株主代表訴訟とは(全体像)
株主代表訴訟は、会社が役員(取締役など)の責任を追及しないとき、株主が会社の代わりに訴えるしくみである。
なぜこんな制度があるのか。役員の責任を追及するかどうかは本来会社が決めるが、役員どうしは仲間うちなので、会社が身内をかばって訴えないことがある。そこで、株主が会社に代わって責任を追及できるようにしている。
押さえる核心は2つ。
- 賠償金は会社のもの … 株主が勝っても、お金は会社に入る。株主個人の懐には入らない。
- いきなりは訴えられない … まず会社に請求し、会社が動かないときに初めて株主が提訴できる。
詳しく:手続きと保有要件
ここが記事の心臓部。株主代表訴訟は、「賠償金の行き先」と「提訴までの段取り」をセットで押さえる。
株主代表訴訟のポイント
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 目的 | 株主が会社に代わって役員の責任を追及する |
| 賠償金の行き先 | 会社に帰属(株主個人は受け取らない) |
| 手続き | 会社に書面で請求 → 60日以内に会社が訴えない → 株主が自ら提訴 |
| 6か月保有要件 | 公開会社にだけ課される(非公開会社には課されない) |
まず、最大のヤマが賠償金の行き先。株主代表訴訟で勝っても、賠償金は会社に帰属する。訴えた株主の手元には入らない。株主が得るのは、会社の財産が回復することによる間接的な利益(株価の回復など)だけである。
次に、提訴までの段取り。株主はいきなり訴えられるわけではない。①まず会社に書面で責任追及を請求し、②会社が60日以内に訴えないとき、③株主が自ら提訴できる。会社に先に判断の機会を与えるためである。
そして6か月以上の保有要件。これは公開会社にだけ課される。非公開会社では、この保有期間の要件は課されない。公開会社だけの話だと押さえる。
わかりやすく言い換えると
要するに、株主代表訴訟は「会社が身内の役員を訴えないとき、株主が代わりに訴える」しくみだと考えるとわかりやすい。
①賠償金は会社へ … 株主が勝っても、お金は会社の財布に入る。自分のポケットには入らない。
②段取りを踏む … いきなりではなく、まず会社に「訴えて」と頼み、つまり60日待っても会社が動かなければ、自分で訴える。
③6か月の保有 … 株式を6か月以上持っていることが要るのは公開会社だけ。非公開会社では問われない。
試験のツボ
🔴 一番出る:賠償金は会社に帰属する
①勝訴しても = 賠償金は会社のもの
②株主個人 = 受け取らない(間接的な利益にとどまる)
🔴 次に出る:提訴までの段取り
①まず = 会社に書面で責任追及を請求
②それから = 60日以内に会社が訴えなければ、株主が自ら提訴
🟡 押さえると安定:6か月以上の保有要件は公開会社だけ。非公開会社には課されない
よくある間違い
①「勝訴した賠償金は、訴えた株主が受け取る」→ ✗ 賠償金は会社に帰属する。株主個人は受け取らない。
②「株主はいきなり役員を訴えられる」→ ✗ まず会社に請求し、60日動かないときに自ら提訴できる。
③「6か月の保有要件は、どの会社でも課される」→ ✗ 保有期間の要件は公開会社だけ。非公開会社には課されない。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(賠償金の行き先)
株主代表訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 株主代表訴訟は株主が会社に代わって役員の責任を追及する訴訟で、勝訴しても賠償金は会社に帰属する
- 株主代表訴訟で株主が勝訴したときは、その賠償金は訴えを起こした株主の個人のものになるとされている
- 株主代表訴訟は会社が自分の役員を守るために起こす訴訟で、株主には提起する権利がないとされている
- 株主代表訴訟で得た賠償金は、訴えた株主と会社とで半分ずつ分け合うことになっているものとされる
解答は 1 である。
株主代表訴訟は、株主が会社に代わって役員の責任を追及する訴訟である。勝訴しても、賠償金は会社に帰属し、訴えた株主個人は受け取らない。
選択肢2の「賠償金は株主個人のもの」は誤りで、会社に帰属する。選択肢3の「会社が役員を守るための訴訟」も誤りである。選択肢4の「株主と会社で半分ずつ」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 会社に代わって追及し、賠償金は会社帰属で正しい |
| 2 | ✗ | 賠償金は会社に帰属し、株主個人は受け取らない |
| 3 | ✗ | 株主が役員の責任を追及する制度である |
| 4 | ✗ | 賠償金を分け合うものではなく、会社に帰属する |
オリジナル問題2(提訴までの手続き)
株主代表訴訟の手続きに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 株主は会社への請求などをせず、いきなり役員を相手に訴えを起こすことができるものとされている
- 株主は会社に責任追及を請求すれば、会社の判断を待たず、その日のうちに自ら提訴できるとされる
- 株主が会社に責任追及を請求すると、会社は必ずその株主に代わって役員を訴えなければならないとされる
- 株主はまず会社に書面で責任追及を請求し、60日以内に会社が訴えないときに自ら提訴することができる
解答は 4 である。
株主はいきなり訴えられるわけではない。まず会社に書面で責任追及を請求し、60日以内に会社が訴えないときに、株主が自ら提訴できる。
選択肢1の「いきなり訴えられる」は誤り。選択肢2の「その日のうちに提訴」も誤りで、60日待つ必要がある。選択肢3の「会社が必ず訴えなければならない」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | まず会社に請求する段取りが必要である |
| 2 | ✗ | 請求後60日以内に会社が訴えないことが条件 |
| 3 | ✗ | 会社が必ず訴える義務を負うわけではない |
| 4 | ✓ | 会社に請求し60日待って自ら提訴で正しい |
オリジナル問題3(保有要件)
株主代表訴訟の保有要件に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 6か月以上の株式保有という期間の要件は、公開会社か非公開会社かを問わず、つねに課されるとされている
- 6か月以上の株式保有という要件は、公開会社では課されず、非公開会社にだけ課されるとされている
- 6か月以上の株式保有という期間の要件は、公開会社にだけ課され、非公開会社にはまったく課されない
- 株式の保有期間にかかわらず、株式をまったく持たない者でも株主代表訴訟を起こせるとされている
解答は 3 である。
6か月以上の株式保有という期間の要件は、公開会社にだけ課される。非公開会社には、この保有期間の要件は課されない。
選択肢1の「どの会社でもつねに課される」は誤り。選択肢2は公開と非公開が逆で誤りである。選択肢4の「株式を持たない者でも起こせる」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 保有要件は公開会社だけに課される |
| 2 | ✗ | 公開会社と非公開会社が逆である |
| 3 | ✓ | 公開会社だけに課され、非公開会社には課されず正しい |
| 4 | ✗ | 株式を持たない者は提起できない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 賠償金の行き先 = 勝訴しても会社に帰属。訴えた株主個人は受け取らない。
- 🔴 手続き = 会社に書面で請求 → 60日以内に訴えなければ株主が自ら提訴。
- 🟡 保有要件 = 6か月以上の保有は公開会社だけ。非公開会社には課されない。
次に学ぶ
- 役員の責任 ── 株主代表訴訟で追及される、役員の対会社責任の中身。あわせて押さえると流れがつながる。
- 株主の権利 ── 会社を監督する株主の権利の全体像。代表訴訟もその一つとして位置づくと混ざらない。
執筆: SikakuQuest編集部