社労士は覚える量が多い? 忘れる前提でつくる復習の設計

公開: 更新: カテゴリ: 学習法・キャリア

「忘れる」のは、覚え方が悪いからではない

最初に、いちばん大事なことを置きます。覚えたことを忘れるのは、あなたの覚え方が悪いからではありません。

社労士試験は、範囲が労働社会保険の諸法令と広く、扱う量が多い試験です。量が多ければ、一度通っただけのものは、時間とともに薄れます。これは記憶力の問題ではなく、量の多い学習に必ず伴うことです。

ここを「自分は記憶力が悪いから向いていない」と取り違えると、不安に不安が重なります。原因を自分の頭のせいにすると、解決から遠ざかる。原因は記憶力ではなく、「忘れる前提で戻る設計がまだない」というところにあります。

だからこの先で見ていくのは、「忘れない覚え方」ではありません。忘れることを前提に、戻って取り戻す復習の置き方です。シカクエは、その置き方の一つとして、あなたを評価する側ではなく、横で並走する側に立ちます。

少し補足します。「忘れてしまった」と気づくこと自体を、失敗だと思わなくていいんです。忘れに気づくのは、戻るべき場所が分かったということ。むしろ、復習の出発点になります。

これは「気の持ちよう」とは違います。気持ちで忘却に抗うのではなく、忘れる前提に学習のほうを合わせる。仕組みの話です。

もう一つ補足します。忘れたことを「やり直し」と捉えなくていいんです。二度目に戻ったときは、ゼロからではなく、一度通った道を歩き直しています。まっさらより、はるかに速く進めます。

個人的には、「一度で完全に覚えよう」としないことが、いちばん大事だと思っています。一度で決めようとするほど、忘れたときの落ち込みが大きくなる。戻る前提なら、忘れても落ち着いていられます。


設計1:間隔をあけて「戻る」

忘却と付き合う、最初の設計です。それは、一度やった範囲に、間隔をあけてもう一度戻ることです。

一度学んだだけで先に進み続けると、後ろのほうから静かに薄れていきます。進んでいるのに手応えが減っていく——この感覚が、暗記量への不安をいちばん大きくします。逆に、間隔をあけて戻る道筋があると、薄れても取り戻せると分かっているので、不安は小さくなります。

学んだ範囲に、後でもう一度戻る——その予定が組まれているだけで、「忘れたらどうしよう」は「忘れても戻れる」に変わります。完璧に覚え続ける必要はありません。戻る予定があること自体が、暗記量に対する安心の土台になります。

やり方は難しくありません。新しい範囲を進めつつ、少し前にやった範囲へ定期的に立ち寄る——その程度で十分です。完璧な復習計画ではなく、「戻る道がある」状態であれば、役割は果たせます。

戻り方の形に正解はありません。前の範囲をざっと見直す、前に解いた問題をもう一度解く——自分が「思い出せた/思い出せない」を確認できれば、それで働きます。

逆に、戻る予定をまったく持たないと、進むほど後ろが不安になり、前にも進みにくくなります。一度で覚えようとする人ほど、この板挟みに入ります。戻る設計は、その板挟みを外す仕組みです。

戻ることのもう一つの効きめは、忘れの程度が見えることです。戻ってみて思い出せれば定着していると分かり、思い出せなければそこを手当てすればいい。どちらでも、次の一手が決まります。

戻る間隔は、きっちり計算しなくて大丈夫です。「少し前にやったところ」を、思い出した頃にもう一度——その感覚で十分働きます。正確な日数より、戻る習慣があることのほうが効きます。

ここで完璧を求めないのもコツです。すべてを均等に戻そうとすると、復習だけで時間が尽きます。戻りは、薄く何度も。深く一度より、続けやすくなります。


設計2:「思い出す」形で確かめる

二つ目は、確かめ方です。読み返すだけでなく、思い出す形で確かめることです。

復習というと、テキストをもう一度読むことを思い浮かべがちです。読み返しは、見たことがある安心感は得られます。ですが、「見れば分かる」と「自分で出てくる」は別のことで、本番で必要なのは後者です。

