行政行為の瑕疵とは(全体像)
行政行為の瑕疵とは、行政行為が、法律上の成立要件や効力要件を満たしていないこと。かんたんに言えば、役所の決定に「法律上のキズ」がある状態だ。
大事なのは、キズがあっても結果が一律ではないこと。瑕疵の程度によって、扱いが2段階に分かれる。
- 無効な行政行為 … 重大かつ明白な瑕疵があるもの。はじめから効力がない。
- 取り消しうる行政行為 … それ以外(重大でも明白でもない)の瑕疵があるもの。取り消されるまでは有効。
つまり「キズがある=即アウト(無効)」ではなく、よほど重く、はっきりしたキズのときだけ無効になる、というのがポイントだ。
詳しく:2段階のちがいと判断基準
ここが心臓部。無効と取り消しうるの違いと、無効になる基準を押さえる。
瑕疵の2段階
| 瑕疵の程度 | 効力 | 争い方 | |
|---|---|---|---|
| 無効な行政行為 | 重大かつ明白 | 公定力・不可争力なし(はじめから無効) | 期間の制限なく無効を主張できる |
| 取り消しうる行政行為 | 重大・明白でない | 公定力あり(取り消されるまで有効) | 取消訴訟などで争う必要がある |
ここで効いてくるのが公定力との関係。取り消しうる行政行為には公定力があり、取り消されるまでは有効なので、取消訴訟で争うことになる。一方、無効な行政行為には公定力も不可争力もなく、出訴期間を過ぎても無効を主張できる。
では、どこからが「無効」か。判例・通説は重大明白説をとる。
無効と取消しうるの分かれ目(重大明白説)
| 瑕疵の例 | 扱い |
|---|---|
| 権限のない行政庁による処分 | 重大かつ明白 → 無効 |
| 書類の形式的な不備 | 重大でも明白でもない → 取り消しうる |
瑕疵が重大であり、かつ誰の目にも明白であってはじめて、無効になる。だから、違法であっても、それだけでは無効にならない。多くの違法は「取り消しうる行政行為」にとどまり、取消訴訟で争うことになる。
わかりやすく言い換えると
つまり瑕疵は「役所の決定の法律上のキズ」で、キズの重さで扱いが2段階に分かれる。重くてはっきりしたキズ(重大かつ明白)なら無効、それ以外なら取り消しうる(取消訴訟で争う)。
要するに押さえどころは2つ。①無効になるのは重大かつ明白な瑕疵だけ(違法=無効ではない)、②無効には公定力がなく、取り消しうる行為には公定力がある。
試験のツボ
🔴 一番出る:瑕疵の2段階
①無効な行政行為 = 重大かつ明白な瑕疵(はじめから無効)
②取り消しうる行政行為 = それ以外の瑕疵(取り消されるまで有効)
🔴 次に出る:公定力との関係
無効な行政行為には公定力なし。取り消しうる行政行為には公定力があり、取消訴訟で争う。
🟡 押さえると安定:重大明白説(違法=無効ではない)
無効になるのは重大かつ明白な瑕疵があるときだけ。多くの違法は取り消しうるにとどまる。
よくある間違い
①「違法な行政行為は、すべて当然に無効である」→ ✗ 無効になるのは重大かつ明白な瑕疵があるときだけ。多くは取り消しうるにとどまる。
②「無効な行政行為にも公定力があり、取消訴訟が必要」→ ✗ 無効な行政行為に公定力はなく、期間の制限なく無効を主張できる。
③「書類の形式的な不備があれば、当然に無効になる」→ ✗ 軽微な不備は重大でも明白でもなく、取り消しうるにとどまることが多い。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(瑕疵の意味)
行政行為の瑕疵に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 行政行為の瑕疵とは、後から生じた事情変更により行政行為が公益上不適当となることをいうとされる
- 行政行為の瑕疵とは、瑕疵があれば常に当然に無効となることを意味するものとされている
- 行政行為の瑕疵とは、瑕疵があっても効力にはまったく影響しないことをいうものとされる
- 行政行為の瑕疵とは、成立・効力の要件を満たさないことで、無効と取り消しうる2段階に分かれる
解答は 4 である。
行政行為の瑕疵とは、成立・効力の要件を満たさないことで、瑕疵の程度により無効な行政行為と取り消しうる行政行為の2段階に分かれるのである。
選択肢1は撤回の原因、選択肢2の「常に当然に無効」、選択肢3の「効力に影響しない」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | それは撤回の原因の説明 |
| 2 | ✗ | 無効になるのは重大かつ明白なときだけ |
| 3 | ✗ | 瑕疵は効力に影響する |
| 4 | ✓ | 要件を満たさず2段階に分かれるで正しい |
オリジナル問題2(公定力との関係)
瑕疵ある行政行為と公定力に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 重大かつ明白な瑕疵がある行政行為であっても、取り消されるまでは公定力により有効に扱われる
- 無効な行政行為には公定力がなく、取り消しうる行政行為には公定力があって取消訴訟で争う
- 取り消しうる行政行為には公定力がなく、だれでも無効を主張できるものとされている
- 無効な行政行為も取り消しうる行政行為も、ともに取消訴訟でしか争えないとされている
解答は 2 である。
無効な行政行為には公定力がなく、取り消しうる行政行為には公定力があって取消訴訟で争うのである。無効には公定力がないので、期間の制限なく無効を主張できる。
選択肢1の「無効でも公定力で有効」、選択肢3の「取り消しうるに公定力なし」、選択肢4の「どちらも取消訴訟でしか争えない」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 重大明白な瑕疵は無効で公定力なし |
| 2 | ✓ | 無効に公定力なし・取消しうるに公定力ありで正しい |
| 3 | ✗ | 公定力があるのは取り消しうる行為 |
| 4 | ✗ | 無効は取消訴訟によらず主張できる |
オリジナル問題3(重大明白説)
行政行為が無効となる基準に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 違法な行政行為はすべて当然に無効となり、取り消しうるにとどまることはないとされる
- 行政行為が無効となるかは、瑕疵の程度を問わず一律に決まるものとされている
- 行政行為が無効となるのは重大かつ明白な瑕疵がある場合で、違法がすべて無効ではない
- 軽微な形式的不備があるだけでも、行政行為は重大明白な瑕疵として無効になるとされる
解答は 3 である。
行政行為が無効となるのは重大かつ明白な瑕疵がある場合で、違法がすべて無効になるわけではないのである。これを重大明白説という。
選択肢1の「違法はすべて無効」、選択肢2の「程度を問わず一律」、選択肢4の「軽微な不備でも無効」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 多くの違法は取り消しうるにとどまる |
| 2 | ✗ | 瑕疵の程度で扱いが変わる |
| 3 | ✓ | 重大かつ明白なときだけ無効で正しい |
| 4 | ✗ | 軽微な不備は取り消しうるにとどまる |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 瑕疵の2段階 = 無効な行政行為(重大かつ明白な瑕疵)と、取り消しうる行政行為(それ以外)。
- 🔴 公定力との関係 = 無効には公定力なし(期間の制限なく主張可)、取り消しうる行為には公定力あり(取消訴訟で争う)。
- 🟡 重大明白説 = 無効になるのは重大かつ明白な瑕疵があるときだけ。違法=無効ではない。
次に学ぶ
- 公定力 ── 取り消しうる行政行為が取り消されるまで有効とされる根拠。
- 行政行為の取消し ── 取り消しうる瑕疵を理由に、さかのぼって効力を失わせる行為。
- 不可争力 ── 出訴期間が過ぎると争えなくなる効力。無効な行政行為には及ばない。
執筆: SikakuQuest編集部