住民訴訟とは(全体像)
高みから地方の統治を見渡そう。住民訴訟とは、地方公共団体の長などが行った違法な財務会計上の行為を正すために、住民が起こせる裁判のことだ。公金の違法な支出など、お金まわりのおかしな行為が対象になる。
最大のポイントは、これが民衆訴訟だということ。
- ふつうの訴訟 … 自分の権利や利益が侵害されたときに起こせる。
- 住民訴訟(民衆訴訟) … 自分の権利侵害がなくても、住民であれば起こせる。
「自分が損をしていないと住民訴訟は起こせない」と思い込まないこと。住民訴訟は、地方の財政をみんなのために正すための、特別なしくみだ。
詳しく:監査請求前置と、4つの類型
ここが心臓部。訴える前の手続と、4つの訴え方を上から俯瞰する。
住民訴訟の基本
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 長などの違法な財務会計上の行為 |
| 起こせる人 | 住民(自分の権利侵害は不要=民衆訴訟) |
| 前提の手続 | 先に住民監査請求を経ていること(監査請求前置) |
まず監査請求前置。住民訴訟は、いきなり裁判を起こせるわけではない。先に住民監査請求(監査委員に「この使い方はおかしい」と申し立てる手続)を経ている必要がある。その結果に不服があるときに、はじめて訴訟へ進める。順番が決まっている、ということだ。
そして4つの類型。住民訴訟には、4通りの訴え方がある。
住民訴訟の4つの類型
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 差止め | これから行われる違法な行為をやめさせる |
| 取消し・無効確認 | 違法な行為の効力を取り消す・否定する |
| 怠る事実の違法確認 | やるべきことをしていない状態が違法だと確認する |
| 損害賠償などの請求 | 違法でお金が失われたとき、長などへの賠償を求める |
4つ目(損害賠償など)は、住民が直接お金を取り立てるのではなく、長などに請求するよう自治体に求める形になっている点に注意しよう。
わかりやすく言い換えると
要するに、住民訴訟は住民が使える「地方財政の見張りの裁判」。
つまり、①ふつうの裁判は「自分が損したから訴える」が、住民訴訟は自分の損は不要。住民であれば、みんなのために起こせる(民衆訴訟)。
②ただし、順番がある。いきなり裁判ではなく、先に住民監査請求で「おかしい」と申し立て、それでも納得できないときに裁判へ進む。これが監査請求前置だ。
③訴え方は4種類。これからの行為を止める(差止め)、効力を取り消す、やらない状態を違法だと確認する、お金の賠償を求める。「止める・取り消す・確認する・賠償」の4つで押さえるとラクだ。
試験のツボ
🔴 一番出る:民衆訴訟(自分の損は不要)
①住民訴訟は民衆訴訟の代表例
②自分の権利侵害がなくても住民なら起こせる
🔴 次に出る:監査請求前置
①先に住民監査請求を経ていることが必要
②いきなり訴訟は起こせない
🟡 押さえると安定:対象と4類型
①対象は長などの違法な財務会計上の行為
②差止め・取消無効確認・怠る事実の違法確認・損害賠償などの請求
よくある間違い
①「住民訴訟は自分の権利が侵害されないと起こせない」→ ✗ 民衆訴訟なので、自分の権利侵害がなくても住民なら起こせる。
②「住民監査請求をしなくても、いきなり住民訴訟を起こせる」→ ✗ 先に住民監査請求を経ていることが必要(監査請求前置)。
③「住民訴訟は行政の不満なら何でも訴えられる」→ ✗ 対象は違法な財務会計上の行為に限られる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(住民訴訟の性格)
住民訴訟の性格に関する記述として、正しいものはどれか。
- 住民訴訟は、自分の権利や利益が侵害された住民だけが起こせるものとされている
- 住民訴訟は、その地方公共団体の区域外に住む者でも自由に起こせるものとされる
- 住民訴訟は、行政のあらゆる活動への不満を広く訴えられるものとされている
- 住民訴訟は民衆訴訟で、権利侵害がなくても住民であれば起こせるものとされる
解答は 4 だ。
上から見渡そう。住民訴訟は民衆訴訟の代表例。自分の権利侵害がなくても、住民であれば起こせるぞ。地方の財政をみんなのために正すしくみだ。
選択肢1のように「自分が損していないと起こせない」のではない。ここが一番の落とし穴だ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 自分の権利侵害は不要(民衆訴訟) |
| 2 | ✗ | 起こせるのはその団体の住民 |
| 3 | ✗ | 対象は財務会計上の行為に限られる |
| 4 | ✓ | 民衆訴訟で、住民なら起こせる |
オリジナル問題2(監査請求前置)
住民訴訟を起こす前提に関する記述として、正しいものはどれか。
- 住民訴訟は、監査委員に申し立てることなく直接起こせるものとされている
- 住民訴訟は、先に住民監査請求を経ていることが必要であるものとされる
- 住民訴訟は、議会の議決を得てはじめて起こせるものとされている
- 住民訴訟は、長の同意を得なければ起こすことができないものとされている
解答は 2 だ。
全体像を俯瞰しよう。住民訴訟は、いきなり起こせるわけではない。先に住民監査請求を経ていることが必要だ。これが監査請求前置だぞ。
選択肢1のように「直接起こせる」のではない。まず監査請求、それから訴訟、という順番を押さえること。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 先に住民監査請求が必要 |
| 2 | ✓ | 住民監査請求の前置が必要 |
| 3 | ✗ | 議会の議決を前提とするのではない |
| 4 | ✗ | 長の同意を前提とするのではない |
オリジナル問題3(対象と類型)
住民訴訟の対象や類型に関する記述として、正しいものはどれか。
- 住民訴訟は行政のあらゆる判断を対象とし、財務会計に限られないものとされている
- 住民訴訟は損害賠償を求める訴えだけで、ほかの類型は認められないものとされる
- 住民訴訟は違法な財務会計上の行為が対象で、差止めや損害賠償などの類型がある
- 住民訴訟は過去の行為だけが対象で、これからの行為の差止めはできないものとされる
解答は 3 だ。
高みから見渡そう。住民訴訟の対象は、長などの違法な財務会計上の行為だ。訴え方には、差止め・取消無効確認・怠る事実の違法確認・損害賠償などの類型があるぞ。
選択肢1のように「行政のあらゆる判断」が対象ではない。あくまで財務会計の行為に限られる。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 対象は財務会計上の行為に限られる |
| 2 | ✗ | 損害賠償だけでなく複数の類型がある |
| 3 | ✓ | 財務会計上の行為が対象で、4つの類型がある |
| 4 | ✗ | これからの行為の差止めもできる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 民衆訴訟 = 自分の権利侵害がなくても、住民であれば起こせる(自分の損は不要)。
- 🔴 監査請求前置 = いきなり訴えられず、先に住民監査請求を経ていることが必要。
- 🟡 対象と類型 = 対象は違法な財務会計上の行為。差止め・取消無効確認・怠る事実の違法確認・損害賠償などの4類型。
次に学ぶ
- 監査委員 ── 住民監査請求を受け止める見張り役。住民訴訟の前段にあたる手続がわかる。
- 長の権限 ── 財務会計上の行為を担う長の権限の全体像。住民訴訟が何を正すのかが見える。
- 地方税 ── 住民が納め、自治体が使う公金のしくみ。住民訴訟が守る財政の入口を押さえる。
執筆: SikakuQuest編集部