育児休業給付金のしくみ——67%給付と2025年に始まった上乗せ給付

公開: 更新: カテゴリ: 労働法/雇用保険法

育児休業給付金の全体像——まず押さえる3つの基本

育児休業給付金の話は、3つの軸で整理できます。

  • もらえる人: 雇用保険に入っていて、一定の被保険者期間がある人(男女問わず)
  • 金額の目安: 休業開始から180日まで休業前賃金の67%、181日目以降は50%
  • 手取りの実感: 給付は非課税+育休中は社会保険料が免除されるため、手取りは額面の約8割相当

ここがポイント。育児休業給付金は「育休で収入が途切れる間の生活を支える」ための雇用保険の給付。会社が払うのではなく、雇用保険から支給されます。

それから、男性も対象という点。「育休=女性のもの」というイメージが残りがちですが、給付金は男女を問わず受け取れます。2025年の新しい給付は、むしろ夫婦そろっての取得を後押しする設計です。

なぜそう言えるのか、仕組みから順番に見ていきます。


育児休業給付金とは?——雇用保険からの給付

育児休業給付金は、1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した、雇用保険の被保険者に支給されます。一定の事情があれば、1歳6か月・2歳まで延長できます。

受給の主な要件

育児休業給付金を受けるための主な要件

**要件1**雇用保険の被保険者であること(男女問わず)
**要件2**育休開始前の2年間に、賃金支払基礎日数11日以上(または就業80時間以上)の月が通算12か月以上あること
**要件3**育児休業期間中、休業前の8割以上の賃金が支払われていないこと

「産後パパ育休」にも給付がある

男性が、子の出生後8週間以内に取得する出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)にも、「出生時育児休業給付金」が支給されます。最大28日間(4週間)まで、休業前賃金の67%が目安です。出生直後の大変な時期を、収入面で支える仕組みです。

ちなみに、育児休業も産後パパ育休も、有期雇用(契約社員など)でも一定の要件を満たせば対象になります。「正社員でないから無理」と決めつけないことが大切です。

産前産後休業中は「出産手当金」

育児休業給付金が始まる前、出産前後の産前産後休業(産休)の期間には、健康保険から出産手当金が支給されます(給与のおおむね3分の2)。育児休業給付金は雇用保険、出産手当金は健康保険——支給元が違う別の給付で、産休から育休へ移るにつれて、受け取る給付が切り替わります。名前が似ていて混同しやすいので、「産休は出産手当金、育休は育児休業給付金」と流れで押さえておくと安心です。


いくらもらえる?——67%と50%の二段階

育児休業給付金の額は、休業期間の長さで二段階になっています。

育児休業給付金の給付率

期間給付率(休業前賃金に対して)
休業開始から180日目まで67%
181日目以降50%

なぜ「手取り8割」と言われるのか

額面は67%ですが、育児休業給付金は非課税で、所得税も住民税もかかりません。さらに、育休中は健康保険・厚生年金の保険料が免除されます(会社・本人とも)。

働いているときは、額面から税金と社会保険料が引かれて手取りになります。育休中はその差し引きがほとんどないため、67%の給付でも、働いていたときの手取りと比べるとおよそ8割相当になる、という計算です。

計算のもとになる「休業前賃金」

給付の計算は、育休開始前6か月の賃金をもとにした「休業開始時賃金日額」で行われます。残業代なども含む総支給額がベースです。なお、給付金には上限額があり、高い賃金の人でも青天井ではありません。上限額は毎年8月に改定されるため、最新額はハローワークで確認するのが確実です。

私たちが取材した社会保険労務士の方の話では、「育休前の賃金が計算のもとになるので、産休・育休に入る直前の働き方が給付額に影響する。早めに見込み額を確認しておくと、家計の計画が立てやすい」とのこと。


2025年4月に始まった新しい給付——夫婦の育休・時短を後押し

2025年4月から、育児にまつわる雇用保険の給付が2つ新設されました。共働き・共育てを後押しする狙いです。

2025年4月新設の2つの給付

**出生後休業支援給付**夫婦がともに育休を取得すると、最大28日間、育休給付に13%を上乗せ(67%+13%=80%)
**手取りの実感**上乗せ後は、社会保険料免除・非課税とあわせて手取り10割相当に近づく
**育児時短就業給付**2歳未満の子のために時短勤務をして賃金が下がった場合、時短中の賃金の10%を支給

出生後休業支援給付——夫婦で取ると上乗せ

子の出生直後の一定期間に、夫婦(両親)がそれぞれ原則14日以上の育児休業を取得すると、最大28日間、育児休業給付金に13%が上乗せされます。67%+13%で80%となり、社会保険料免除・非課税の効果とあわせると、休業前の手取りとほぼ同じ(手取り10割相当)になります。

「夫婦の一方しか取らない」場合は対象外で、ふたりで取得することが条件。男性の育休取得を後押しする、新しい設計です。

育児時短就業給付——時短で減った分を一部カバー

2歳未満の子を育てるために時短勤務をして賃金が下がったときは、時短中の賃金の10%が支給されます。フルタイム復帰までの間、収入の落ち込みをやわらげる給付です。

育休は分割できる・延長もできる

2022年10月から、育児休業は2回まで分割して取得できるようになりました。いったん復職して、再び育休に入る、という取り方ができます。また、1歳の時点で保育所に入れない等の事情があれば、1歳6か月、さらに2歳まで延長でき、給付もその間続きます。夫婦で交代しながら取る「パパママ育休プラス」を使えば、取得期間を1歳2か月まで延ばすこともできます。働き方や保育の状況にあわせて、柔軟に組み立てられる設計です。


