不信任議決とは(全体像)
高みから地方の統治を見渡そう。不信任議決とは、議会が長に対して「もうこの長を信任しない」と正式に議決することだ。長と議会は、住民がそれぞれ別々に選ぶ対等な関係(二元代表制)。その議会が、長へ突きつけられる最終手段がこれにあたる。
いちばん大事なのは、ふつうの議決とは要件がまるで違うところ。通常の議案は出席議員の過半数で決まるが、不信任議決はそれでは成立しない。長の地位を失わせるかもしれない重い判断だから、わざと高いハードルが設けられている。
「過半数で不信任が決まる」と思い込まないこと。ここを正しく押さえると、関連する論点もまとめて見通せるので、要件をしっかり俯瞰しておこう。
詳しく:二重要件と、議決を受けた後の流れ
ここが心臓部。要件と効果を上から全体像で捉える。
不信任議決のしくみ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成立の要件 | 議員の3分の2以上が出席し、そのうち4分の3以上が賛成(二重の要件) |
| 議決後の効果 | 長は通知から10日以内に「議会解散」か「失職」かを選ぶ |
| 解散しないとき | 10日が過ぎれば、長はその時点で失職 |
まず成立の要件。不信任議決には、①3分の2以上の出席と、②出席者の4分の3以上の賛成という、二段構えのハードルがある。出席が足りなければ、そもそも議決できない。たとえば半数の出席で不信任を試みても、定足数が足りず無効になる。
次に議決後の効果。不信任議決が成立しても、長はすぐ失職するわけではない。通知を受けた日から10日以内に、議会を解散して住民に信を問うか、自分が失職するかを選ぶ。長が何もしないまま10日が過ぎれば、その時点で失職だ。
そして再不信任のしくみを見渡そう。
解散したあとの再不信任
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1回目の不信任 | 3分の2出席・4分の3賛成という重い要件 |
| 解散→再選挙 | 住民が新しい議会を選び直す |
| 2回目の不信任 | 新議会が過半数で再び不信任すれば、長は失職 |
長が解散を選ぶと、再選挙で新しい議会ができる。その新議会が過半数で再び不信任議決をすると、今度は長が失職する。注目は、2回目は要件がゆるむこと。1回目は4分の3、2回目は過半数で足りる。つまり、一度住民の判断(再選挙)を経ているから、ハードルが下がるわけだ。
わかりやすく言い換えると
要するに、不信任議決は議会が出せる「レッドカード」のようなもの。ただし軽々しくは出せない。
①出すには「3分の2が来て、その4分の3が賛成」という二段の重い条件がいる(ふつうの過半数では出せない)。
②カードを出された長には「解散して出直すか、自分が辞めるか」の10日以内の選択権がある。
③出直し(再選挙)でも新しい議会がまた過半数でカードを出せば、長は退場。1回目より2回目のほうが条件はゆるい。
試験のツボ
🔴 一番出る:成立の二重要件
①3分の2以上の出席
②そのうえで4分の3以上の賛成
🔴 次に出る:議決後の長の選択
①通知から10日以内に「解散」か「失職」を選ぶ
②10日たって何もしなければ失職
🟡 押さえると安定:再不信任は要件がゆるむ
①解散→再選挙のあと、新議会は過半数で再び不信任できる
②2回目の不信任が成立すると、長は失職する
よくある間違い
①「不信任議決は過半数で成立する」→ ✗ ふつうの議決と違い、3分の2以上の出席かつ4分の3以上の賛成という二重の要件が必要。
②「不信任議決があると長は必ず失職する」→ ✗ まず10日以内に解散か失職かを選べる。解散すれば再選挙で住民に信を問える。
③「2回目の不信任も4分の3が必要」→ ✗ 解散後の新議会による再不信任は過半数で足りる。1回目より要件がゆるむ。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(不信任議決の成立要件)
普通地方公共団体の長に対する不信任議決の成立要件として、正しいものはどれか。
- 議員数の過半数が出席し、その出席議員の過半数が賛成すれば成立するものとされる
