IPv4→IPv6移行とは(全体像)
インターネット上の機器には、住所にあたるIPアドレスが必要だ。古い方式のIPv4は住所の数に限りがあり、つなぐ機器が増えて足りなくなった。そこで、住所の桁を大幅に増やした新方式IPv6へ切り替えていく——これが移行だ。
ただし、世界中の機器を一斉に切り替えることはできない。新方式だけにすると、まだ古い方式しか話せない相手とつながれなくなる。そこで、しばらく新旧を共存させながら橋渡しする技術を使う。
押さえるのは、橋渡しの3つの手法と、その中で標準がどれかだ。
詳しく:3つの移行技術を押さえる
ここが心臓部。移行技術は、役割で3つに分けると整理しやすい。
IPv4→IPv6 移行のおもな技術
| 技術 | やること | 位置づけ |
|---|---|---|
| デュアルスタック | 機器が新旧(IPv4とIPv6)の両方に対応する | 標準手法・段階移行の基本 |
| トンネリング | IPv6の通信をIPv4の網で運べるよう包んで通す(6to4・Teredoなど) | 古い網を通り抜けたいとき |
| NAT64/DNS64 | IPv6しか持たない側とIPv4の相手を翻訳してつなぐ | モバイルで主流 |
言葉を噛み砕いておく。
- デュアルスタック … 機器が新旧の住所を両方持っておくこと。相手がどちらでも話せるので、いちばん素直な標準のやり方。
- トンネリング … 新方式の荷物を、古い配送網に載せるために古い規格の箱で包んで運ぶイメージ。
- NAT64/DNS64 … 新方式の住所しか持たない人が、古い住所の相手と話すときの翻訳・取次の窓口。スマホの通信でよく使われる。
普及はじわじわ進んでおり、世界では半数近くがIPv6に対応してきている(具体的な普及率は年々変わるので、受験する年度の最新値を確認しておくとよい)。
わかりやすく言い換えると
つまり、電話番号の桁が足りなくなって、桁の多い新番号に切り替える場面にたとえるとスッと入る。
全員が同じ日に番号を変えるのは無理なので、まずは名刺に新旧の番号を両方載せておく(=デュアルスタック)。新番号あての手紙を古い郵便網で運ぶときは古い封筒で包んで送る(=トンネリング)。新番号しか持たない人が旧番号の相手に連絡するときは、翻訳してくれる取次窓口を通す(=NAT64)。
試験のツボ
🔴 一番出る:標準はデュアルスタック
①デュアルスタック=新旧の両方に対応(段階移行の基本)
②これが移行の標準手法
🔴 次に出る:トンネリングとNAT64の役割
①トンネリング=IPv6を古いIPv4の網で包んで通す
②NAT64/DNS64=IPv6側とIPv4側を翻訳してつなぐ(モバイルで主流)
🟡 押さえると安定:移行は自動ではなく、機器の対応や移行計画が必要
よくある間違い
①「IPv4からIPv6へは自動で切り替わる」→ ✗ 自動ではない。機器の対応や移行の計画が必要。
②「移行の標準はトンネリング」→ ✗ 標準はデュアルスタック。トンネリングは古い網を通したいときの手段。
③「IPv6だけにすればすぐ全部つながる」→ ✗ 古い方式しか話せない相手とは、NAT64などの橋渡しがないとつながらない。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(移行の標準手法)
IPv4→IPv6移行に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- デュアルスタックは機器が新旧の両方に対応する方式で、段階的な移行を支える基本となる標準手法とされる
- デュアルスタックはIPv6の通信を必ずIPv4の箱で包んで運ぶ方式で、古い網の通過だけを目的としている
- デュアルスタックは古い方式を完全に廃止して新方式だけにする手法で、移行の橋渡しには使えないとされる
- デュアルスタックはIPアドレスを暗号化するための手法で、新旧の住所の対応とはまったく関係がないとされる
解答は 1 である。
デュアルスタックは、機器が新旧(IPv4とIPv6)の両方に対応する方式。相手がどちらでも話せるので、段階的に移行する際の標準手法になる。