忘却と付き合う三つの設計

設計中身
間隔をあけて戻る後で戻る予定を先に組む
思い出す形で確かめる読み返しでなく自分で出す
優先を決める戻る順に軽重をつける

だから復習では、見る前に思い出す手順を一段はさみます。問いを見て、答えを見る前に自分で言ってみる。出てこなければ確認する。この「先に思い出そうとする」一手間が、定着のしかたを変えます。

ここで注意したいのは、思い出せなかったことを失敗と捉えないことです。出てこなかった項目は、戻るべき場所が分かった項目です。思い出せない発見は、復習をむしろ前に進めます。

具体的には、一問単位の学習は、この「思い出す形」と相性がよいです。問いに答えようとする時点で、自然に思い出す手順が入るからです。シカクエのような一問ずつの形も、その確かめ方の一つとして使えます。

思い出せたかどうかも、厳しく採点しなくていいんです。だいたい言えた、半分出た——その粗さで十分、戻る場所は分かります。採点を細かくするほど、確かめ自体が重くなって続きません。

そして、思い出す確かめは、短くて構いません。一問、一論点を思い出すだけでも働きます。長く読み返すより、短く思い出すほうが、量の多い社労士では回しやすくなります。


設計3:戻る「優先」を決める

三つ目は、優先です。すべてを同じ重さで戻ろうとせず、戻る順に軽重をつけることです。

社労士は量が多いぶん、全部を均等に復習しようとすると、必ず手が回らなくなります。均等にやろうとして全部が中途半端になる——これが、暗記量に押しつぶされる典型的な入り方です。

覚えたことを忘れるのは記憶力でなく、量の多い学習に伴う自然なこと。忘れない覚え方でなく、忘れる前提の復習を設計する。柱は、(1)間隔をあけて戻る予定を組む、(2)読み返しでなく思い出す形で確かめる、(3)戻る順に優先をつける。一度で覚えようとせず、戻れる形を持つ。

だから、戻る対象に優先をつけます。よく問われるところ、自分が思い出せなかったところから先に戻る。全部を一周そろえることより、効くところに早く戻ることを優先します。

優先のつけ方は難しくありません。思い出せなかった項目に印を残し、次はそこから戻る——その程度で十分です。立派な分類ではなく、「次どこへ戻るか」が決まっていれば、役割は果たせます。

ここで「全部やらないと不安」を手放すのも大事です。全部に同じ時間をかけることは、量の多い試験では現実的ではありません。優先を決めることは、手を抜くことではなく、限られた時間を効くところへ向けることです。

優先のもう一つの効きめは、復習が終わらない不安が小さくなることです。「次はここへ戻る」が決まっていれば、終わりの見えなさに飲まれずに済みます。順番があるだけで、量は扱える大きさに変わります。

優先は、固定しなくてかまいません。戻ってみて定着していた項目は、優先を下げて間隔を広げる。まだ薄い項目は、優先を上げて早めに戻る。優先は、進み具合に合わせて動かしていいものです。

そして、これは「要領よく省く」話ではありません。省く話ではなく、戻る力を効くところに集める話です。集めれば、量が多くても前に進めます。


暗記量は、「戻る設計」で扱える大きさになる

最後に、ここまでをまとめます。社労士の暗記量が多いことは、事実です。ですが、量が多いことと、覚えきれないことは、別の話です。

戻る予定がなく、思い出す確かめもなく、優先もない——この三つが欠けると、量はそのまま不安になります。逆に、この三つを設計として置けば、同じ量が「戻りながら扱える大きさ」に変わります。差は記憶力ではなく、設計の有無です。

言い換えると、覚えきれるかどうかは「頭の良さ」ではなく「復習の設計」で決まります。だから、記憶力を変えられなくても、設計を足すことで対処できる。これは、生まれ持ったものに左右されにくい、という意味で心強い事実です。

三つは、いっぺんに完璧に揃えなくて構いません。まず戻る予定だけ、次に思い出す確かめを一つ、と順に足していけばいい。設計は、最初から完成形を作るものではなく、走りながら継ぎ足していけるものです。

最初に一つ足すなら、いちばん軽い「戻る予定」からで十分です。一つ置けたという事実が、次の一つを足す土台になります。暗記量と付き合う設計も、結局は小さく始めて積み上げる、という学習そのものと同じやり方で組めます。