- 議員数の2分の1以上が出席し、その出席議員の3分の2以上が賛成すれば成立するものとされる
- 議員数の3分の2以上が出席し、その出席議員の4分の3以上が賛成すれば成立するものとされる
- 議員全員が出席し、その全員が賛成しなければ成立しない全会一致の制度であるとされる
解答は 3 だ。
上から見渡そう。不信任議決は、3分の2以上の出席と4分の3以上の賛成という二重の要件がそろって初めて成立する。ふつうの議案の「過半数」とは別物だぞ。
選択肢1の過半数では軽すぎ、選択肢4の全会一致では重すぎる。法は、その中間の厳しい要件を置いている。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 過半数では成立しない。要件はもっと重い |
| 2 | ✗ | 3分の2出席・4分の3賛成が正しく、数字が不正確 |
| 3 | ✓ | 3分の2以上出席・4分の3以上賛成で正しい |
| 4 | ✗ | 全会一致までは求められていない |
オリジナル問題2(議決後の長の対応)
不信任議決があった場合の長の対応として、正しいものはどれか。
- 長は通知を受けた日から10日以内に、解散するのか失職するのかを選ぶものとされる
- 長は不信任議決があった瞬間に当然に失職し、議会を解散する余地はないものとされる
- 長は議会を解散する義務を負い、自分が失職する道を選ぶことはできないものとされる
- 長は不信任議決を受けても、任期が満了するまで地位に影響は生じないものとされる
解答は 1 だ。
全体像を俯瞰しよう。議決を受けた長は、通知から10日以内に、議会を解散するか自分が失職するかを選ぶ。即座に失職するわけではないぞ。
10日たって何もしなければ、その時点で失職する。解散して再選挙で住民に信を問う道も残されている。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 10日以内に解散か失職かを選ぶで正しい |
| 2 | ✗ | 当然失職ではなく、解散の選択肢がある |
| 3 | ✗ | 解散は義務ではなく、失職を選ぶこともできる |
| 4 | ✗ | 影響なしではなく、解散か失職かが迫られる |
オリジナル問題3(解散後の再不信任)
不信任議決を受けて長が議会を解散した後の、再不信任に関する記述として正しいものはどれか。
- 解散後の再選挙で選ばれた新議会は、長に対して二度と不信任議決をできないものとされる
- 解散後の新議会が再び不信任するには、最初と同じく4分の3以上の賛成が必要であるとされる
- 解散後の新議会が不信任しても、長は再び議会を解散して対抗を続けられるものとされる
- 解散後の新議会が過半数で再び不信任議決をすると、今度こそ長が失職するものとされる
解答は 4 だ。
高みから流れを見渡そう。解散後の新議会が過半数で再び不信任議決をすると、長は失職する。注目は、2回目は過半数で足りること。1回目の4分の3より要件がゆるむぞ。
一度住民が再選挙で判断を示しているので、2度目はハードルが下がる、という設計だ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 新議会も再び不信任できる |
| 2 | ✗ | 2回目は過半数で足り、4分の3は不要 |
| 3 | ✗ | 再不信任が成立すれば長は失職し、再度の解散はできない |
| 4 | ✓ | 過半数で再不信任すれば長は失職で正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 二重要件 = 3分の2以上の出席かつ4分の3以上の賛成。ふつうの過半数では成立しない。
- 🔴 議決後 = 長は通知から10日以内に「解散」か「失職」を選ぶ。10日たてば失職。
- 🟡 再不信任 = 解散後の新議会は過半数で再び不信任でき、成立すれば長は失職(要件がゆるむ)。
次に学ぶ
- 議会の解散 ── 不信任議決を受けた長が選ぶ「解散」の側を、通常の解散権との違いから深掘りする。
- 議会と長の関係 ── 住民が別々に選ぶ二元代表制の全体像。不信任議決はこの関係の最終手段として位置づく。
執筆: SikakuQuest編集部