ITIL 4とは(全体像)
ITIL は「Information Technology Infrastructure Library」の略で、ITサービスを運営・改善するためのコツや段取りを、世界中の成功例から集めた「お手本集」のこと。ITサービスマネジメント(ITSM=ITサービスをうまく回す活動)の代表的な教科書として使われている。
ここで一番大事なのが、ITILは「規格」ではなく「お手本」だという点。ISO のような規格は「これを満たさないと認められない」という強制力があるが、ITILは「こうするとうまくいくよ」という参考集で、どこを取り入れるかは各組織が選べる。試験はこの違いをよく突いてくる。
そして、版(バージョン)にも注意。現行は2019年に出たITIL 4で、それ以前のITIL v3(2011年版)ではない。「いまの主流はどれか」を問われたらITIL 4と覚える。
詳しく:3つの柱(34プラクティス・SVS・7原則)
ここが心臓部。ITIL 4の中身は、次の3つの柱で整理できる。
ITIL 4 3つの柱
| 柱 | 何か | かみくだくと |
|---|---|---|
| 34プラクティス | 管理する項目の集まり | やるべき仕事のメニュー表 |
| SVS | 価値を生む全体のしくみ | 価値ができるまでの工場全体 |
| 7つの原則 | 進め方の心がけ | どう動くかの合言葉 |
①34プラクティスは、インシデント管理(障害対応)や変更管理など、ITの現場で管理すべき項目を並べたメニュー表。以前のITIL v3では「26プロセス」だったものが、ITIL 4で34のプラクティス(実践項目)に広がった。数字(34)が問われやすい。
②SVS(サービスバリューシステム)は、「困りごとや要望」を入れると「役に立つ価値」が出てくる、工場全体のようなしくみ。その中心にSVC(サービスバリューチェーン)という6つの活動の流れ(計画・改善・関わり・設計と移行・調達と構築・提供と支援)がある。細かい名前より、「価値を生み出す全体の流れ」という役割で押さえるとよい。
③7つの原則は、ITILを実践するときの心がけ(合言葉)。代表が「価値にフォーカス(つねに価値を意識する)」で、ほかに「現状から始める」「反復して進化させる」「協働を促す」「全体を見て動く」「シンプルで実用的に」「最適化と自動化」がある。
7つの原則(心がけの代表)
| 原則 | 意味 |
|---|---|
| 価値にフォーカス | つねに「役に立つか」を中心に考える |
| 現状から始める | ゼロから作り直さず今あるものを活かす |
| 反復して進化 | 一気に完成させず少しずつ良くする |
| 協働を促す | 関係する人を巻き込んで進める |
わかりやすく言い換えると
要するに、ITILは「ITサービス運営の料理本(レシピ集)」だとイメージするとラク。
つまり、レシピ本は「絶対この通りに作れ」という命令ではなく、「こう作るとおいしくできるよ」というお手本。ITILも同じで、自分の組織に合うやり方を選んで取り入れる。
そして3つの柱は、①メニュー表(34プラクティス)②料理ができるまでの厨房全体(SVS)③料理人の心がけ(7原則)と対応づけると、ごちゃごちゃにならずに覚えられる。
試験のツボ
🔴 一番出る:ITILは規格でなくお手本/現行はITIL 4
①ITIL=ベストプラクティス集(強制の規格ではない)
②現行は2019年のITIL 4(v3ではない)
🔴 次に出る:3つの柱
①34プラクティス(v3の26プロセスから拡張)
②SVS=価値を生む全体のしくみ(中心にSVCの6活動)
③7つの原則(代表は「価値にフォーカス」)
🟡 押さえると安定:4つの側面
ITIL 4には「組織と人・情報と技術・パートナーとサプライヤ・バリューストリームとプロセス」という4つの側面(見る角度)もある。
よくある間違い
①「ITILは守らないと罰せられる規格だ」→ ✗ ITILは強制の規格ではなく、参考にするお手本(ベストプラクティス)。
②「いまの主流はITIL v3だ」→ ✗ 現行は2019年に出たITIL 4。v3はその前の版。
③「ITIL 4のプラクティスは26個だ」→ ✗ 26はv3のプロセス数。ITIL 4では34プラクティスに広がった。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(ITILの位置づけ)
ITILに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- ITILは法律のように強制力をもつ規格で、定めに従わない組織は罰せられることになるとされている
