損失補償とは?特別の犠牲と、補償の程度

公開: 更新: カテゴリ: 行政法

30秒で結論

損失補償とは(全体像)

損失補償とは、適法な公権力の行使によって、特定の個人に特別の犠牲を課した場合に、公平負担の観点から、その損失を金銭で補償する制度のこと。憲法は「私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる」と定めており、これがよりどころになる。

ここで最も重要なのが、国家賠償との違いだ。

国家賠償違法な行為による損害を賠償する。

損失補償適法な行為による損失を補償する。

たとえば、公共事業のために土地を収用するのは適法だが、土地を手放す人には特別の犠牲が生じる。これを埋め合わせるのが損失補償だ。違法だから賠償する国家賠償とは、出発点がまったく違う。


詳しく:特別の犠牲と、補償の程度

ここが心臓部。補償が要る場面(特別の犠牲)と、正当な補償の意義を押さえる。

国家賠償と損失補償の違い

区分国家賠償損失補償
対象違法な行為による損害適法な行為による損失
趣旨違法行為のてん補公平な負担の調整

まず特別の犠牲。補償が必要になるのは、特定の人に特別の犠牲(通常受けるべき範囲を超えた、特別の負担)を課したときだ。公益のための一般的な規制(みんなが受ける程度の制約)にとどまるなら、受忍限度内として補償は不要。「財産権が制約されたら必ず補償」ではない、という点が重要だ。

次に、正当な補償の意義をめぐる考え方の対立だ。

正当な補償をめぐる2つの考え方

内容位置づけ
相当補償説客観的に合理的な額(市場価格に基づく相当な額)で足りる判例
完全補償説完全な市場価格・生じた損失の全部を補償すべき通説

「正当な補償」がどこまでを指すかについては、相当補償説(合理的な額で足りる)と完全補償説(完全に補償すべき)が対立している。判例は相当補償説、通説は完全補償説、という整理を押さえる。

わかりやすく言い換えると

つまり損失補償は「適法だけれど特別の犠牲を負わせたから、公平のために金銭で埋め合わせる」制度。違法への国家賠償とは別物。補償が要るのは特別の犠牲があるときだけで、正当な補償の意味には説の対立がある。

要するに押さえどころは2つ。①損失補償は適法行為への補償で、違法行為への国家賠償とは決定的に異なる②補償が必要なのは特別の犠牲があるときに限られる(あらゆる財産権制約に必要ではない)


試験のツボ

🔴 一番出る:国家賠償との違い

①国家賠償は違法行為への賠償、損失補償は適法行為への補償

②出発点がまったく異なる

🔴 次に出る:特別の犠牲

補償が必要なのは特別の犠牲があるときだけ。一般的な規制(受忍限度内)は補償不要。

🟡 押さえると安定:正当な補償の意義

相当補償説(判例)と完全補償説(通説)が対立している。


よくある間違い

「損失補償と国家賠償は、同じ制度である」→ ✗  損失補償は適法行為への補償、国家賠償は違法行為への賠償で、本質的に異なる。

「あらゆる財産権の制約に、損失補償が必要である」→ ✗  補償が必要なのは、特別の犠牲を課したときに限られる。

「損失補償は、違法な行為による損害をてん補する制度である」→ ✗  損失補償は適法行為への補償。違法行為への対応は国家賠償。


試験での出題パターン

実際の問題でたしかめてみよう。

オリジナル問題1(損失補償の意味)

📝 オリジナル問題 1 損失補償の意味

損失補償に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 損失補償とは、違法な公権力の行使による損害をてん補する制度をいう
  2. 損失補償は、適法な公権力の行使で特別の犠牲を課したときの金銭補償
  3. 損失補償とは、私人どうしの契約違反を補償する制度をいうものとされる
  4. 損失補償とは、刑罰として財産を取り上げる制度をいうものとされる
アドゴレ
アドゴレ 解答・解説

解答は 2 だ。

損失補償は、適法な公権力の行使特別の犠牲を課したときに、公平の観点から金銭で補償する制度だ。

選択肢1の「違法な行使」、選択肢3の「私人間の契約違反」、選択肢4の「刑罰」は、いずれも誤りだ。

選択肢判定理由
1違法行為は国家賠償の対象
2適法行為で特別の犠牲への補償で正しい
3私人間の契約とは別
4刑罰とは別

オリジナル問題2(国家賠償との違い)

📝 オリジナル問題 2 国家賠償との違い

損失補償と国家賠償の違いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 損失補償と国家賠償は、まったく同じ制度であるとされている
  2. 損失補償は違法行為への対応で、国家賠償と同じものとされる
  3. 損失補償も国家賠償も、どちらも違法行為だけを対象とするとされる
  4. 損失補償は適法行為への補償で、違法行為への国家賠償とは異なる
アドゴレ
アドゴレ 解答・解説

解答は 4 だ。

損失補償は適法行為への補償で、違法行為への国家賠償とは決定的に異なる。出発点が違うぞ。

選択肢1の「同じ制度」、選択肢2の「違法行為への対応」、選択肢3の「どちらも違法行為」は、いずれも誤りだ。

選択肢判定理由
1適法か違法かで本質的に異なる
2損失補償は適法行為への補償
3損失補償は適法行為が対象
4適法行為への補償で国賠と異なり正しい

オリジナル問題3(特別の犠牲)

📝 オリジナル問題 3 特別の犠牲

損失補償が必要となる場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 損失補償が必要となるのは、特別の犠牲を課したときに限られる
  2. あらゆる財産権の制約に、当然に損失補償が必要であるとされている
  3. 損失補償は、財産権の制約がまったくなくても必要とされる
  4. 特別の犠牲がなくても、損失補償は必ず必要になるものとされる
アドゴレ
アドゴレ 解答・解説

解答は 1 だ。

損失補償が必要になるのは、特別の犠牲を課したときに限られる。一般的な規制(受忍限度内)なら補償は要らないぞ。

選択肢2の「あらゆる制約に当然」、選択肢3の「制約がなくても」、選択肢4の「特別の犠牲がなくても」は、いずれも誤りだ。

選択肢判定理由
1特別の犠牲のときに限り正しい
2あらゆる制約に必要ではない
3制約による特別の犠牲が前提
4特別の犠牲が要件

まとめ

押さえどころ

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執筆: SikakuQuest編集部

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