心裡留保とは(全体像)
心裡留保とは、「これは本心じゃない」と自分で承知のうえで、わざと本心と違う意思表示をすること。たとえば、売る気もないのに冗談で「この時計を1万円で売るよ」と言うような場合だ。
ここで大事なのが、その効果。原則は有効になる。なぜなら、本人はうそだとわかって表示しているのに、あとから「本心じゃなかった」と言って引っくり返せるのでは、それを信じた相手がかわいそうだからだ。
ただし、例外がある。
- 相手が悪意(本心でないと知っていた) … 無効。
- 相手が有過失(ふつうの注意で気づけた) … 無効。
相手が「うそだ」とわかっていた(または気づけた)なら、相手を守る必要はないので、無効になる。
詳しく:原則・例外と第三者をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。心裡留保は、「原則有効・例外無効」と「第三者保護」が問われやすい。
心裡留保のポイント
| 論点 | 結論 | 引っかけ |
|---|---|---|
| 原則 | 有効 | 「本心でない表示だから無効」ではない |
| 例外(無効) | 相手が悪意または有過失のとき | 相手が善意・無過失なら有効のまま |
| 第三者保護 | 無効を善意の第三者に対抗できない | 「誰にでも無効を主張できる」ではない |
いちばん引っかかるのが原則。「本心と違う表示なんだから無効では?」と直感的に思いがちだが、原則は有効。無効になるのは、相手が悪意または有過失の場合だけだ。
そして第三者保護。例外的に無効になる場合でも、その無効を善意の第三者(事情を知らずに取引に入ってきた人)に対しては対抗できない。たとえば、冗談で売った相手から、さらにその物を買った善意の人がいたら、その人は守られる。2020年の民法改正で、このルールが明文化された。
わかりやすく言い換えると
つまり、心裡留保は「うそだとわかって言った以上、原則は引っくり返せない」とイメージするとつかみやすい。言った本人の都合より、信じた相手や取引の安全を優先する。
要するに、引っくり返せる(無効になる)のは、相手も「これはうそだ」とわかっていた(または気づけた)ときだけ。相手がだまされていないなら、わざわざ守る必要はないからだ。
そして、たとえ無効になっても、事情を知らずに後から関わった善意の第三者には、その無効をぶつけられない——ここが試験のポイントになる。
試験のツボ
🔴 一番出る:原則有効・例外無効
①心裡留保は原則として有効
②相手が悪意(知っていた)または有過失(気づけた)のときだけ無効
🔴 次に出る:第三者保護
①無効になる場合でも、善意の第三者には対抗できない
②2020年の民法改正で明文化された
🟡 押さえると安定:考え方
①うそとわかって表示した本人より、信じた相手や取引の安全を優先
②だから原則は有効になる
よくある間違い
①「心裡留保は、本心でない表示だから常に無効だ」→ ✗ 原則は有効。無効になるのは相手が悪意または有過失のときだけ。
②「心裡留保による無効は、誰に対しても主張できる」→ ✗ 善意の第三者には対抗できない(2020年改正で明文化)。
③「相手が善意・無過失でも、本心でなければ無効になる」→ ✗ 相手が善意・無過失なら有効のまま。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(原則の効果)
心裡留保の原則的な効果について、正しいものはどれか。
- 心裡留保による意思表示は、本心でない以上つねに無効になるとされているのである
- 心裡留保による意思表示は、相手が善意でも当然に取消できるとされているのである
- 心裡留保による意思表示は、原則として有効で、無効になるのは例外だとされている
- 心裡留保による意思表示は、相手の承諾がなければ成立しないとされているのである
解答は 3 である。
心裡留保による意思表示は、原則として有効なのだよ。うそとわかって表示した本人より、信じた相手や取引の安全を優先するからである。
選択肢1「つねに無効」、選択肢2「相手が善意でも取消できる」、選択肢4「相手の承諾がなければ成立しない」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 原則は有効 |
| 2 | ✗ | 相手が善意なら有効のまま |
| 3 | ✓ | 原則として有効で正しい |
| 4 | ✗ | 相手の承諾は成立の要件ではない |
オリジナル問題2(例外で無効になる場合)
心裡留保が無効になる場合について、正しいものはどれか。
- 相手が善意・無過失であっても、本心でない以上は無効になるとされているのである
- 相手が悪意(本心でないと知っていた)または有過失のときに無効になる
- 心裡留保は、表意者が望めば自由に無効にできるとされているのである
- 心裡留保は、相手が善意であるかぎりつねに無効になるとされているのである
解答は 2 である。
心裡留保が無効になるのは、相手が悪意(本心でないと知っていた)または有過失のときなのだよ。
選択肢1「善意・無過失でも無効」、選択肢4「善意であるかぎりつねに無効」は原則と例外が逆で誤り。選択肢3「表意者が望めば無効にできる」も誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 善意・無過失なら有効のまま |
| 2 | ✓ | 相手が悪意または有過失で無効で正しい |
| 3 | ✗ | 表意者の希望で無効になるのではない |
| 4 | ✗ | 善意なら有効のまま |
オリジナル問題3(第三者保護)
心裡留保による無効と第三者の関係について、正しいものはどれか。
- 心裡留保による無効は、善意の第三者に対しても当然に対抗できるとされている
- 心裡留保による無効は、悪意の第三者に対しては対抗できないとされているのである
- 心裡留保による無効は、第三者にはいっさい関係がないものとされているのである
- 心裡留保による無効は、善意の第三者に対しては対抗できないものとされている
解答は 4 である。
心裡留保による無効は、善意の第三者には対抗できないのだよ(2020年改正で明文化)。
選択肢1「善意の第三者にも対抗できる」は逆で誤り。選択肢2「悪意の第三者には対抗できない」も逆で誤り。選択肢3「第三者にいっさい関係ない」も誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 善意の第三者には対抗できない |
| 2 | ✗ | 対抗できないのは善意の第三者 |
| 3 | ✗ | 第三者保護の問題になる |
| 4 | ✓ | 善意の第三者に対抗できないで正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 原則・例外 = 原則は有効。相手が悪意または有過失のときだけ無効。
- 🔴 第三者保護 = 無効を善意の第三者に対抗できない(2020年改正で明文化)。
- 🟡 考え方 = うそとわかって表示した本人より、信じた相手や取引の安全を優先する。
次に学ぶ
- 虚偽表示 ── 相手と示し合わせたうその意思表示。心裡留保(一人)との違いを押さえられる。
- 意思表示 ── 心裡留保はその「瑕疵」の一つ。全体像から位置づけられる。
- 錯誤 ── 勘違いによる意思表示。瑕疵の類型をまとめて整理できる。
執筆: SikakuQuest編集部