違憲審査権とは(全体像)
違憲審査権とは、裁判所が「この法律やこの処分は憲法に反していないか」をチェックする力のこと。反していると判断されたものは、効力を否定されうる。
なぜ大事かというと、これがあるからこそ憲法を頂点とする法の秩序が守られるから。国会が作った法律でも、中身が憲法に反していれば、裁判所がそれを正せる。法の支配を実際に動かすエンジンのような役割だ。
押さえどころは次の3点。
- 誰が持つか … 最高裁判所はもちろん、下級裁判所も持つ(判例)。
- どう行うか … 具体的な事件を解決する中で、必要な範囲だけ審査する(付随的審査制)。
- 何を審査するか … 法律・命令・規則・処分など。
なお、過去には法律などが違憲とされた代表的な判決がいくつもある。違憲審査権が「飾り」ではなく実際に機能している証拠として押さえておきたい。
詳しく:付随的審査制と抽象的審査制をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。違憲審査権は、「どんなときに審査するか」の区別が問われやすい。
付随的審査制 と 抽象的審査制
| 付随的審査制(日本) | 抽象的審査制(日本は不採用) | |
|---|---|---|
| きっかけ | 具体的な事件の裁判の中で | 具体的な事件がなくても |
| 審査の範囲 | 事件の解決に必要な範囲だけ | 法令そのものを広く審査 |
| 担い手のイメージ | 通常の裁判所 | 専門の憲法裁判所など |
| 日本の採用 | こちらを採用 | 採用していない |
ここで2つ、間違えやすい点がある。
一つめは主体。条文では最高裁が「終審裁判所」とされているため「最高裁だけ」と思いがちだが、下級裁判所も違憲審査権を持つ、というのが判例の立場だ。
二つめは審査のしかた。日本は、ドイツや韓国のような憲法裁判所が事件と切り離して法令を審査する「抽象的審査制」ではなく、具体的な事件の解決に必要な範囲で審査する「付随的審査制」を採っている。
わかりやすく言い換えると
つまり、違憲審査権は「裁判所が持つ、憲法のものさし」とイメージするとつかみやすい。
事件が持ち込まれると、裁判所はそのものさしを当てて「この法律やこの処分は憲法からはみ出していないか」を測る。はみ出していれば、その部分の効力を否定できる。
要するに、日本のものさしは「事件があってはじめて、必要な分だけ当てる」タイプ(付随的)。事件と関係なく法律全体を測りにいく(抽象的)タイプではない。そして、このものさしを使えるのは最高裁だけでなく、下級裁判所も使えるのがポイントだ。
試験のツボ
🔴 一番出る:審査の主体(誰が持つか)
①最高裁判所だけでなく、下級裁判所も違憲審査権を持つ(判例)
②条文に「最高裁判所」とあるが「最高裁だけ」ではない
🔴 次に出る:付随的審査制(どう行うか)
①日本は、具体的な事件の解決に必要な範囲で審査する
②事件がなくても法令を審査する抽象的審査制は採用していない
🟡 押さえると安定:対象と効果
①対象は法律・命令・規則・処分など
②違憲とされたものは効力を否定されうる
よくある間違い
①「違憲審査ができるのは最高裁だけ」→ ✗ 下級裁判所も違憲審査権を持つ(判例の立場)。
②「日本も抽象的審査制を採用している」→ ✗ 日本は付随的審査制。具体的な事件の解決に必要な範囲で審査する。
③「事件がなくても、裁判所に法律の合憲性だけを尋ねられる」→ ✗ 具体的な事件があってはじめて、その解決に必要な範囲で審査される。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(違憲審査権の主体)
違憲審査権を行使できる主体について、正しいものはどれか。
- 違憲審査権は最高裁判所だけが持つ権限で、下級裁判所は一切行使できないとされている
- 違憲審査権は最高裁判所が終審だが、下級裁判所も行使できるとするのが判例の立場である
- 違憲審査権は国会が持つ権限で、裁判所には憲法適合性を判断する権限がないとされている
