企業組織とは(全体像)
会社が大きくなると、社員みんなが好き勝手に動いていては回らない。そこで「だれがどの仕事を担当し、だれが責任を持つか」をあらかじめ決めておく。この役割分担のかたちが企業組織だ。
一番大事なのは、「何を基準に部署を分けるか」で組織の名前が変わる、ということ。仕事の種類で分けるのが職能別、製品や地域で分けるのが事業部制——まずこの対比をつかむと、残りも整理しやすくなる。
詳しく:この表で5つの形をまとめて押さえる
ここが心臓部。5つの組織形態は、次の表に全部つまっている。
企業組織 5つの形
| 形 | 何で分けるか | 特徴 | イメージ |
|---|---|---|---|
| 職能別組織 | 仕事の種類(営業・製造・人事など) | 専門ごとに集まる・決定は上に集まる(中央集権) | 部署が「職人の工房」ごと |
| 事業部制組織 | 製品・地域・顧客 | 各事業部が売上と利益に責任を持つ・判断が速い(分権型) | 社内に小さな会社が並ぶ |
| マトリックス組織 | 仕事の種類 × 製品の両方 | 専門性と事業責任を両立・上司が2方向で命令が複雑 | 縦横の方眼紙のマス目 |
| カンパニー制 | 事業ごと(より独立) | 事業部制より独立性が強い社内分社 | ほぼ独立した子会社 |
| 持株会社 | 株式の保有で統治 | 株を持って全体をまとめる親会社 | グループの司令塔 |
ポイントを3つだけ。
ひとつめ。職能別は「営業の人は営業部、つくる人は製造部」と仕事の種類でまとめる形。専門性が高まる代わりに、大きな決定は上のほうに集まりやすい(これを中央集権と呼ぶ。要するに「決めるのは本社の偉い人」という形)。
ふたつめ。事業部制は「Aブランド事業部」「関西事業部」のように製品や地域でまとめる形。各事業部が自分のP/L(ピーエル=損益。売上から費用を引いた利益のこと)に責任を持つので、現場で素早く判断できる(これを分権型と呼ぶ)。
みっつめ。マトリックスは職能と事業の両方で同時に分ける形。1人の社員に「職能の上司」と「事業の上司」がつくので、専門性と事業責任を両立できる反面、命令が2方向から来て調整が大変になる。ここが試験で狙われる。
わかりやすく言い換えると
むずかしく考えず、身近なものでイメージするとラクになる。
職能別は、料理人を「焼き場・揚げ場・盛り付け」と作業ごとに分けた厨房。腕は磨かれるけれど、全体の方針はシェフ(本社)が決める。
事業部制は、フードコートに「ラーメン店・カレー店」と店ごとに分かれている状態。各店が自分のお店の売上に責任を持ち、その場で値段やメニューを決められる。つまり、それぞれの店が小さな会社のように動く、ということ。
マトリックスは、方眼紙のマス目。縦の列(職能)と横の行(事業)が交わる1マスにあなたがいて、列のリーダーと行のリーダー、2人から指示が来る——だから調整が大変、というわけ。
試験のツボ
🔴 一番出る:職能別と事業部制の対比
①職能別 = 仕事の種類で分ける・専門性が高い・決定は本社に集まる(中央集権)
②事業部制 = 製品や地域で分ける・各事業部が利益に責任・判断が速い(分権型)
🔴 次に出る:マトリックス組織の特徴
①職能と事業の両方で分ける2次元の形
②上司が2方向につくので、専門性は活きるが指揮命令が複雑になる
🟡 押さえると安定:持株会社の中身
①株を持つことでグループ全体をまとめる親会社
②純粋持株会社は株を持つだけ(自分では事業をしない)/事業持株会社は事業もしながら株も持つ
よくある間違い
①「マトリックス組織は指揮命令がはっきりしている」→ ✗ 上司が縦と横の2方向につくので、むしろ命令系統は複雑で調整が難しい。
②「持株会社は自分でも商品をつくって売る」→ ✗ 純粋持株会社は株を持つだけで事業はしない。事業もするのは事業持株会社のほう。
③「事業部制は本社がすべて決める」→ ✗ 事業部制は各事業部に判断をまかせる分権型。本社にまとめるのは職能別のほう。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(持株会社の特徴)
持株会社に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- ほかの会社の株式を保有することで、グループ全体をまとめて統治する役割を持つ会社のこと
- 製品ごとに部門を分け、それぞれの部門が自分の売上と利益に責任を負う組織の形のこと
- 営業や製造といった仕事の種類ごとに部署をまとめ、専門性を高めることを目的にした組織のこと
- 社員一人ひとりに対して、二方向から上司が指示を出すことを基本にした指揮命令の方式のこと
