商業使用人とは(全体像)
商法の人の側面、それが商業使用人である。商業使用人とは、営業主に従属して、その営業を補助する者をいう。お店や会社のために働き、営業主に代わって取引を担う人々である。
押さえるべきは、これが3つの類型に分かれることである。
- 支配人 … 営業全般を代理できる、最も広い代理権をもつ者。
- ある種類・特定の事項を任された使用人 … 任された範囲で代理権をもつ者。
- 物品販売店舗の使用人 … 店舗での物品販売について代理権があるとみなされる者。
「商業使用人といえば支配人のことだ」と思い込んではならない。支配人は3類型のうちの一つにすぎないのである。
詳しく:3つの類型を見極める
ここが核心である。腰を据えて見極めるがよい。3類型は、代理権の広さで分かれる。
商業使用人の3類型
| 類型 | 代理権の範囲 | 例 |
|---|---|---|
| 支配人 | 営業に関する一切(包括的) | 支店長など |
| ある種類・特定事項の使用人 | 任された種類・事項の範囲 | 販売部長・課長など |
| 物品販売店舗の使用人 | 店舗内の物品販売について | 店員など |
まず支配人である。これは営業全般を代理できる、最も広い代理権をもつ者である(くわしくは支配人の項で扱う)。
次にある種類・特定の事項を任された使用人である。これは、たとえば「販売」というある種類の事項を任された者で、その範囲では一切の代理権をもつ。販売部長や課長などがこれにあたる。任された種類・事項の中でだけ、代理ができるのである。
そして物品販売店舗の使用人である。これは、店舗内での物品販売について、代理権があるとみなされる者である。書店の店員が雑誌を売るような場面が典型である。
物品販売店舗の使用人の注意点
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | 物品を販売する店舗の使用人に限られる |
| みなし | 店舗内の物品販売について代理権があるとみなされる |
注意すべきは、この類型は物品を販売する店舗の使用人に限られることである。サービス(役務)を提供するだけの店は、この類型とは別に考えるのである。
なお、どの類型でも、代理権の制限は善意の第三者に対抗できない。取引の相手方を守るためである。
わかりやすく言い換えると
要するに、商業使用人とは「お店や会社のために働き、主人に代わって取引する人」であり、任され方に3段階ある。
つまり、①一番広いのが支配人。営業まるごとを任された大番頭である。
②次がある種類・特定の事項を任された人。たとえば「販売のこと」を任された販売部長は、販売の範囲なら代理できる。任された分野の中だけ、という限定つきである。
③一番せまいのが店員。物を売る店の店員は、その店での物品販売について代理権があるとみなされる。そして、どの段階でも、内輪の制限を知らないお客には通じない(善意の第三者に対抗できない)。支配人はこの3つのうちの一つだ、と心得るがよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:3類型と支配人の位置づけ
①商業使用人は支配人・ある種類等の使用人・物品販売店舗の使用人の3類型
②支配人は3類型のうちの一つにすぎない
🔴 次に出る:ある種類・特定事項の使用人
①任された種類・事項の範囲で代理権をもつ
②販売部長・課長などが典型
🟡 押さえると安定:物品販売店舗の使用人
①物品を販売する店舗の使用人に限られる
②店舗内の物品販売について代理権があるとみなされる
よくある間違い
①「商業使用人とは、支配人のことだけを指す」→ ✗ 商業使用人は3類型あり、支配人はそのうちの一つにすぎない。
②「ある種類の事項を任された使用人は、営業全般を代理できる」→ ✗ 代理できるのは、任された種類・事項の範囲に限られる。
③「物品販売店舗の使用人の規定は、すべての店舗に当てはまる」→ ✗ 物品を販売する店舗の使用人に限られ、役務を提供する店は別である。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(商業使用人の類型)
商業使用人に関する記述として、正しいものはどれか。
- 商業使用人とは支配人のことだけを指し、ほかの類型は存在しないものとされる
- 商業使用人は、営業主ではなく国に従属して営業を補助する者であるものとされる
- 商業使用人には3つの類型があり、支配人はそのうちの一つにすぎないものである
- 商業使用人は、いずれの類型も営業全般を代理する権限をもつものとされている
解答は 3 である。
理を解き明かそう。商業使用人には、支配人・ある種類等の使用人・物品販売店舗の使用人の3類型がある。支配人はそのうちの一つにすぎないのである。
選択肢1のように「支配人のことだけ」ではない。支配人を3類型の一つと位置づけて見極めるがよい。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 支配人だけでなく3類型がある |
| 2 | ✗ | 国ではなく営業主に従属する |
| 3 | ✓ | 3類型があり、支配人はその一つ |
| 4 | ✗ | 営業全般を代理するのは支配人に限られる |
オリジナル問題2(ある種類・特定事項の使用人)
ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人に関する記述として、正しいものはどれか。
- 任された種類や事項にかかわらず、営業に関する一切の行為を代理できるものとされる
- 国の許可を受けた範囲に限って、代理権をもつことができるものとされている
- 営業主の私生活上の行為についてのみ、代理する権限をもつものとされている
- 任された種類・特定の事項の範囲で代理権をもち、販売部長などが当たるものである
解答は 4 である。
本質を見極めよう。ある種類・特定の事項を任された使用人は、任された種類・事項の範囲で代理権をもつ。販売部長や課長などがこれにあたるのである。
選択肢1のように「一切の行為」を代理できるのは支配人の話である。こちらは任された範囲に限られるのである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 一切の代理は支配人で、こちらは範囲が限られる |
| 2 | ✗ | 国の許可を要件とするものではない |
| 3 | ✗ | 私生活上の行為を代理する者ではない |
| 4 | ✓ | 任された種類・事項の範囲で代理権をもつ |
オリジナル問題3(物品販売店舗の使用人)
物品販売店舗の使用人に関する記述として、正しいものはどれか。
- 役務だけを提供する店も含め、あらゆる店舗の使用人に当てはまるものとされる
- 物品販売店舗の使用人で、店舗内の物品販売について代理権があるとみなされる
- 店舗の外で行う取引についても、当然に代理権があるとみなされるものとされる
- 店舗の使用人は、営業全般について包括的な代理権をもつものとされている
解答は 2 である。
高みより理を見渡そう。物品販売店舗の使用人とは、物品を販売する店舗の使用人で、店舗内の物品販売について代理権があるとみなされる者である。書店の店員などがこれにあたる。
選択肢1のように「あらゆる店舗」ではない。物品を販売する店舗に限られるのである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 物品販売店舗に限られ、役務だけの店は別 |
| 2 | ✓ | 物品販売店舗の使用人で、店舗内販売の代理権擬制 |
| 3 | ✗ | みなされるのは店舗内の物品販売について |
| 4 | ✗ | 包括的な代理権をもつのは支配人 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 3類型 = 支配人・ある種類等の使用人・物品販売店舗の使用人。支配人はそのうちの一つ。
- 🔴 ある種類等の使用人 = 任された種類・事項の範囲で代理権をもつ(販売部長など)。
- 🟡 物品販売店舗の使用人 = 物品を販売する店舗の使用人で、店舗内の物品販売について代理権があるとみなされる。
次に学ぶ
- 支配人 ── 商業使用人の中で最も広い代理権をもつ者。3類型の頂点として押さえる。
- 商人 ── 商業使用人を使う側である商人。営業の主体を押さえる。
- 商行為 ── 使用人が担う営業上の行為の中身。商法の特別ルールが乗る行為。
執筆: SikakuQuest編集部