- 違憲審査権は内閣が持つ権限で、法律の憲法適合性は内閣が最終的に決めるとされている
解答は 2 である。
最高裁は終審の裁判所だが、下級裁判所も違憲審査権を持つ、とするのが判例の立場なり。「最高裁だけ」ではない。
選択肢1「下級裁判所は一切行使できない」は誤り。選択肢3「国会が持つ」、選択肢4「内閣が最終的に決める」も誤りなり。憲法適合性を審査するのは裁判所である。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 下級裁判所も違憲審査権を持つ |
| 2 | ✓ | 下級裁判所も行使できるで正しい |
| 3 | ✗ | 審査するのは国会ではなく裁判所 |
| 4 | ✗ | 内閣が決めるのではない |
オリジナル問題2(付随的審査制)
日本の違憲審査の方式について、正しいものはどれか。
- 日本は抽象的違憲審査制を採用し、具体的事件がなくても法律の合憲性を審査できるとされる
- 日本は具体的事件があっても、その解決と関係なく広く法令を審査する制度を採用している
- 日本は付随的違憲審査制を採用し、具体的事件の解決に必要な範囲で違憲審査を行うとされる
- 日本は違憲審査の制度を持たず、法律の合憲性はもっぱら国会が判断するものとされている
解答は 3 である。
日本は付随的違憲審査制を採るなり。具体的な事件の解決に必要な範囲で審査する方式である。
選択肢1・2のように「事件がなくても」「事件と関係なく広く」審査するのは抽象的審査制で、日本は採らぬ。選択肢4「制度を持たない」も誤りなり。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 抽象的審査制は採用していない |
| 2 | ✗ | 事件の解決と切り離して審査はしない |
| 3 | ✓ | 事件の解決に必要な範囲で審査するで正しい |
| 4 | ✗ | 違憲審査の制度は存在する |
オリジナル問題3(対象と効果)
違憲審査の対象と効果について、正しいものはどれか。
- 違憲審査の対象は法律・命令・規則・処分などで、違憲とされたものは効力を失いうる
- 違憲審査の対象は法律だけで、命令や規則や処分は対象にならないものとされている
- 違憲審査では、違憲とされた法律もそのまま効力を持ち続けると一律に決められている
- 違憲審査の対象は条約だけで、国内の法律や処分は審査の対象外とされているものである
解答は 1 である。
違憲審査の対象は、法律・命令・規則・処分など広くおよぶ。そして違憲とされたものは、効力を否定されうるなり。
選択肢2「法律だけ」、選択肢4「条約だけ」は対象を狭くとらえた誤り。選択肢3「違憲でも効力を持ち続ける」も誤りなり。違憲とされれば効力は否定されうる。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 対象は広く、違憲なら効力を失いうる |
| 2 | ✗ | 命令・規則・処分も対象になる |
| 3 | ✗ | 違憲なら効力を否定されうる |
| 4 | ✗ | 国内の法律や処分も対象になる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 主体 = 最高裁だけでなく、下級裁判所も違憲審査権を持つ(判例)。
- 🔴 方式 = 日本は付随的審査制(具体的事件の解決に必要な範囲で審査)。抽象的審査制は不採用。
- 🟡 対象と効果 = 対象は法律・命令・規則・処分など。違憲とされたものは効力を否定されうる。
次に学ぶ
- 法の支配 ── 違憲審査権が支える大原則。権力を法で縛り、法律の中身まで人権に資することを求める考え方。
- 裁判所の役割 ── 違憲審査権を担う裁判所のしくみ。司法権の独立とあわせて押さえると理解が深まる。
- 憲法の最高法規性 ── なぜ法律より憲法が優先するのか。違憲審査が成り立つ前提になる考え方。
執筆: SikakuQuest編集部