商行為とは(全体像)
商法の核心へ歩を進めよう。商行為とは、商法という特別ルールが適用される行為をいう。だれかが「これは商行為だ」と決められると、その取引には民法とは違う商法の決まりが及ぶのである。
押さえるべきは、商行為が3つの類型に分かれることである。
- 絶対的商行為 … 誰が行っても商行為になる行為。
- 営業的商行為 … 業として(継続・反復して)行う場合に商行為となる行為。
- 附属的商行為 … 商人が営業のためにする行為。
「商行為はすべて、業としてする場合だけだ」と早合点してはならない。絶対的商行為は、業としなくても成り立つのである。
詳しく:3つの類型を見極める
ここが核心である。腰を据えて見極めるがよい。3類型は、だれが・どんなときに商行為となるかで分かれる。
商行為の3類型
| 類型 | 商行為になる条件 | 例 |
|---|---|---|
| 絶対的商行為 | 誰が行っても(業としなくても) | 投機目的の買い入れと売却など |
| 営業的商行為 | 業として行う場合 | 賃貸業・製造加工業・運送業など |
| 附属的商行為 | 商人が営業のためにする行為 | 商人が結ぶ雇用契約など |
まず絶対的商行為である。これは、誰が行っても商行為になる。商人でない者が、一回かぎりで安く買って高く売るつもりで品物を買えば、それも絶対的商行為に当たる。業として行うかどうかは問わないのである。
次に営業的商行為である。これは、業として(継続・反復して)行う場合にはじめて商行為となる。賃貸業や運送業などがこれにあたり、一回かぎりでは商行為とならない。
そして附属的商行為である。これは、商人が営業のためにする行為をいう。たとえば商人が従業員を雇う契約も、営業のための行為として商行為になる。
附属的商行為の推定
| 内容 | |
|---|---|
| 原則 | 商人が営業のためにする行為は商行為 |
| 推定 | 商人の行為は、営業のためにするものと推定される |
ここで一つ授けよう。商人の行為は、営業のためにするものと推定される。つまり、商人がした行為は、いちいち証明せずとも、ひとまず営業のための附属的商行為と扱われるのである。
わかりやすく言い換えると
要するに、商行為とは「商法の特別ルールが乗る行為」であり、その入り方が3通りある。
つまり、①絶対的商行為は「誰がやっても商行為」。素人が一回の転売目的で買っても当てはまる。業かどうかは問わない。
②営業的商行為は「繰り返し商売としてやってこそ商行為」。賃貸業や運送業など、業として営むことが条件である。
③附属的商行為は「商人が商売のためにやる行為」。商人が従業員を雇うのもこれにあたる。しかも、商人の行為は営業のためと推定されるから、商人がした行為はひとまず商行為と扱われる、と心得るがよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:3類型の区別
①絶対的商行為=誰が行っても商行為
②営業的商行為=業として行う場合/附属的商行為=商人が営業のためにする行為
🔴 次に出る:絶対的商行為は業としなくてもよい
①一回かぎり・非商人でも絶対的商行為は成り立つ
②「商行為はすべて業としてする場合だけ」は誤り
🟡 押さえると安定:附属的商行為の推定
①商人が営業のためにする行為は商行為
②商人の行為は営業のためにするものと推定される
よくある間違い
①「商行為はすべて、業としてする場合だけである」→ ✗ 絶対的商行為は、業としなくても(誰が行っても)商行為になる。
②「営業的商行為は、一回かぎりでも商行為になる」→ ✗ 営業的商行為は、業として(継続・反復して)行う場合に商行為となる。
③「商人の行為でも、営業のためと証明しなければ商行為にならない」→ ✗ 商人の行為は、営業のためにするものと推定される。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(商行為の類型)
商行為の類型に関する記述として、正しいものはどれか。
- 商行為には、絶対的商行為・営業的商行為・附属的商行為の3つの類型がある
- 商行為は附属的商行為の一種類だけで、ほかの類型は存在しないものとされる
- 商行為はすべて、商人が営業のためにする場合に限って成り立つものとされる
- 商行為は民法上の概念で、商法には商行為という区分はないものとされている
解答は 1 である。
理を解き明かそう。商行為には、絶対的商行為・営業的商行為・附属的商行為という3つの類型がある。だれが・どんなときに商行為となるかで分かれるのである。
選択肢2のように「一種類だけ」ではない。3つの入口があると心得るがよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 絶対的・営業的・附属的の3類型がある |
| 2 | ✗ | 附属的の一種類だけではない |
| 3 | ✗ | 営業のための場合に限られない(絶対的商行為もある) |
| 4 | ✗ | 商法に商行為の区分はある |
オリジナル問題2(絶対的商行為)
絶対的商行為に関する記述として、正しいものはどれか。
- 絶対的商行為は、商人が営業のためにする場合に限り商行為になるものとされる
- 絶対的商行為は、業として継続・反復して行う場合だけ商行為になるものとされる
- 絶対的商行為は、誰が行っても商行為となり、業としなくても成り立つものである
- 絶対的商行為は、国の許可を受けた者だけが行える特別な行為であるものとされる
解答は 3 である。
本質を見極めよう。絶対的商行為は、誰が行っても商行為となる。業として行うかどうかを問わず、商人でない者が一回かぎりで行っても成り立つのである。
選択肢2のように「業として行う場合だけ」とするのは、営業的商行為の話である。両者を取り違えてはならない。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 営業のための場合に限られない |
| 2 | ✗ | 業として行う場合だけは営業的商行為の話 |
| 3 | ✓ | 誰が行っても、業としなくても商行為 |
| 4 | ✗ | 国の許可を要する特別な行為ではない |
オリジナル問題3(附属的商行為)
附属的商行為に関する記述として、正しいものはどれか。
- 附属的商行為は、商人でない者が一回かぎりで行う行為を指すものとされている
- 商人が営業のためにする行為であり、商人の行為は営業のためと推定される
- 附属的商行為は、商人の私的な生活上の行為だけを指すものとされている
- 附属的商行為は、営業のためと証明しない限り商行為にならないものとされる
解答は 2 である。
高みより理を見渡そう。附属的商行為とは、商人が営業のためにする行為である。さらに、商人の行為は、営業のためにするものと推定される。ゆえに、いちいち証明せずとも商行為として扱われるのである。
選択肢4のように「証明しない限り商行為にならない」のは、推定があるため誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 非商人の一回限りの行為ではない |
| 2 | ✓ | 商人が営業のためにする行為で、推定が働く |
| 3 | ✗ | 私的な生活上の行為だけを指すのではない |
| 4 | ✗ | 推定が働くので証明は当然には要らない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 3類型 = 絶対的商行為(誰が行っても)・営業的商行為(業として)・附属的商行為(商人が営業のために)。
- 🔴 絶対的商行為 = 業としなくても、誰が行っても商行為になる。
- 🟡 附属的商行為の推定 = 商人の行為は、営業のためにするものと推定される。
次に学ぶ
- 商人 ── 商行為を業とする者である商人。商行為と表裏の関係で押さえる。
- 自治事務 ── 行政法側の事務の類型。試験範囲のもう一方の柱も整理しておきたい。
- 長の権限 ── 行政の執行機関の権限の全体像。商法と並ぶ出題範囲を押さえる。
執筆: SikakuQuest編集部