学習法の一般的な知見でも、読み返すより、思い出して答える練習のほうが記憶に残りやすい、と言われています。難しく考えなくて大丈夫です。一周した範囲について、本を閉じて「さっきのはどういう仕組みだった?」と自分に問い直す。これだけでも、立派な「解く学習」になります。

この「思い出す」を初月から軽く混ぜておくと、二周目の景色が変わります。一周目で「読んで分かったつもり」だった部分が、思い出そうとすると意外に出てこない。その「出てこない場所」こそ、本当はまだ理解が浅いところです。早い時期にそれが見えると、二周目で時間をかけるべき場所が、自分で分かるようになります。

逆に、解く学習を後半まで一切しないと、「分かったつもり」のまま時間だけが過ぎてしまいます。初月の段階で完璧に解ける必要はありません。ただ「読むだけで止めない」という習慣の芽を、最初の月に小さく植えておく。それだけで、後の伸び方がなだらかになります。

最初の1ヶ月は、完璧な暗記ではなく「制度確認 → 全体像の俯瞰 → 1科目を薄く一周 → 解く学習に少し触れる」。完成度より方向づけを優先する月です。論点単位に小さく刻み、読むだけで終わらせず、思い出して答える練習を早めに混ぜる——これが二周目以降を軽くします。

ただし、初月から高い正答率を出す必要はまったくありません。目的は点を取ることではなく、「何が、どんな表現で問われるか」「自分はどこで迷うか」を知ること。むしろ、早い時期にたくさん間違えておくほうが、後の学習の地図が正確になります。間違いは、初月にこそ歓迎していいものなんです。

  • 初月の最優先は勉強より「制度の確認」(受験資格・書類・年間の流れ)
  • 次に試験の全体像(科目構成・科目別基準点・科目の地図)を俯瞰する
  • 中身は「完璧」でなく「1科目を薄く一周」、論点単位に小さく刻む
  • 早めに「解く学習」に触れ、読むだけで終わらせない
  • 初月は完成度でなく方向づけが目的。間違いはむしろ歓迎
  • 教材を完全に揃えてから、と先延ばししない

最初の1ヶ月は、走る速さを競う期間ではありません。地図を広げ、装備を確認し、最初の一歩の方向を定める期間です。完璧を目指して固まるより、薄くてもいいから動き出す。その一歩さえ踏み出せれば、二か月目からの道は、ずっと歩きやすくなります。


理解度チェック

ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。

📝 オリジナル問題 1 初月の最優先

社労士学習の最初の1ヶ月で、最も先に置くべきことはどれか。

  1. 全科目の細かい数字を完璧に暗記する
  2. 受験資格や年間の流れなど制度の確認
  3. 模試で高い得点を取ることを目指す
  4. 一科目だけを試験直前まで深掘りする
ロウタイテイ
ロウタイテイ 解答・解説

解答は 2 である。

年1回で申込期間や証明書類の準備に時間が要るため、初月はまず受験資格・必要書類・年間の流れという制度の確認を先に置くのが現実的である。

選択肢判定理由
1✗ 誤り初月に完璧暗記は息切れ
2✓ 正解制度の確認を最優先に
3✗ 誤り初月は得点目的でない
4✗ 誤り一科目深掘りは不整合
📝 オリジナル問題 2 中身の進め方

初月に試験の中身へ入るときの進め方として、適切なものはどれか。

  1. 1科目を完璧に固め切ってから次科目へ進む
  2. 全科目を同時に完全暗記しようと試みる
  3. 過去問は全範囲を学び終えてから始める
  4. 1科目を薄く一周し論点単位に小さく刻む
ロウタイテイ
ロウタイテイ 解答・解説

解答は 4 である。

初月は完成度より方向づけが目的。1科目を薄く一周して輪郭をつかみ、論点単位に小さく刻んで進めると、止まりにくく穴も見えやすい。

選択肢判定理由
1✗ 誤り初月に完璧固めは停滞
2✗ 誤り全科目同時暗記は息切れ
3✗ 誤り解く学習は早めに触れる
4✓ 正解薄く一周し小さく刻む
📝 オリジナル問題 3 解く学習

「解く学習」に早めに触れる意義として、的確なものはどれか。

  1. 読む学習と解く学習は別の負荷がある
  2. 初月から高得点を必ず取る必要がある
  3. 過去問は全暗記の後にだけ解くべきだ
  4. 間違いは初月には避けるべき失敗である
ロウタイテイ
ロウタイテイ 解答・解説

解答は 1 である。

読んで分かることと、選択肢の正誤判断や空欄補充ができることは別の能力。早めに解く学習へ触れ、間違いから迷いどころを知ることに意義がある。

選択肢判定理由
1✓ 正解読むと解くは別の負荷
2✗ 誤り初月は高得点目的でない
3✗ 誤り早めに触れる意義がある
4✗ 誤り初月の間違いは歓迎

最初の1ヶ月の置き方が見えて、分厚い本の前で固まる段ではなくなったなら、編集部としてはとても嬉しいです。

最初の1ヶ月から「解く学習」を薄く混ぜておきたい方には、シカクエで思い出す一問練習を挟む使い方が合います。一周した範囲の確認を、毎日少しずつ。

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もちろん、まずは手持ちの一冊で、一科目を薄く一周してみるのも確かな一歩です。完璧な計画ができてから動くのではなく、動きながら計画を整えていく——初月は、その姿勢を体に覚えさせる期間でもあります。最初の1ヶ月は、完成度を競う月ではなく、方向を定める月。制度を確認し、地図を広げ、薄く動き出す。その順番さえ持っていれば、最初の一歩は、もう固まる対象ではなくなります。

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