相続税はいくらからかかるか。基礎控除と配偶者軽減の活用判定

公開: 更新: カテゴリ: 相続税法

相続税はいくらからかかる?理解する3つの軸

相続税の話は、3つの軸で整理できます。

  • 基礎控除: 3000万円+600万円×法定相続人数(相続税法15条)
  • 配偶者税額軽減: 1億6千万円または法定相続分まで非課税(相税19条の2)
  • 申告期限: 相続開始を知った日から10か月以内(相税27条)

ここがポイント。相続税の8割超は『基礎控除でそもそも申告不要』 ということ——日本の相続税は実際には課税対象が限定されています。

それから、2015年改正で基礎控除が4割縮小——課税対象者が大幅に増え、相続税は「金持ちだけの税」から「広く家族に関わる税」になりました。

なぜそう言えるのか、3つの軸を順番に見ていきます。


いくらまで非課税?——基礎控除(課税ライン)

基礎控除の計算式(相税15条)

相続税の基礎控除は、3000万円+600万円×法定相続人数 で計算します。

基礎控除の計算例

法定相続人の数え方

法定相続人の数え方には特別なルールがあります。

  • 配偶者: 必ず法定相続人(法律婚に限る、内縁は対象外)
  • 第1順位: 子(実子・養子)、子の代襲相続人(孫)
  • 第2順位: 父母(祖父母)
  • 第3順位: 兄弟姉妹(甥・姪)
  • 養子の制限: 実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで

基礎控除を超えるかの判定

相続税の 申告要否 は、遺産総額が基礎控除を超えるかで決まります。

状況遺産総額申告要否
法定相続人2人4000万円不要(4200万円控除内)
法定相続人2人5000万円申告必要(控除超過800万円)
法定相続人3人5000万円不要(4800万円控除超でも僅か)
法定相続人3人6000万円申告必要(控除超過1200万円)

遺産総額の計算

遺産総額には以下を含めます。

遺産総額に含まれるもの

トリビア:相続税の基礎控除は2015年改正で『5000万円+1000万円×法定相続人』から『3000万円+600万円×法定相続人』に縮小

相続税の基礎控除は 2015年1月1日改正 で大幅に縮小されました。改正前 は「5000万円+1000万円×法定相続人数」——例えば法定相続人3人なら 5000+3000 = 8000万円 が基礎控除でした。改正後 は「3000万円+600万円×法定相続人数」——同条件で 3000+1800 = 4800万円 に縮小(4割減)。改正の意義 は、課税対象者を約2倍に拡大 したこと——改正前は相続税申告者は約4%でしたが、改正後は約8%超に増加。改正背景 は税収確保と再分配機能の強化、特に都市部の不動産所有者が課税対象に入りやすくなりました。今後の動向 として、2023年改正で生前贈与の加算期間が3年から7年に拡大(2024年〜段階施行)——相続税回避の生前対策が制限される方向に。金持ち税から広く家族に関わる税へ の変化が進んでいます。


配偶者は優遇される?——配偶者税額軽減

配偶者税額軽減(相税19条の2)

配偶者には 特別な税額軽減制度 があります。

配偶者税額軽減の特徴

配偶者税額軽減の活用例

例えば 遺産総額3億円・法定相続人3人(配偶者と子2人) の場合:

配偶者税額軽減の使い方

  • 配偶者が全部取得: 1億6千万円まで非課税
  • 配偶者と子で分割: 配偶者の取り分を1億6千万円まで控除可能
  • 二次相続を考慮: 配偶者死亡時に子が再び相続するため、長期視点が必要
  • 法定相続分以下なら無制限: 1億6千万円超でも法定相続分以下なら非課税
  • 遺産分割の戦略: 配偶者と子の取得割合を税負担最適化で調整

私たちが取材した相続税専門の税理士の話では、「配偶者税額軽減を最大限使うのが必ずしも有利ではない——一次相続で配偶者に全部寄せると、二次相続(配偶者死亡時)で子が高額な相続税を払うことになる場合が多い。長期2回の相続を見据えた分割戦略 が重要」とのこと。


いつまでに申告・納税する?——申告期限と納税方法

申告期限(相税27条)