どう申請する?——手続きと注意点

育児休業給付金は、自動では振り込まれません。原則として勤務先(会社)を経由してハローワークに申請します。

  • 申請は原則会社経由(本人が直接行うこともできる)
  • 支給は2か月ごとにまとめて行われるのが基本(初回までは少し時間がかかる)
  • 育休中に就業すると、日数や賃金額によっては給付が減額・不支給になることがある
  • 延長(1歳6か月・2歳)には、保育所に入れない等の事由を示す書類が必要

「すぐには振り込まれない」を見込んでおく

育児休業給付金は、初回の振込までに数か月かかることがあります。育休に入ってすぐ満額が入る、というわけではありません。当面の生活費は手元の貯えでつなぐ前提で、家計の計画を立てておくのが安心です。

なお、育休中の社会保険料免除や給付金の手続きは、給与計算や人事の担当部署が代わりに進めてくれることが多いものです。とはいえ出発点は、育休を取る意思を会社に早めに正式に伝えること。ここから一連の手続きが動き出すので、予定が固まったら早めに相談しておくのが安心です。

  • 育児休業給付金は雇用保険の給付、男女問わず対象
  • 給付率は180日まで67%、181日目以降50%
  • 非課税+社会保険料免除で、手取りは額面の約8割相当
  • 産後パパ育休にも出生時育児休業給付金(67%)がある
  • 2025年4月新設: 夫婦で育休なら出生後休業支援給付(+13%=80%・手取り10割相当)、時短には育児時短就業給付(10%)
  • 申請は原則会社経由、初回振込までは時間がかかる前提で

理解度チェック

ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。

📝 オリジナル問題 1 給付率(180日まで)

育児休業給付金の給付率(休業開始から180日目まで)として、正しいのはどれか。

  1. 休業前賃金の50%
  2. 休業前賃金の40%
  3. 休業前賃金の67%
  4. 休業前賃金の80%
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 3 である。

育児休業給付金は、休業開始から180日目までは休業前賃金の67%が目安。非課税かつ社会保険料免除のため、手取りで見ると額面のおよそ8割相当になる。181日目以降は50%に下がる。

選択肢判定理由
1✗ 誤り181日目以降の給付率
2✗ 誤りそのような率はない
3✓ 正解180日目までの正しい給付率
4✗ 誤り出生後休業支援給付の上乗せ後の率

180日まで67%——手取りでは約8割相当になるのが、育休給付の実感なのである。

📝 オリジナル問題 2 出生後休業支援給付

2025年4月に新設された出生後休業支援給付の説明として、正しいのはどれか。

  1. 単身の育休でも28日間13%が上乗せされる
  2. 夫婦で育休を取ると28日間13%上乗せ
  3. 時短勤務の賃金低下を10%補う別の給付
  4. 1歳以降に育休を延長するための給付
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 2 である。

出生後休業支援給付は、夫婦(両親)がそれぞれ原則14日以上の育休を取得した場合に、最大28日間、育児休業給付金に13%を上乗せする制度。67%+13%で80%となり、手取り10割相当に近づく。ふたりで取得することが条件である。

選択肢判定理由
1✗ 誤り夫婦での取得が条件
2✓ 正解制度の正しい説明
3✗ 誤りそれは育児時短就業給付
4✗ 誤り延長のための給付ではない

夫婦で取ると+13%——共働き・共育てを後押しする新給付なのである。

📝 オリジナル問題 3 181日目以降の給付率

育児休業給付金の181日目以降の給付率として、正しいのはどれか。

  1. 休業前賃金の50%に下がる
  2. 休業前賃金の67%が続く
  3. 給付は完全に終了する
  4. 休業前賃金の80%に上がる
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 1 である。

育児休業給付金は、181日目以降は休業前賃金の50%に下がる。180日目までの67%と比べて給付率が落ちるため、長期の育休を見込むときは、この二段階を踏まえて家計を計画しておくと安心である。

選択肢判定理由
1✓ 正解181日目以降の正しい給付率
2✗ 誤り67%は180日目まで
3✗ 誤り終了せず50%で続く
4✗ 誤りそのような引き上げはない

181日目から50%——二段階であることを知っておくのが、長期育休の備えなのである。



おわりに

育児休業給付金の話は、知っているか知らないかで、育休に踏み切れるかどうかが大きく変わる典型例です。今日見た3つの基本——67%と50%の二段階・手取り約8割・2025年からの夫婦上乗せ——を押さえておけば、安心して子育ての時間を計画できます。

自分の権利を知るというのは、誰かに任せきりにするのではなく、自分で判断できる材料を持つこと。雇用保険は、その判断を支える仕組みです。

育児の制度は、会社の人事・総務やハローワークが相談に乗ってくれます。気になることがあれば、まず見込み額や取得の段取りを聞いてみるところから始めるのがおすすめです。

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