違憲審査制とは(全体像)
違憲審査制とは、「この法律や処分は憲法に反していないか」を裁判所がチェックするしくみのこと。
ここで押さえたいのが、日本がどんなタイプの違憲審査制を採っているかだ。
- 付随的審査制(日本) … 具体的な事件の裁判の中で、解決に必要な範囲だけ審査する。
- 抽象的審査制(日本は不採用) … 具体的な事件がなくても、専門の憲法裁判所が法令そのものを審査する。
日本には憲法裁判所は存在しない。事件が起きてはじめて、その解決のために違憲審査が行われる(警察予備隊事件)。「事件がなくても法令の合憲性を裁判所に尋ねられる」と読むのは誤りだ。
そして、もう一つの大きな論点が、違憲とされた法令がどうなるか(違憲判決の効力)だ。
詳しく:審査の型と違憲判決の効力をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。違憲審査制は、「付随的か抽象的か」と「違憲判決の効力」が問われやすい。
違憲審査制のポイント
| 論点 | 結論 | 引っかけ |
|---|---|---|
| 審査の型 | 付随的審査制(具体的事件の中で行う) | 抽象的審査制は不採用 |
| 憲法裁判所 | 日本には存在しない | 「憲法裁判所がある」ではない |
| 違憲判決の効力 | 個別的効力説(当該事件かぎり)が通説 | 「法令が自動的に消える」ではない |
まず審査の型。日本は、具体的な事件の解決に必要な範囲だけ審査する付随的審査制だ。ドイツや韓国のように、事件と切り離して法令を審査する憲法裁判所はない。
次に違憲判決の効力。ある法律が違憲と判断されたとき、その法律はどうなるか。通説の個別的効力説では、違憲の効力はその事件にかぎって及ぶ。つまり、判決だけで法律が世の中から自動的に消えるわけではなく、最終的には国会が法改正などで対応する。これに対し、違憲判決で法令そのものが一般的に無効になると考えるのが一般的効力説(少数説)だ。
わかりやすく言い換えると
つまり、違憲審査制は「事件というきっかけがあってはじめて動く、憲法のチェック機能」とイメージするとつかみやすい。
日本には、事件と関係なく法律を審査する専門の裁判所(憲法裁判所)はない。あくまで、目の前の事件を解決するために、その必要な範囲で憲法のものさしを当てる(付随的審査制)。
要するに、違憲と判断されても、通説ではその効力はその事件かぎり(個別的効力説)。判決が出た瞬間に法律が消えてなくなる、とはならない——あとは国会が法律を直して対応する、という流れだ。
試験のツボ
🔴 一番出る:付随的審査制と憲法裁判所の不存在
①日本は付随的審査制(具体的事件の中で必要な範囲で審査)
②憲法裁判所はなく、抽象的審査制は採用していない
🔴 次に出る:違憲判決の効力
①通説(個別的効力説)では、効力は当該事件かぎり
②判決だけで法令が自動的に消えるわけではない(国会が法改正で対応)
🟡 押さえると安定:審査の主体
①最高裁は終審裁判所
②下級裁判所も違憲審査権をもつ(判例)
よくある間違い
①「日本にも憲法裁判所があり、抽象的違憲審査ができる」→ ✗ 日本は付随的審査制。憲法裁判所は存在しない。
②「違憲判決が出ると、その法令は自動的に一般的に無効になる」→ ✗ 通説(個別的効力説)では効力は当該事件かぎり。国会が法改正で対応する。
③「事件がなくても、裁判所に法令の合憲性だけを審査してもらえる」→ ✗ 具体的な事件の解決に必要な範囲で審査される(付随的審査制)。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(違憲審査制の型)
日本の違憲審査制の型について、正しいものはどれか。
- 日本では、具体的事件がなくても法令を審査する抽象的審査制が採用されている
- 日本は、具体的事件の解決に必要な範囲で審査する付随的審査制を採用している
- 日本では、違憲審査はもっぱら国会が行うものとされているのである
- 日本では、違憲審査の制度そのものが存在しないものとされているのである
解答は 2 である。
日本は、具体的事件の解決に必要な範囲で審査する付随的審査制を採用しているなり(警察予備隊事件)。
選択肢1「抽象的審査制」は日本では採用しておらず誤り。選択肢3「国会が行う」、選択肢4「制度そのものが存在しない」も誤りなり。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 抽象的審査制は採用していない |
| 2 | ✓ | 付随的審査制で正しい |
| 3 | ✗ | 審査するのは裁判所 |
| 4 | ✗ | 違憲審査の制度は存在する |
オリジナル問題2(憲法裁判所の有無)
日本の違憲審査の仕組みについて、正しいものはどれか。
- 日本には憲法裁判所があり、事件と切り離して法令を審査できるとされているのである
- 日本には憲法裁判所があり、すべての違憲審査をそこが独占するとされているのである
- 日本には憲法裁判所はなく、通常の裁判所が具体的事件の中で違憲審査を行うとされる
- 日本では、内閣に置かれた機関が法令の合憲性を審査するものとされているのである
解答は 3 である。
日本には憲法裁判所はなく、通常の裁判所が具体的事件の中で違憲審査を行うなり。
選択肢1・2「憲法裁判所がある」は誤り。日本に憲法裁判所は存在しない。選択肢4「内閣の機関が審査」も誤りなり。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 憲法裁判所は存在しない |
| 2 | ✗ | 憲法裁判所による独占もない |
| 3 | ✓ | 通常の裁判所が事件の中で審査で正しい |
| 4 | ✗ | 内閣の機関が審査するのではない |
オリジナル問題3(違憲判決の効力)
違憲判決の効力について、通説の立場から正しいものはどれか。
- 違憲とされた効力はその事件かぎりとするのが通説で、法令は自動的には消えない
- 違憲と判断された法令は、判決と同時に一般的・自動的に消滅するとされているのである
- 違憲判決が出ても、その法令はそのまま有効に存続し続けるとされているのである
- 違憲判決の効力については、裁判所がそのつど自由に決めてよいとされているのである
解答は 1 である。
通説(個別的効力説)では、違憲とされた効力はその事件かぎりで、法令は判決だけで自動的には消えないなり。最終的には国会が法改正などで対応する。
選択肢2「一般的・自動的に消滅」は一般的効力説に寄った誤り。選択肢3「そのまま有効に存続し続ける」、選択肢4「裁判所が自由に決めてよい」も誤りなり。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 個別的効力説(当該事件かぎり)で正しい |
| 2 | ✗ | 自動的に一般消滅はしない(個別的効力説) |
| 3 | ✗ | 当該事件では効力が否定される |
| 4 | ✗ | 効力はそのつど自由に決まるのではない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 審査の型 = 付随的審査制(具体的事件の中で行う)。憲法裁判所はなく、抽象的審査制は不採用。
- 🔴 違憲判決の効力 = 通説(個別的効力説)では当該事件かぎり。判決だけで法令は自動的に消えない。
- 🟡 審査の主体 = 最高裁は終審。下級裁判所も違憲審査権をもつ(判例)。
次に学ぶ
- 違憲審査権 ── 誰がこの審査を行えるか。下級裁判所も持つ点とあわせて押さえられる。
- 司法権の独立 ── 違憲審査を担う裁判所の独立。セットで司法の役割が見える。
- 法の支配 ── 違憲審査制が支える大原則。憲法を頂点とする法秩序。
執筆: SikakuQuest編集部