法律による行政の原理とは(全体像)
法律による行政の原理とは、行政の活動は法律に基づいて行われなければならず、法律に違反してもいけないという原則のこと。役所が勝手なことをせず、国民が選んだ代表のつくった法律にしたがって動く、という近代国家の基本的な考え方。
中身は3つに分かれる。
- 法律の優位 … 行政は法律に違反できない。法律と行政がぶつかれば、法律が勝つ。
- 法律の留保 … 一定の行政活動には、法律の根拠が必要。
- 法律の法規創造力 … 国民の権利義務を新しく作り出せるのは、法律だけ。
3つまとめて「法律による行政の原理」。どれか1つだけではない点に注意。
詳しく:3つの内容と法律の留保
ここが心臓部。3つの内容を整理し、いちばん議論のある「法律の留保」の範囲をおさえる。
法律による行政の原理の3つの内容
| 内容 | 意味(やさしく言うと) |
|---|---|
| 法律の優位 | 行政は法律に違反できない |
| 法律の留保 | 一定の行政活動には法律の根拠が必要 |
| 法律の法規創造力 | 新しい権利義務を作れるのは法律だけ |
このうち法律の留保は、「どこまでの行政活動に法律の根拠を求めるか」で学説が分かれる。代表的な考え方が侵害留保説(通説)。
法律の留保の範囲(侵害留保説=通説)
| 行政の種類 | 法律の根拠は? |
|---|---|
| 侵害的な行政(権利を制限・義務を課す) | 必要 |
| それ以外(給付など) | 必ずしも必要ではない |
侵害留保説は、国民の権利を制限したり義務を課したりする「侵害的な行政」には、必ず法律の根拠が必要とする考え方。たとえば税金を課すには法律の根拠が要る。一方、給付などすべての行政に根拠を求めるわけではない。「すべての行政に法律の根拠が必要」とする全部留保説もあるが、通説は侵害留保説。
わかりやすく言い換えると
つまり、法律による行政の原理は「役所は法律にしたがって動く」という土台。中身は「優位(違反できない)・留保(根拠がいる)・法規創造力(権利義務は法律だけ)」の3点セット。
留保のいちばんのポイントは「国民の不利益になる行政には、法律の根拠がいる(侵害留保説)」。要するに、権利を制限する側には特にきびしく根拠を求める、と覚えるとよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:3つの内容
①法律の優位 = 行政は法律に違反できない
②法律の留保 = 一定の行政には法律の根拠が必要
③法律の法規創造力 = 新しい権利義務を作れるのは法律だけ
🔴 次に出る:法律の留保(侵害留保説=通説)
国民の権利を制限・義務を課す侵害的な行政には、法律の根拠が必要。
🟡 押さえると安定:3つで一組
「法律の留保」だけが原理ではない。優位・留保・法規創造力の3つの総体。
よくある間違い
①「法律による行政の原理=法律の留保のことだけ」→ ✗ 優位・留保・法規創造力の3つの総体。留保だけではない。
②「侵害留保説では、すべての行政活動に法律の根拠が必要」→ ✗ 侵害的な行政に必要とする説。すべてに求めるのは全部留保説。
③「行政は、法律に違反しても問題ない」→ ✗ 法律の優位により、行政は法律に違反できない。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(3つの内容)
法律による行政の原理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 法律による行政の原理は、法律の留保だけを内容とするものとされている
- 法律による行政の原理は、行政が自由に法律を作れることを認めるものとされている
- 法律による行政の原理は、法律の優位・法律の留保・法律の法規創造力を内容とする
- 法律による行政の原理は、行政が法律に違反してもよいことを認めるものとされている
解答は 3 である。
法律による行政の原理は、法律の優位・法律の留保・法律の法規創造力の3つを内容とするのである。どれか1つではなく、3つで一組と心得よ。
選択肢1は「留保だけ」とする点が誤りである。選択肢2の「行政が自由に法律を作れる」、選択肢4の「法律に違反してもよい」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 留保だけではなく3つの総体 |
| 2 | ✗ | 法律を作るのは行政ではない |
| 3 | ✓ | 優位・留保・法規創造力の3つで正しい |
| 4 | ✗ | 法律の優位により違反できない |
オリジナル問題2(法律の留保)
法律の留保に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 通説である侵害留保説では、国民の権利を制限する侵害的な行政に法律の根拠が必要とされる
- 侵害留保説では、給付など国民に利益を与える行政についても必ず法律の根拠が必要とされている
- 法律の留保とは、行政が法律に違反してはならないことを意味するものとされている
- 法律の留保の範囲については、学説の対立はまったくないものとされている
解答は 1 である。
通説たる侵害留保説は、国民の権利を制限したり義務を課す侵害的な行政に法律の根拠を要すると説くのである。たとえば税の賦課がその典型だ。
選択肢2はすべての行政に根拠を求める全部留保説の説明であり誤りである。選択肢3は法律の優位の説明であり、選択肢4の「学説の対立がない」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 侵害的な行政に法律の根拠が必要で正しい |
| 2 | ✗ | それは全部留保説 |
| 3 | ✗ | それは法律の優位の説明 |
| 4 | ✗ | 留保の範囲は学説が対立する |
オリジナル問題3(法律の優位)
法律の優位に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 法律の優位とは、行政が新しい権利義務を自由に作れることを意味するものとされている
- 法律の優位があっても、行政は法律に違反する規則を有効に作れるものとされている
- 法律の優位とは、行政の活動より法律の方が優先されることを意味するものとされている
- 法律の優位により、行政は法律に違反することができず、違反する行政は許されない
解答は 4 である。
法律の優位により、行政は法律に違反することができないのである。法律と行政がぶつかれば、法律が勝つということだ。
選択肢1は法規創造力に関する誤った説明である。選択肢2の「違反する規則を有効に作れる」は誤りである。選択肢3は方向としては近いが、優位の核心は「行政が法律に違反できない」点にある。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | それは法規創造力に関する内容 |
| 2 | ✗ | 法律違反の規則は無効 |
| 3 | ✗ | 核心は行政が法律に違反できない点 |
| 4 | ✓ | 行政は法律に違反できないで正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 3つの内容 = 法律の優位(違反できない)・法律の留保(根拠がいる)・法律の法規創造力(権利義務は法律だけ)。
- 🔴 法律の留保(侵害留保説=通説) = 国民の権利を制限・義務を課す侵害的な行政には法律の根拠が必要。
- 🟡 3つで一組 = 「法律の留保」だけが原理ではない。優位・留保・法規創造力の総体。
次に学ぶ
- 法の支配 ── 国家権力を法で縛る考え方。法律による行政の原理の土台になる。
- 国民主権 ── 行政が従う法律を、国民の代表がつくるという基盤。
- 違憲審査権 ── その法律が憲法に従っているかをチェックするしくみ。
執筆: SikakuQuest編集部