  • 覚えたことを忘れるのは記憶力でなく、量の多い学習に伴う自然なこと
  • 忘れない覚え方でなく、忘れる前提の復習を設計する
  • 設計1=間隔をあけて戻る(戻る予定があるだけで安心が生まれる)
  • 設計2=思い出す形で確かめる(読み返しでなく自分で出す)
  • 設計3=戻る優先を決める(均等でなく効くところへ先に)
  • 暗記量は、戻る設計で「扱える大きさ」に変わる

だから、「覚える量が多いから」を理由に入口で止まらなくて大丈夫です。問うべきは「全部覚えきれるか」ではなく、「忘れる前提で戻る設計を置けるか」。その設計は、才能ではなく手順です。シカクエは、その手順のなかの「思い出して確かめる一問」として、隣に居続けます。


理解度チェック

ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。

📝 オリジナル問題 1 忘れることの捉え方

社労士で覚えたことを忘れることについて、この内容の捉え方はどれか。

  1. 量の多い学習に伴う自然なことで戻る設計で扱う
  2. 覚えたことを忘れるのは本人の記憶力が劣っている証拠だ
  3. 忘れるのは覚え方が悪いので覚え直すしかない
  4. 忘れやすい人は社労士に向かないので見送るとよい
ロウタイテイ
ロウタイテイ 解答・解説

解答は 1 である。

社労士は範囲が広く量が多く、一度通っただけのものが薄れるのは自然なこと。記憶力や覚え方の問題ではなく、忘れる前提で戻る復習の設計で扱うものとして捉える。

選択肢判定理由
1✓ 正解自然・設計で扱う
2✗ 誤り記憶力の問題ではない
3✗ 誤り覚え方の問題ではない
4✗ 誤り設計で続けられる
📝 オリジナル問題 2 確かめ方

復習での確かめ方として、この内容が示した考え方はどれか。

  1. テキストをくり返し読み返して見覚えを増やすことだけを行う
  2. 答えを見る前に自分で思い出す手順を一段はさむ
  3. 思い出せなかった項目は失敗なので記録から外す
  4. 確かめは必ず長い時間をかけて行わないと意味がない
ロウタイテイ
ロウタイテイ 解答・解説

解答は 2 である。

「見れば分かる」と「自分で出てくる」は別で、本番で要るのは後者。答えを見る前に思い出す手順を一段はさむのが趣旨で、思い出せない発見は失敗でなく復習の出発点である。

選択肢判定理由
1✗ 誤り読み返しだけでは弱い
2✓ 正解先に思い出す手順
3✗ 誤り失敗ではなく出発点
4✗ 誤り短くても働く
📝 オリジナル問題 3 戻る優先

量の多い社労士で「戻る優先」をどう扱うか、正しい理解はどれか。

  1. すべての範囲を完全に同じ重さで均等に戻すのがよい
  2. 優先をつけるのは手を抜くことなので避けるべきだ
  3. 効くところ・思い出せなかったところから先に戻る
  4. 復習は不要で新しい範囲だけを進め続ければよい
ロウタイテイ
ロウタイテイ 解答・解説

解答は 3 である。

量が多いぶん均等復習は手が回らなくなる。よく問われるところ・思い出せなかったところから先に戻るのが趣旨で、優先づけは手抜きでなく限られた時間を効くところへ向けることである。

選択肢判定理由
1✗ 誤り均等では回らない
2✗ 誤り手抜きではない
3✓ 正解効くところへ先に
4✗ 誤り復習は必要

覚える量の多さは、忘れる前提の設計で扱える、と見えたなら、編集部としてはとても嬉しいです。

「思い出して確かめる」を毎日の習慣に組み込みたいと考えるなら、シカクエは一問開いて閉じるだけの軽さで使えます。戻って確かめる一手を、日々の数分で。

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もちろん、まずは手持ちのテキストの前の範囲に、もう一度戻る予定を一つ決めてみるのも確かな一歩です。社労士の暗記量が多いのは事実ですが、覚えきれないこととは別です。戻る予定・思い出す確かめ・戻る優先——三つの設計を置いておけば、量の多さも、扱える大きさに変わります。

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