不法行為とは(全体像)
不法行為とは、わざと、または不注意で他人の権利や利益を傷つけた人が、それによって生じた損害を賠償する責任を負うこと。
身近に言うと、車の運転を誤って人にけがをさせれば、加害者はその治療費などを賠償しなければならない。約束(契約)がなくても、損害を与えれば責任が生じるのが、契約違反(債務不履行)との違い。
成立には、次の5つの要件がそろう必要がある。
- 故意または過失 … わざと、または不注意があったこと
- 権利・利益の侵害 … 他人の権利や法律上守られる利益を傷つけたこと
- 損害の発生 … 実際に損害が生じたこと
- 因果関係 … その行為が原因で損害が生じたこと
- 責任能力 … 加害者に責任を負うだけの判断能力があったこと
詳しく:使用者責任と時効
ここが心臓部。一般のルールに加え、雇い主が負う「使用者責任」と、賠償を求められる期間(時効)が問われる。
使用者責任(従業員のミスで雇い主も責任)
| 誰が責任を負う? | 内容 |
|---|---|
| 従業員(被用者)本人 | 自分の不法行為として責任を負う |
| 雇い主(使用者) | 従業員が仕事の中で与えた損害について責任を負う |
| 両者の関係 | 連帯して責任を負い、雇い主は本人に求償できる |
従業員が仕事中に他人へ損害を与えたとき、被害者は従業員本人にも雇い主にも賠償を求められる。雇い主は被害者に払ったあと、本人に対して「立て替えた分を払って」と求償できる。被害者を手厚く守るためのしくみ。
次に「時効」。賠償を求められる期間には限りがある。
不法行為の損害賠償を求められる期間
| 起算点 | 期間 |
|---|---|
| 損害と加害者を知った時から | 3年(人の生命・身体の侵害は5年) |
| 不法行為の時から | 20年 |
被害者が「損害と加害者」を知った時から3年、または不法行為の時から20年で、賠償を求める権利は時効にかかる。人の生命・身体を傷つけた場合は、知った時からの期間が5年に延びる(被害者を厚く守るため)。
わかりやすく言い換えると
つまり、不法行為は「与えた損害は埋めなさい」というルール。契約がなくても、わざと・不注意で他人を傷つければ責任が生じる。
使用者責任は「従業員の仕事中のミスは、雇い主も一緒に責任」。被害者は払える相手から取れて、雇い主はあとで本人に求償する。要するに「被害者を取りこぼさない」しくみ、と覚えるとラク。
試験のツボ
🔴 一番出る:一般不法行為の5要件
①故意または過失
②権利・利益の侵害
③損害の発生
④因果関係
⑤責任能力
🔴 次に出る:使用者責任
従業員が仕事の中で与えた損害は、雇い主も責任を負う。本人も責任を負い、両者は連帯。雇い主は本人に求償できる。
🟡 押さえると安定:時効は3年・20年
知った時から3年(生命・身体は5年)、不法行為の時から20年。
よくある間違い
①「契約がなければ損害賠償の責任は生じない」→ ✗ 契約がなくても、故意・過失で損害を与えれば不法行為責任が生じる。
②「使用者責任があると、従業員本人は責任を負わない」→ ✗ 本人も責任を負う。雇い主と連帯し、雇い主は本人に求償できる。
③「不法行為の損害賠償はいつまでも請求できる」→ ✗ 知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかる。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(一般不法行為の要件)
一般の不法行為の要件に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 不法行為は、加害者に故意がある場合にのみ成立し、不注意では決して成立しないとされている
- 不法行為は、契約関係にある当事者の間でしか成立しないものとされている
- 不法行為は、損害が実際に生じていなくても、行為さえあれば当然に成立するものとされる
- 不法行為は、故意か過失・権利の侵害・損害・因果関係・責任能力がそろったときに成立する
解答は 4 である。
不法行為は、故意か過失・権利の侵害・損害・因果関係・責任能力の5つがそろって成立するのだ。ひとつでも欠ければ成立しないのだよ。
選択肢1は「故意のみ」とする点が誤りで、過失でも成立する。選択肢2の「契約関係が必要」、選択肢3の「損害がなくても成立」も誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 過失でも成立する |
| 2 | ✗ | 契約関係がなくても成立する |
| 3 | ✗ | 損害の発生が必要 |
| 4 | ✓ | 5要件がそろって成立で正しい |
オリジナル問題2(使用者責任)
使用者責任に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 使用者責任が認められると、損害を与えた従業員本人は責任を負わなくなるものとされている
- 使用者責任は、従業員が仕事とまったく無関係に与えた損害についても当然に生じるものとされる
- 従業員が仕事の中で与えた損害については雇い主も責任を負い、雇い主は本人に対して求償できる
- 使用者責任では、被害者は雇い主にだけ賠償を求められ、従業員本人には求められないとされる
解答は 3 だ。
従業員が仕事の中で与えた損害は、雇い主も責任を負うのだ。本人も責任を負い、両者は連帯し、雇い主はあとで本人に求償できるのだよ。
選択肢1は「本人は責任を負わない」とする点が誤りだ。選択肢2の「仕事と無関係でも生じる」、選択肢4の「本人には求められない」も誤り。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 従業員本人も責任を負う |
| 2 | ✗ | 仕事の中での損害が対象 |
| 3 | ✓ | 雇い主も責任を負い本人に求償できるで正しい |
| 4 | ✗ | 本人にも賠償を求められる |
オリジナル問題3(時効)
不法行為の損害賠償を求められる期間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 不法行為の損害賠償は、期間の制限がなく、いつまでも請求できるものとされている
- 不法行為の損害賠償は、損害と加害者を知った時から3年、行為の時から20年で時効にかかる
- 不法行為の損害賠償は、損害と加害者を知った時から10年だけで請求できるものとされている
- 不法行為の損害賠償は、行為の時から3年が過ぎると一切請求できなくなるものとされている
解答は 2 である。
不法行為の損害賠償は、知った時から3年、行為の時から20年で時効にかかるのだ。人の生命・身体を傷つけた場合は、知った時からの期間が5年に延びるのだよ。
選択肢1の「期間の制限がない」、選択肢3の「知った時から10年」、選択肢4の「行為の時から3年」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 3年・20年の期間制限がある |
| 2 | ✓ | 知った時から3年・行為の時から20年で正しい |
| 3 | ✗ | 知った時からは3年(生命身体は5年) |
| 4 | ✗ | 行為の時からは20年 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 一般不法行為の5要件 = 故意か過失・権利の侵害・損害・因果関係・責任能力。ひとつでも欠ければ成立しない。
- 🔴 使用者責任 = 従業員が仕事の中で与えた損害は雇い主も責任を負う。本人も責任を負い連帯、雇い主は本人に求償できる。
- 🟡 時効 = 知った時から3年(生命・身体は5年)、不法行為の時から20年。
次に学ぶ
- 損害賠償 ── 不法行為で発生する責任の中身。賠償の範囲や考え方を深掘りする。
- 債務不履行 ── 契約違反による損害賠償。契約のある・なしで不法行為と対比すると整理できる。
- 消滅時効 ── 権利が時間で消えるしくみ。不法行為の3年・20年もこの考え方の一部。
執筆: SikakuQuest編集部