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内

申告期限の主要ルール

納税方法

相続税は 金銭一括納付が原則。困難な場合は延納・物納制度があります。

納付方法内容
金銭一括納付申告期限までに現金一括(原則)
延納5〜20年の分割払(要担保、利子税あり)
物納不動産・有価証券等で納付(要件厳格)
納税資金準備預貯金・生命保険・退職金等で準備

相続税の節税戦略

  • 生前贈与: 暦年贈与(年110万円非課税)の活用
  • 配偶者税額軽減: 一次相続での適切な活用
  • 生命保険の非課税枠: 500万円×法定相続人数
  • 養子縁組: 法定相続人数を増やす(実子有りなら1人まで)
  • 不動産小規模宅地等の特例: 自宅敷地を80%減額評価可能

実務家の視点から言えば、相続税の節税は『生前対策+一次相続の分割戦略+二次相続の予測』 の3点セットで進めるのが基本——税理士・司法書士・弁護士のチームで取り組む案件です。

  • 相続税の核心は 基礎控除・配偶者軽減・申告期限 の3軸
  • 基礎控除: 3000万円+600万円×法定相続人数(相税15条)
  • 法定相続人2人なら 4200万円、3人なら 4800万円、4人なら 5400万円
  • 法定相続人の 養子は実子有り1人・実子無し2人まで
  • 遺産総額が 基礎控除超 で申告必要
  • 遺産総額に含む: 不動産・預貯金・有価証券・保険金・死亡退職金・生前贈与
  • 死亡前 7年以内の暦年贈与 は遺産に加算(2024年〜段階施行)
  • 生命保険金・死亡退職金には 500万円×法定相続人数の非課税枠
  • 2015年改正 で基礎控除が4割縮小、課税対象者が約2倍に
  • 配偶者税額軽減(相税19条の2): 1億6千万円または法定相続分まで非課税
  • 配偶者軽減の要件: 法律婚+遺産分割確定
  • 未分割でも 申告期限後3年以内の分割で適用可
  • 配偶者軽減を最大化すると 二次相続で子が高税負担 のケース注意
  • 申告期限: 相続開始を知った翌日から10か月以内
  • 提出先は 被相続人の最後の住所地を管轄する税務署
  • 納付は 金銭一括が原則、延納・物納制度あり
  • 節税戦略: 生前贈与・配偶者軽減・保険非課税枠・養子縁組・小規模宅地特例
  • 小規模宅地等の特例: 自宅敷地を80%減額評価可能
  • 相続税は 税理士・司法書士・弁護士のチーム で取り組む案件

理解度チェック

ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。

📝 オリジナル問題 1 相続税の基礎控除

相続税の基礎控除について、正しい説明はどれか。

  1. 基礎控除は3000万円+600万円×法定相続人数で計算するルール
  2. 基礎控除は遺産総額にかかわらず一律で5000万円固定となる扱い
  3. 基礎控除は法定相続人数を考慮せず固定額のみとなる仕組み扱い
  4. 基礎控除は2015年改正で5割拡大され課税対象が縮小された扱い
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 1 である。

相続税の基礎控除は 3000万円+600万円×法定相続人数 で計算される(相税15条)。法定相続人1人 なら 3600万円、2人 なら 4200万円、3人 なら 4800万円、4人 なら 5400万円、5人 なら 6000万円。遺産総額が基礎控除を超える場合 に相続税の申告が必要——超えなければ申告不要。法定相続人の数え方: 配偶者は必ず法定相続人(法律婚に限る)。第1順位が子、第2順位が父母、第3順位が兄弟姉妹。養子の制限: 実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで——基礎控除を膨らませる目的の養子は制限される。2015年1月1日改正 で基礎控除が 5000万円+1000万円×法定相続人数から3000万円+600万円×法定相続人数に縮小(4割減)——課税対象者が約2倍に拡大した。遺産総額 には不動産・預貯金・有価証券・受取人指定の生命保険金・死亡退職金・死亡前7年以内の生前贈与が含まれる。

