代表取締役とは(全体像)
代表取締役は、会社を代表して契約などを行う取締役である。会社の「顔」として外部と取引する立場といえる。
押さえる軸は2つ。
- 選び方 … 取締役会設置会社では、取締役会の決議で選ぶ。
- 代表権の広さ … 代表取締役の権限は、会社の業務に関する一切の行為に及ぶ(包括的代表権)。一部の取引だけ、というせまいものではない。
「会社を代表する、広い権限をもつ取締役」と押さえると全体像がつかめる。
詳しく:包括的代表権と取引の安全
ここが記事の心臓部。代表取締役でいちばん問われるのは、「権限の広さ」と「内部の制限が外部に通じないこと」である。
代表取締役のポイント
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 選定 | 取締役会設置会社では取締役会の決議で選ぶ |
| 代表権 | 会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ(包括的) |
| 内部の制限 | 制限を加えても、知らない善意の第三者には対抗できない |
| 表見代表取締役 | 社長などの肩書きを与えた取締役の行為は、会社が責任を負う |
まず、代表権は包括的である。会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為(契約も訴訟も)ができる。
そして最大のヤマが、内部の制限は外部に通じないということ。会社が社内で「この契約は取締役会の承認がないとダメ」と決めても、その事情を知らない善意の第三者には、その制限を対抗できない。つまり、相手がその制限を知らずに取引したなら、会社はその取引の責任を負う。取引する相手を守る(取引の安全)ためである。
さらに、表見代表取締役も狙われる。実際には代表権がない取締役でも、「社長」「副社長」のように代表権があると見える肩書きを会社が与えていたら、その人の行為について、相手方(善意)に対して会社が責任を負う。肩書きを信じた相手を守るしくみである。
わかりやすく言い換えると
要するに、代表取締役は「会社を代表してサインできる人」で、外部の相手を守るルールがセットになっていると考えるとわかりやすい。
①包括的代表権 … 会社の業務に関することなら、つまり何でも代表して取引できる広い権限。
②内部の制限は通じない … 社内で勝手に「ここまで」と線を引いても、それを知らない相手には通じない。だから会社が責任を負う。
③表見代表取締役 … 「社長」などの肩書きを与えた以上、たとえ本当は代表権がなくても、それを信じた相手には会社が責任を負う。
試験のツボ
🔴 一番出る:内部の制限は善意の第三者に対抗できない
①内容 = 社内で代表権に制限を加えても、知らない相手には通じない
②効果 = 会社がその取引の責任を負う(取引の安全)
🔴 次に出る:表見代表取締役
①場面 = 社長などの肩書きを与えた取締役が取引した
②効果 = 肩書きを信じた善意の相手方に対し、会社が責任を負う
🟡 押さえると安定:代表権は包括的(業務に関する一切の行為)。取締役会設置会社では取締役会が選定する
よくある間違い
①「代表権の内部の制限は、誰に対しても主張できる」→ ✗ 知らない善意の第三者には対抗できない。
②「肩書きだけの取締役の行為は、会社は一切責任を負わない」→ ✗ 表見代表取締役として、善意の相手方に会社が責任を負う。
③「代表権は一部の取引にしか及ばない」→ ✗ 会社の業務に関する一切の行為に及ぶ包括的なもの。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(選定と代表権)
代表取締役に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 代表取締役は監査役が選び、その代表権は一部の決められた取引にしか及ばないものとされている
- 代表取締役は会社を代表する取締役で、取締役会を置く会社では取締役会の決議によって選ばれる
- 代表取締役は株主が一人ずつ持ち回りで務め、会社を代表する権限はとくにないものとされている
- 代表取締役は会社を代表する権限をもたず、社内の事務だけを担当する取締役であるとされている
解答は 2 である。
代表取締役は会社を代表する取締役で、取締役会設置会社では取締役会の決議で選ばれる。その代表権は、会社の業務に関する一切の行為に及ぶ包括的なものである。
選択肢1の「監査役が選ぶ・一部の取引だけ」は誤り。選択肢3の「株主が持ち回り・代表権なし」も誤りである。選択肢4の「代表権をもたない」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 選ぶのは取締役会で、代表権は包括的である |
| 2 | ✓ | 会社を代表し、取締役会の決議で選ばれて正しい |
| 3 | ✗ | 株主の持ち回りではなく、代表権をもつ |
| 4 | ✗ | 代表取締役は会社を代表する権限をもつ |
オリジナル問題2(代表権の範囲)
代表取締役の代表権に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 代表取締役の代表権は裁判外の行為だけに及び、訴訟などの裁判上の行為には及ばないとされている
- 代表取締役の代表権は、あらかじめ定めた一つの契約だけにしか及ばないものとされているのである
- 代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする、包括的で広範な権限をもつ
- 代表取締役の代表権は、株主全員の同意があるときに限って認められるものとされているのである
解答は 3 である。
代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限をもつ。これを包括的代表権という。
選択肢1の「裁判外だけ」は誤りで、裁判上の行為にも及ぶ。選択肢2の「一つの契約だけ」も誤りである。選択肢4の「株主全員の同意があるときだけ」も誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 裁判上の行為にも及ぶ |
| 2 | ✗ | 一つの契約に限られず、業務全般に及ぶ |
| 3 | ✓ | 業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為で正しい |
| 4 | ✗ | 株主全員の同意を要件とするものではない |
オリジナル問題3(内部の制限と取引の安全)
代表取締役の代表権の制限に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 代表権に内部で制限を加えても、その事情を知らない善意の第三者に対しては対抗することができない
- 代表権に加えた内部の制限は、相手がその制限を知っているかどうかにかかわらず、つねに主張できる
- 代表権には、会社が社内でどのような制限も加えることができず、制限は一切無効になるとされている
- 社長などの肩書きを与えた取締役の行為について、会社はいかなる場合も責任を負わないとされている
解答は 1 である。
代表権に内部で制限を加えても、その事情を知らない善意の第三者には対抗できない。会社はその取引の責任を負う。取引の相手を守る(取引の安全)ためである。
選択肢2の「つねに主張できる」は誤り。選択肢3の「制限は一切無効」も誤りで、内部の制限自体は加えられる。選択肢4の「いかなる場合も責任を負わない」も誤りで、表見代表取締役として責任を負う場合がある。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 内部の制限は善意の第三者に対抗できず正しい |
| 2 | ✗ | 知らない善意の第三者には対抗できない |
| 3 | ✗ | 内部の制限自体は加えられる |
| 4 | ✗ | 表見代表取締役として責任を負う場合がある |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 内部の制限 = 代表権に制限を加えても、知らない善意の第三者には対抗できない(取引の安全)。
- 🔴 表見代表取締役 = 社長などの肩書きを与えた取締役の行為は、善意の相手方に対し会社が責任を負う。
- 🟡 基本 = 代表権は包括的(業務に関する一切の行為)。取締役会設置会社では取締役会が選定する。
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執筆: SikakuQuest編集部