信義則とは(全体像)
信義則とは、お互いに信義に従い、誠実に行動すべきという原則のこと。もとは民法の原則だが、行政活動にも当てはまるとされている。
ポイントは「信頼の保護」。行政庁の言動(たとえば「これは課税しません」という回答など)によって、私人が信頼してある行動をとった場合に、その信頼をあとから裏切る行政行為は、違法になりうる。
ただし、これは無制限ではない。信義則を持ち出せば何でも認められるわけではなく、法律による行政の原理(法律にしたがって行政が動く)との調整が必要になる。
詳しく:租税分野での限定と法律による行政との関係
ここが心臓部。信義則がどこまで適用されるか、そして法律による行政との関係を押さえる。
信義則の適用(租税分野の判例)
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 租税分野での信義則 | 特別の事情がある場合に限って適用される |
| 原則 | 法律による行政(租税法律主義)が優先 |
判例は、租税の分野では信義則の適用に慎重で、特別の事情がある場合に限って適用するとしている。税金は法律にしたがって公平に課されるべき(租税法律主義)なので、信義則で簡単にくつがえせては困るからだ。
そして大事なのが、信義則は法律による行政より優先する原則ではないこと。
信義則と法律による行政の関係
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 法律による行政が優先 |
| 信義則 | 例外的な調整として働く(特別の事情があるとき) |
つまり、信義則は「行政も誠実であれ」という大切な考え方だが、法律による行政を上回って優先するわけではなく、例外的に調整するもの。「信義則があるから法律を無視してよい」ではない。
わかりやすく言い換えると
つまり、信義則は「行政も約束や信頼を裏切るな」という考え方。行政庁の言動を信じた私人を守るために働く。
ただし「租税では特別の事情があるときだけ・原則は法律による行政が優先」がカギ。要するに、信義則は法律を上回る切り札ではなく、例外的な調整、と覚えるとよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:信頼の保護
行政庁の言動で私人が抱いた信頼を裏切る行為は、違法になりうる。
🔴 次に出る:租税分野での限定適用
租税の分野では、特別の事情がある場合に限って信義則が適用される。
🟡 押さえると安定:法律による行政が原則
信義則は法律による行政より優先するわけではなく、例外的な調整として働く。
よくある間違い
①「信義則は、すべての行政分野で広く自由に適用される」→ ✗ 判例は限定的で、特に租税分野では特別の事情が必要。
②「信義則は、法律による行政より常に優先する」→ ✗ 原則は法律による行政。信義則は例外的な調整にとどまる。
③「信義則は民法だけの原則で、行政には関係がない」→ ✗ もとは民法の原則だが、行政活動にも当てはまる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(信義則の意味)
信義則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 信義則は民法だけの原則であり、行政活動にはいっさい当てはまらないものとされる
- 信義則は、行政が私人の信頼をいくら裏切っても問題ないことを意味するものとされる
- 信義則は、行政が法律を自由に無視してよいことを意味するものとされている
- 信義則は行政にも当てはまり、私人の信頼を裏切る行為は違法になりうるものである
解答は 4 である。
信義則は行政にも当てはまり、行政庁の言動で私人が抱いた信頼を裏切る行為は違法になりうるのである。信頼の保護がその核心だ。
選択肢1の「行政には当てはまらない」、選択肢2の「信頼を裏切ってよい」、選択肢3の「法律を無視してよい」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 行政活動にも当てはまる |
| 2 | ✗ | 信頼を裏切る行為は違法になりうる |
| 3 | ✗ | 法律を無視してよい意味ではない |
| 4 | ✓ | 信頼を裏切る行為は違法になりうるで正しい |
オリジナル問題2(租税分野での適用)
租税分野における信義則の適用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 租税分野では、信義則がどのような事案にも広く無制限に適用されるものとされている
- 租税分野では、信義則は特別の事情がある場合に限って適用されるものとされている
- 租税分野では、信義則はいかなる場合も適用されることがないものとされている
- 租税分野では、信義則が租税法律主義に対して常に優先するものとされている
解答は 2 である。
租税の分野では、信義則は特別の事情がある場合に限って適用されるのである。税は法律にしたがい公平に課されるべきゆえ、判例は慎重なのだ。
選択肢1の「無制限に適用」、選択肢3の「いかなる場合も適用されない」、選択肢4の「常に優先」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 無制限ではなく限定的 |
| 2 | ✓ | 特別の事情がある場合に限り適用で正しい |
| 3 | ✗ | 適用される場合もある |
| 4 | ✗ | 租税法律主義が原則として優先 |
オリジナル問題3(法律による行政との関係)
信義則と法律による行政の関係に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 信義則は法律による行政に常に優先し、法律を上回る切り札になるものとされている
- 信義則があれば、行政は法律を無視して私人を救済しなければならないものとされる
- 原則は法律による行政が優先し、信義則は例外的な調整として働くという関係にある
- 信義則と法律による行政は、まったく関係のない別々の問題であるものとされている
解答は 3 である。
原則は法律による行政が優先し、信義則は例外的な調整として働くのである。信義則は大切な法理だが、法律を上回る切り札ではないと心得よ。
選択肢1の「常に優先」、選択肢2の「法律を無視して救済」、選択肢4の「まったく関係がない」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 法律による行政を上回る切り札ではない |
| 2 | ✗ | 法律を無視するわけではない |
| 3 | ✓ | 法律による行政が原則・信義則は調整で正しい |
| 4 | ✗ | 両者は調整が問題になる関係 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 信頼の保護 = 行政庁の言動で私人が抱いた信頼を裏切る行為は、違法になりうる。
- 🔴 租税分野での限定適用 = 信義則は特別の事情がある場合に限って適用される(判例)。
- 🟡 法律による行政が原則 = 信義則は法律による行政を上回る切り札ではなく、例外的な調整にとどまる。
次に学ぶ
- 法律による行政の原理 ── 信義則と調整される、行政法の大原則。
- 平等原則 ── 信義則と並ぶ、行政を縛る一般原則。
- 比例原則 ── 同じく一般原則の一つ。あわせて整理する。
執筆: SikakuQuest編集部