選択肢2はトンネリングの説明と取り違えている。選択肢3は「古い方式を完全廃止」が誤りで、デュアルスタックは共存させる手法。選択肢4の暗号化はまったく別の話だ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 新旧両対応の標準手法で正しい |
| 2 | ✗ | 包んで通すのはトンネリング |
| 3 | ✗ | 共存させる手法で、完全廃止ではない |
| 4 | ✗ | 暗号化とは無関係 |
オリジナル問題2(トンネリングとNAT64)
移行技術の役割に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- トンネリングもNAT64も、IPアドレスを使わずに通信する専用の方式で、住所の移行とはいっさい無関係なものとされている
- NAT64は新旧どちらの機器も同時に廃止する手法で、通信を完全に止めることだけを目的としたものである
- トンネリングは通信速度を必ず10倍にする手法で、NAT64は通信内容を録画して保存する手法とされている
- トンネリングはIPv6を古いIPv4の網で包んで通す手法で、NAT64はIPv6側とIPv4側を翻訳してつなぐ手法だ
解答は 4 だ。
トンネリングはIPv6の通信を古いIPv4の網で包んで通す手法、NAT64はIPv6側とIPv4側を翻訳してつなぐ手法。NAT64はスマホの通信でよく使われる。
選択肢1は「IPアドレスを使わない」が誤り。選択肢2は廃止や通信停止が目的という誤り。選択肢3の速度10倍・録画保存は、どちらも事実と異なる。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | どちらも住所の移行を支える技術 |
| 2 | ✗ | 廃止・通信停止が目的ではない |
| 3 | ✗ | 速度10倍や録画保存とは無関係 |
| 4 | ✓ | トンネリング=包んで通す・NAT64=翻訳で正しい |
オリジナル問題3(移行の進め方)
IPv4→IPv6移行の進め方に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 移行は機器を起動するだけで自動的に完了するため、対応の確認や計画はまったく不要とされている
- 移行には機器の対応や計画が必要で、しばらくは新旧を共存させながら橋渡しの技術を使って進めていく
- 移行とは社内のパソコンを物理的に新品へ買い替える作業のことで、通信方式の切り替えとは無関係である
- 移行はIPv6だけにすれば古い方式しか話せない相手ともすぐ全部つながるため、橋渡しは不要とされている
解答は 2 だ。
移行は自動では進まない。機器の対応や計画が必要で、しばらくは新旧を共存させながら、デュアルスタックなどの橋渡しの技術で少しずつ進めていく。
選択肢1は「自動で完了」が誤り。選択肢3は機器の買い替え作業と取り違えている。選択肢4は「IPv6だけですぐ全部つながる」が誤りで、古い方式の相手にはNAT64などの橋渡しが要る。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 自動では完了せず、対応と計画が必要 |
| 2 | ✓ | 対応・計画と共存での橋渡しで正しい |
| 3 | ✗ | 機器の買い替え作業とは別もの |
| 4 | ✗ | 古い方式の相手には橋渡しが必要 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 IPv4→IPv6移行 = 足りない住所を桁の多い新方式へ切り替える取り組み。標準はデュアルスタック(新旧両対応)。
- 🔴 トンネリング=古い網で包んで通す/NAT64・DNS64=新旧を翻訳してつなぐ(モバイルで主流)。
- 🟡 移行は自動ではなく、機器の対応や計画が必要。普及率は年々変わるので受験年度で最新値を確認。
次に学ぶ
- IPv6詳細(SLAAC・デュアルスタック) ── 移行先のIPv6そのもののしくみと、住所の自動設定のやり方。
- DNS詳細(DNSSEC・DoH/DoT) ── NAT64と組むDNS64の土台になる、名前と住所の対応のしくみ。
- L3ルーティング詳細(最長一致) ── 新旧の住所あての通信を、どの道へ送るか決めるしくみ。
執筆: SikakuQuest編集部