虚偽表示とは(全体像)
虚偽表示とは、当事者どうしが口裏を合わせて、本心ではない見せかけの意思表示をすること。心裡留保が「一人でうそをつく」のに対し、虚偽表示は「二人で示し合わせてうそをつく」点が違う。
効果は次のとおり。
- 当事者間 … 無効。両方が本心でないと知っているので、効力を認める必要がない。
- 第三者との関係 … 善意の第三者には、無効を対抗できない。
ここで特に問われるのが、第三者保護の要件だ。見せかけの外観(うその売買など)を信じて取引に入った第三者は、保護される。そして、その保護を受けるための条件が、ほかの制度とは少し違う。
詳しく:第三者の要件をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。虚偽表示は、「第三者は善意でよい(無過失不要)」と「94条2項の類推適用」が問われやすい。
虚偽表示のポイント
| 論点 | 結論 | 引っかけ |
|---|---|---|
| 当事者間 | 無効 | 通謀したうそだから |
| 第三者保護 | 善意の第三者に無効を対抗できない | 「誰にでも無効を主張できる」ではない |
| 第三者の要件 | 善意であればよい(無過失は不要) | 「善意・無過失が必要」ではない |
いちばん引っかかるのが第三者の要件。虚偽表示の第三者は、善意(事情を知らない)であれば保護される。無過失(落ち度がないこと)までは要求されない——ここが、心裡留保や錯誤・詐欺の第三者保護(善意かつ無過失が必要)との大きな違いだ。「虚偽表示の第三者も無過失が必要」と読むと間違える。
さらに、判例は94条2項を類推適用して、虚偽の外観を作り出した人の責任を広く認める(権利外観法理)。ただし、類推適用には条文そのままではなく、外観を作り出した本人に責任(帰責性)があることなどの要件が求められる。
わかりやすく言い換えると
つまり、虚偽表示は「二人で口裏を合わせた、見せかけの取引」とイメージするとつかみやすい。当事者の間では、見せかけなので無効だ。
要するに、その見せかけを本気にして関わってきた第三者は守られ、当事者は「あれはうそだった(無効)」と言えない。しかも、この第三者は「知らなかった(善意)」だけで守られ、落ち度がないこと(無過失)まではいらない。
ここが心裡留保や錯誤との違い。それらの第三者保護は「善意かつ無過失」が必要だが、虚偽表示は善意だけでよい——この差が試験で狙われる。
試験のツボ
🔴 一番出る:第三者は善意でよい(無過失不要)
①虚偽表示の善意の第三者には、無効を対抗できない
②第三者は善意であればよく、無過失までは不要
🔴 次に出る:当事者間は無効
①通謀したうその意思表示なので、当事者間では無効
②本心でないと両方が知っているから
🟡 押さえると安定:心裡留保との違い
①心裡留保は一人でうそ、虚偽表示は二人で示し合わせてうそ
②94条2項は判例で類推適用される(権利外観法理)
よくある間違い
①「虚偽表示の第三者は、善意かつ無過失でなければ保護されない」→ ✗ 善意であればよい。無過失までは不要(判例・通説)。
②「虚偽表示は、第三者に対しても当然に無効を主張できる」→ ✗ 善意の第三者には無効を対抗できない。
③「虚偽表示は、一人で本心と違う表示をすることだ」→ ✗ それは心裡留保。虚偽表示は相手と通謀して行う。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(虚偽表示の意味)
虚偽表示について、正しいものはどれか。
- 虚偽表示は相手と通謀して行ううその意思表示で、当事者間では無効である
- 虚偽表示は、一人で本心と違う表示をすることをいうものとされているのである
- 虚偽表示は、勘違いによって本心と違う表示をすることをいうものとされている
- 虚偽表示は、当事者間でも当然に有効なものとされているのである
解答は 1 である。
虚偽表示は、相手と通謀して行ううその意思表示で、当事者間では無効なのだよ。
選択肢2「一人で本心と違う表示」は心裡留保、選択肢3「勘違いによる表示」は錯誤の説明で誤り。選択肢4「当事者間でも有効」も誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 通謀したうそ・当事者間無効で正しい |
| 2 | ✗ | これは心裡留保の説明 |
| 3 | ✗ | これは錯誤の説明 |
| 4 | ✗ | 当事者間では無効 |
オリジナル問題2(第三者の要件)
虚偽表示の第三者保護について、正しいものはどれか。
- 虚偽表示の第三者は、善意かつ無過失でなければ保護されないとされているのである
- 虚偽表示の第三者は、悪意であっても当然に保護されるとされているのである
- 虚偽表示の善意の第三者は保護され、善意であれば無過失までは要らないとされる
- 虚偽表示は、第三者に対しても当然に無効を対抗できるものとされているのである
解答は 3 である。
虚偽表示の善意の第三者は保護され、無過失までは要求されないのだよ。心裡留保や錯誤の第三者保護(善意かつ無過失)との違いである。
選択肢1「善意かつ無過失が必要」は誤り。選択肢2「悪意でも保護」、選択肢4「第三者にも無効を対抗できる」も誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 無過失までは不要 |
| 2 | ✗ | 保護されるのは善意の第三者 |
| 3 | ✓ | 善意でよく無過失不要で正しい |
| 4 | ✗ | 善意の第三者には対抗できない |
オリジナル問題3(94条2項の類推適用)
虚偽表示の規定の類推適用について、判例の立場から正しいものはどれか。
- 94条2項は、いかなる場合も類推適用されることはないとされているのである
- 94条2項の類推適用には、外観を作り出した本人の帰責性などが必要だとされる
- 94条2項の類推適用は、第三者が悪意でも認められるものとされているのである
- 94条2項の類推適用は、本人に帰責性がなくても当然に認められるとされている
解答は 2 である。
94条2項の類推適用には、虚偽の外観を作り出した本人の帰責性などが求められるのだよ(権利外観法理)。
選択肢1「いかなる場合も類推適用されない」、選択肢3「第三者が悪意でも認められる」、選択肢4「帰責性がなくても当然認められる」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 判例は類推適用を認める |
| 2 | ✓ | 本人の帰責性などが求められるで正しい |
| 3 | ✗ | 保護されるのは善意の第三者 |
| 4 | ✗ | 本人の帰責性が必要 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 第三者の要件 = 善意であればよい(無過失までは不要)。心裡留保・錯誤・詐欺との違い。
- 🔴 当事者間 = 通謀したうそなので無効。善意の第三者には対抗できない。
- 🟡 94条2項の類推適用 = 虚偽の外観を作った本人の帰責性などが求められる(権利外観法理)。
次に学ぶ
- 心裡留保 ── 一人でうそをつく意思表示。虚偽表示(二人で通謀)との違いを押さえられる。
- 錯誤 ── 勘違いによる意思表示。第三者保護の要件の違いを比べられる。
- 意思表示 ── 虚偽表示はその「瑕疵」の一つ。全体像から位置づけられる。
執筆: SikakuQuest編集部