解答は 1 だよ。
持株会社は、ほかの会社の株を持つことでグループ全体をまとめる親会社のこと。株を持つだけの「純粋持株会社」と、自分でも事業をする「事業持株会社」があるよ。
選択肢2は事業部制組織、選択肢3は職能別組織の説明だね。選択肢4はマトリックス組織の指揮命令の話で、持株会社の説明ではないよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 株式の保有でグループを統治するのが持株会社 |
| 2 | ✗ | 製品ごとに利益責任を持つのは事業部制 |
| 3 | ✗ | 仕事の種類でまとめるのは職能別組織 |
| 4 | ✗ | 二方向の指揮はマトリックス組織の特徴 |
オリジナル問題2(職能別と事業部制の対比)
職能別組織と事業部制組織の違いに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 職能別組織は製品ごとに分け、事業部制組織は地域ごとに分けるという、分け方の単位の違いだけが両者の差
- 職能別組織は仕事の種類でまとめ、事業部制組織は製品や地域で分けて各事業部が利益に責任を負う
- 職能別組織も事業部制組織も、各部門が独立して損益に責任を負うという点ではまったく同じ
- 職能別組織は判断を現場にまかせ、事業部制組織は決定を本社に集める中央集権型だと説明
解答は 2 だよ。
職能別組織は「営業」「製造」のように仕事の種類でまとめる形で、専門性が高まる。事業部制組織は製品や地域で分けて、各事業部が自分の利益に責任を持つ形だよ。
選択肢4は、分権型と中央集権型が逆になっているのがまちがい。判断を現場にまかせる分権型は事業部制、本社にまとめる中央集権型は職能別だよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 分け方の単位だけでなく、責任の持ち方も違う |
| 2 | ✓ | 仕事の種類でまとめる職能別、利益責任を持つ事業部制で正しい |
| 3 | ✗ | 損益に責任を負うのは事業部制で、職能別は当てはまらない |
| 4 | ✗ | 分権型と中央集権型の説明が逆になっている |
オリジナル問題3(マトリックス組織の特徴)
マトリックス組織に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- マトリックス組織は、ひとりの社員に必ずひとりの上司だけがつくので、命令系統が単純になる組織
- マトリックス組織は、株式の保有をとおしてグループ会社全体をまとめて統治することを主な役割にしている
- 職能と事業の二つの軸で分けるため専門性と事業責任を両立できるが、上司が二方向につき調整が難しくなる
- マトリックス組織は製品ごとに完全に独立した会社を社内につくる形で、ほかの部門との連携をいっさい行わない
解答は 3 だよ。
マトリックス組織は、職能(仕事の種類)と事業(製品など)の2つの軸で同時に分ける形。専門性と事業責任を両立できるけれど、上司が2方向につくので調整が大変、という特徴がよく問われるよ。
選択肢1は上司が2方向につく点でまちがい、選択肢2は持株会社、選択肢4はカンパニー制に近い説明で、どれもマトリックスの特徴ではないね。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 上司は2方向につくので命令系統は複雑になる |
| 2 | ✗ | 株式保有での統治は持株会社の説明 |
| 3 | ✓ | 2軸で両立できる反面、調整が難しいのが特徴 |
| 4 | ✗ | 社内に独立会社をつくるのはカンパニー制に近い |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 職能別 = 仕事の種類で分ける・専門性が高い・決定は本社(中央集権)。
- 🔴 事業部制 = 製品や地域で分ける・各事業部が利益に責任・判断が速い(分権型)。
- 🔴 マトリックス = 職能×事業の2軸・専門性と事業責任を両立できるが指揮命令が複雑。
- 🟡 カンパニー制=より独立性の強い社内分社/持株会社=株式保有でグループを統治(純粋持株は事業をしない)。
次に学ぶ
- CSR・コーポレートガバナンス ── 会社が社会に対して負う責任と、経営をきちんと監視するしくみ。組織のかたちと合わせて「会社の正しい運営」を押さえると理解が深まる。
- 経営戦略 ── どんな組織にするかは「どう戦うか」とセット。戦略と組織は両輪として整理すると混ざらない。
執筆: SikakuQuest編集部