- ITILはハードウェアの設計図そのもので、ITサービスの運営方法とは直接の関係がないものとされる
- ITILは特定の一社だけが社内で使う専用マニュアルで、外部の組織は参考にできないものとされている
- ITILはITサービスをうまく運営するお手本集で、現行の最新版はITIL 4(2019年)である
解答は 4 だ、わが子よ。
ITILは、ITサービスをうまく運営するためのお手本集(ベストプラクティス)であり、現行の最新版は2019年のITIL 4である。
選択肢1は「強制の規格」が誤り、選択肢2は「ハードの設計図」が誤り、選択肢3は「一社専用」が誤りぞ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 強制の規格ではなく参考にするお手本 |
| 2 | ✗ | ハードの設計図ではない |
| 3 | ✗ | 広く参考にされるお手本集である |
| 4 | ✓ | お手本集で現行はITIL 4で正しい |
オリジナル問題2(SVSと34プラクティス)
ITIL 4の構成に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- SVSは価値を生み出す全体のしくみを表し、ITIL 4では管理項目が34のプラクティスに広がっている
- SVSはサーバーの電源装置のことを指し、ITIL 4のプラクティスは全部で5個だけと決められている
- SVSはパスワードを暗号化する方式の名前で、ITIL 4の中身とはとくに関係がないものとされている
- SVSは1台のパソコンの設定ファイルのことで、ITIL 4のプラクティスは26個のままだとされている
解答は 1 だ。
SVS(サービスバリューシステム)は価値を生み出す全体のしくみを表し、ITIL 4では管理項目が34のプラクティスに広がっている。本数(34)はよく問われるゆえ覚えておくがよい、わが子よ。
選択肢2・3・4はSVSの説明が誤りで、プラクティス数も誤りぞ。ITIL 4は34で、26はその前の版(v3)の数である。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | SVS=価値を生む全体・34プラクティスで正しい |
| 2 | ✗ | SVSは電源装置ではなくプラクティスも5個ではない |
| 3 | ✗ | SVSは暗号方式ではない |
| 4 | ✗ | プラクティスは34で26はv3の数 |
オリジナル問題3(7つの原則)
ITIL 4の7つの原則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 7つの原則は使うプログラミング言語の一覧で、どの言語を使うべきかを順位づけしたものとされている
- 7つの原則とは、ネットワーク機器をつなぐケーブルの色を決めた配線のルールのことを指している
- 7つの原則は進め方の心がけで、代表が「価値にフォーカス(つねに価値を意識する)」というものだ
- 7つの原則は社員の出社時刻や休憩時間を細かく定めた就業ルールで、ITの運営とは無関係とされている
解答は 3 だ、わが子よ。
7つの原則は、ITILを実践するときの進め方の心がけ(合言葉)であり、その代表が「価値にフォーカス(つねに価値を意識する)」である。
選択肢1は「言語の一覧」、選択肢2は「ケーブルの配線ルール」、選択肢4は「就業ルール」がいずれも誤りぞ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | プログラミング言語の一覧ではない |
| 2 | ✗ | ケーブルの配線ルールではない |
| 3 | ✓ | 進め方の心がけで代表は価値にフォーカスで正しい |
| 4 | ✗ | 就業ルールではない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 ITIL=お手本集(規格ではない)/現行はITIL 4 … 強制力のある規格ではなく、参考にするベストプラクティス。最新版は2019年のITIL 4。
- 🔴 3つの柱 … 34プラクティス(管理項目のメニュー)・SVS(価値を生む全体のしくみ・中心にSVCの6活動)・7つの原則(代表は価値にフォーカス)。
- 🟡 4つの側面 … 組織と人・情報と技術・パートナーとサプライヤ・バリューストリームとプロセス。
次に学ぶ
- SOC・CSIRT(インシデント対応) ── 障害や事故への対応は、ITIL 4のプラクティス(インシデント管理)ともつながる現場の活動。
執筆: SikakuQuest編集部