選択肢判定理由
1✓ 正解基礎控除の正しい仕組み
2✗ 誤り計算式あり
3✗ 誤り法定相続人考慮
4✗ 誤り4割縮小

3000万円+600万円×法定相続人——これが基礎控除の核心なのである。

📝 オリジナル問題 2 配偶者税額軽減

配偶者税額軽減について、正しい説明はどれか。

  1. 配偶者税額軽減は5000万円までで超過分は全額課税の原則扱い
  2. 配偶者税額軽減は事実婚の配偶者にも当然適用される原則扱い
  3. 1億6千万円または法定相続分以下まで配偶者は無税となる
  4. 配偶者税額軽減は遺産分割完了前は一切適用されない扱い
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 3 である。

配偶者税額軽減(相税19条の2)は、配偶者の取得財産が 1億6千万円まで または 法定相続分以下 なら 相続税が課されない 制度——配偶者の老後生活保障と再分配機能を意識した設計。要件: 法律婚の配偶者(事実婚は対象外)。遺産分割が申告期限までに確定 していること——未分割の場合は 申告期限後3年以内の分割で適用可 という特例もある。: 遺産総額3億円・法定相続人3人(配偶者と子2人)なら、基礎控除4800万円を引いた課税遺産2億5200万円のうち、配偶者法定相続分1億2600万円は1億6千万円以下なので 配偶者の相続税負担0円1億6千万円超 でも法定相続分以下なら無制限に非課税。注意点 として、二次相続(配偶者死亡時)で子が高額な相続税を払うリスク ——一次相続で配偶者に全部寄せるのが必ずしも有利ではない。長期2回の相続を見据えた分割戦略 が実務上は重要で、税理士の試算が決定的な意味を持つ。

選択肢判定理由
1✗ 誤り1億6千万円
2✗ 誤り法律婚のみ
3✓ 正解配偶者軽減の正しい仕組み
4✗ 誤り3年以内分割で適用可

1億6千万円+法定相続分——これが配偶者軽減の核心なのである。

📝 オリジナル問題 3 申告期限と納税方法

相続税の申告と納税について、正しい説明はどれか。

  1. 申告期限は相続開始から1年以内で延長は認められない原則扱い
  2. 相続開始を知った翌日から10か月以内・延納や物納の制度あり
  3. 相続税は必ず物納が原則となる仕組みとなる法定の制度扱い
  4. 申告期限超過に伴う加算税や延滞税は一切発生しない原則扱い
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 2 である。

相続税の 申告期限 は、相続の開始を知った日の 翌日から10か月以内(相税27条)——被相続人の死亡日からではなく「知った日の翌日」が起算点。提出先 は被相続人の最後の住所地を管轄する税務署。未分割の場合 は法定相続分で仮申告→分割確定後に修正申告(または申告期限後3年以内の分割で配偶者軽減等の適用)。納税方法金銭一括納付が原則 だが、困難な場合は 延納(5〜20年の分割払、要担保、利子税あり)または 物納(不動産・有価証券等で納付、要件厳格)の制度がある。期限超過無申告加算税・延滞税 が発生——期限内申告が基本。節税戦略 には生前贈与(暦年贈与年110万円非課税)・配偶者税額軽減・生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)・養子縁組(実子有り1人まで)・小規模宅地等の特例(自宅敷地80%減額評価)等。相続税は税理士・司法書士・弁護士のチーム で取り組む案件——専門家への早期相談が実務上の基本。

選択肢判定理由
1✗ 誤り10か月以内
2✓ 正解申告納税の正しい仕組み
3✗ 誤り金銭一括が原則
4✗ 誤り加算税あり

10か月以内+延納物納制度——これが申告納税の核心なのである。



おわりに

相続税は、知っているか知らないかで家族の経済負担が大きく変わる典型例です。今日見た3つの基本——基礎控除・配偶者軽減・申告期限——を覚えておけば、相続発生から申告手続まで、相続人としての判断軸が手に入ります。

自分の権利を知るというのは、誰かに任せきりにするのではなく、自分で判断できる材料を持つこと。法律はそのための道具です。

相続税は、相続税法・民法・所得税法・国税通則法が交錯する分野。税理士・司法書士・弁護士・税務署・公証役場・法テラス——相談先や活用のサポートは意外と多くあります。気になることがあれば、まず話を聞いてもらうところから始めるのがおすすめです。

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